「ニッポン社会」入門

「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)

「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)

内容(「BOOK」データベースより)
日本社会について手っ取り早く学びたければ、近くのプールに行ってみることだ。規則と清潔さを愛し、我慢強く、大きな集団の悪事に寛容な国民性が理解できるはずだから。過剰なまでに礼儀正しく親切な人々、思ったより簡単で奥深い日本語、ガイドブックには載っていない名所の数々…。14年間日本に暮らす英紙記者が無類のユーモアを交えて綴る、意外な発見に満ちた日本案内。


 とある海外の反応を紹介するブログで触れられてから微妙に気になっていた本だが、ようやく読むことができた、といっても図書館で読んだのだがw。
 『デスクは、社説の文体は世界中どこでも同じだと思っていて、ぼくに読売新聞から強い非難ないし賞賛のフレーズを引用してくるようにといってくる。ぼくが日本の新聞の論調は「たしかに○○であるが、一方××でもあり」ときて、「この問題に関しては真剣な議論が必要だ」と結ばれているのが普通だと伝えても、決して信じてはくれないのだ。』(P12-3)ああ、そういうどっちつかずの文章が社説なのって日本独特なのか。そういう文章を書き(載せ)続けているうちに、自分たちが中立・公正だと盲信してしまうのかな。ちゃんと自分達の社風(紙風?)というか立ち場を鮮明にしておけば、自分たちもそうした立場から何かを主張するものであって、局外中立から観察する(あたかも神の視点に立っているかのような)なにものか、というのではないという事実が、多少は実感できるだろうに、という風に冷笑的な考えを抱いてしまうな。
 『しかし、日本人は大きな集団に対して法外な敬意を払っている/(中略)/大きな集団の悪事に対して寛容すぎるのは日本人の弱点といわざるを得ない。まるで、大きな集団は自分の好きなように規則を決めてよいみたいではないか。』(P21-22)今までそんなことを気にしたこともなかったけど、確かにそんなところはあるねえ、こうした指摘による気づきがあるから、外国人から見た日本関連の本は面白い、まあ、日常のことをなんかやたらと深意があるように解するような本は、ふうんと思って頭の中を通り過ぎて終わりってなっちゃうけど(苦笑)、というか、今気がついたが現代日本について外から見た本を読むのって滅多にないなあ、大概明治や幕末あたりの本ばかりだから。
 日本語の発音は難しくない、とあってそりゃそうだよね、と納得、というよりずっと思ってたw。というか、日本語が難しいというのを、日本人がいうのは恥ずかしく思っているから、日本人は日本語が難しいと思っている、と書かれるといたたまれないような気分になる、こういうのは流行なんかね、一時期四季が〜、四季が〜、という謎の四季誇りがあったが、四季がある国なんていくらでもあるわけですし、それと似たような恥ずかしさがある、それは収まった(と思う)から、これも一時の流行でそのうち収まるだろうけど、というか世事に疎いから、もう既に収まっているとかだったら恥ずかしいが、その確率もかなり高いと思うが(ぼくが気づいているぐらいですしw)。
 構造面で日本語に適していない正書法の国から文字を輸入したことに対し『もし日本人が、もっと適切な選択肢が出現するまで、後数世紀、文字の使用を辛抱してさえいれば、事情は違っていただろうにと思う(もちろん、ぼくが推奨するのはローマ字だ)。』(P32)とあるが、ローマ字が数世紀程度で日本あたりまで来るかあ?(ポルトガル人がきたのは戦国で16世紀だろ、そこから導入だとどうみても10世紀以上……)ひょっとして、この人日本が文字を導入したのをすごい後だと思っている、と邪推してしまうよ。まあローマ字はジョークにしても、正直文字を表すのに漢字を使わないって選択肢が当時の日本にはない気が(数世紀まったとしても、まあ50音表がいつあったかしらないが、その知識あるなら、サンスクリットでも導入しろっつー事かな?w、調べてみたら室町か)。というかここまで書いて気づいたが、文字の使用でいいたいのって、和漢混交文のことかな。それができたのが平安時代後期ということだから、そこからなら数世紀という枠内に入るか。

 『居酒屋のトイレ。ひとつだけ異様に深い洗面台がある。その洗面台は排水溝も大きいし、ホースがついているときもある。』(P62)へえ、そんなものがあるんだ、居酒屋とかいかないのではじめて知ったw。
 規制緩和以後の日本の小さな醸造元のビールを褒めているのは、「できない子 ビール」とかを見て、日本にも色々あるんだなと思っていたから、なんか嬉しいw。
 イギリス『クリケットという競技がある。お茶の時間などを挟んで四日間も続き、結局引き分けで終わったりする奇妙なスポーツだ。』(P89)クリケット、名前だけ知ったがそんなに長くかかるような競技なのか(いや、それもよく考えれば聞いた(見た)ことあるような気もするがすっかり忘れていた)。
 雑司が谷の墓地、『ここには夏目漱石ラフカディオ・ハーンが眠っている』(P133)というのは、谷口ジロー「『坊ちゃん』の時代」で夏目がくることで追い出されたというエピソードを知っているから(史実かは知らぬが、ああいうところで嘘はつかんだろ)、同じ場所に眠っているというのは、ちょっと皮肉を感じる。
 『イギリス人は若いうちからあくまで持ち家にこだわるが、日本の若者は賃貸で満足する。』(P141)このまえキーンさんの本を読んだとき、ボロくても一軒家にこだわるというのを読んだので、そこらへんの日本人の意識の変化に半世紀あまりの時間経過を如実に感じるよ。
 面白おかしく記事の改竄されることへの愚痴が書いてあるが、そうしたものしか載せないデスクには失笑するほかないね。
 『丸一日、うまくいかないことが続いたせいで、言わなくてよいことまで口に出してしまい、しかもそれを抑えられないのだ。しばらくして、自己嫌悪がやって来る。今日のような振舞いをしたせいで、日本人の間で日本人の間で、イギリス人全体の評価が下がったかもしれない。』(P188)こういう心理はどこでもそうだということを、他国の人の文でみるとより実感できるし、安心もする。
 『日本酒はこの上ないひどい二日酔いを引き起こす』(P210)これは日本酒自体の問題でなく、正直慣れとか体質の問題だろw