アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (文春文庫)

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (文春文庫)


内容(「BOOK」データベースより)
2004年ブッシュが再選されたのはアメリカ人の無知のおかげ!?子どもにブッシュをおがませるキリスト教原理主義の「洗脳キャンプ」から、奇妙すぎる絶対禁欲教育、建国以来最低に落ちたアメリカ兵の質まで―反知性主義が蔓延し、内部から自壊する帝国の驚くべき実態をえぐり出す刺激度120%のコラム集。

 「HONZ」というノンフィクションの本のレビューサイトで、ノンフィクションが好きなのに町山さんを知らないなのは〜云々(うろ覚え)、という文章を見て興味を持ったので、読んでみた、ただ、どんな雰囲気の文章やらが好みかがわからなかったので、まず図書館でこの本を読了(図書館に入っているものが、何故かこれしかなかったからw)。これは時事ネタを扱った軽めのコラム集ってところだったが、他の本もこのような感じのものなら買おうかまだ悩む微妙なところ(わざわざ単行本で買う気もしないが、文庫化する段になると古びてしまうんじゃないかという意味で)だ、ううむ……。
 カソリック教会神父の少年少女への性的虐待。日本では、ちょっと前韓国系の教会だかでそんな事件があったという記憶があるが、教会全体としてありがち(『その被害者は’50年からの54年間で約1万2000人(8割が少年)』)なことなのね(呆れ)。
 ユダヤ教の「ハヌカ」というイベントは、元々は大きなイベントではなかったが、クリスマスが商業的に大きいイベントになってきたから、ユダヤ系の子どもがプレゼントをもらえなくてかわいそうだから、クリスマス化していったイベント。ハヌカというイベントははじめて知ったが、中々面白いな、クリスマス化していった経緯が、特に宗教とか無い国とか人種だったら(例えば日本とかw)だったら単純に宗教色抜いたクリスマスという「サンタとプレゼント」というイベントにすればいいだけだけど、ユダヤとかだとやはりそうすることもできないのか。
 アメリカのフォルウェル牧師『’80年代のエイズ流行時には「エイズはゲイに対する神の天罰だ」と言って顰蹙を買った。』(P58)ああ、どっかでちらりと見たことある台詞だが、こいつが出典か。あるいは、単に同性愛者に差別的な人のそのような悪口を、影響力の強い人間が公言したから、「顰蹙を買った」のか?
 アフガニスタンで、米軍が主導する多国籍軍がした所業『「僕は膝に胸をくっつけるカッコウで縛られて、100人くらいの捕虜と一緒に、トラックのコンテナーに投げ込まれた」(中略)「すぐに酸欠になった。外の兵士たちがマシンガンでコンテナを乱射して空気穴をあけた。何人かはその銃撃で死んだ。」』(P74)アフガンでのアメリカ軍がひどいとは知識として走っていたが具体的にどんなことをしているとまでは知らなかったので、この描写を見て唖然としてしまった。アメリカという世界一の大国が、現代において、このようなことを平然とやっているということが信じがたくて。
 テロ容疑者と目された、中東系のカナダ人やアメリカ人が、CIAに拉致されて、中東に送られて、そこ(拷問が容認されている国)で拷問をされている、というのは酷く怖い話。疑われている、無実の人が拷問を受けるケースもままある(その拷問で死ぬケースも)というのは空恐ろしい、なんか現代のアメリカというきわめて進んだ国で、そういったことを国家が行っているというのを見ると、世界が昔よりずっと進歩しているというのは幻想なんじゃないかという感覚に襲われるよ。それに、そうした行動を掣肘し、制裁することで制御することが事実上できない大国だから、そういう行動に出られるんだと思うが、そう考えると、世界が1つになったらというのが一種のユートピアとして語られているが、もしそれが実現して、その中でテロ組織が出てきたら、疑われている程度の理由で公然と拷問をするような政府が誕生するのだろうなと考えると、全然ユートピアじゃないなということを考えた。
 ランボー1作目は、地元の警官に虐待され、アメリカをベトナムの戦場に変えてしまうのだが、『本当にベトナムPTSDを受けた兵士は欝で自殺こそすれ、ランボーのように大暴れした事例は無かった』(P89)ということは知らなかった(というか、たぶん正確には忘れていた)ので、へぇ、と思ったが、ベトナム帰りへの偏見については記憶あるのに、実際のとこについてを忘れていたらいけないよなぁ。
 『田舎のほうではわずか一握りの富裕層と大量の下流家庭に分かれて、中流がいなくなっている。』(P108)まあ、日本でもそういうことが進行しているけど、なあんか、イメージの中世のような(中世欧州の実体というのはよく知らんから、「イメージの」とカッコつきで言っているが、まあ暗黒面として想起させられる封建的なもの)社会構造になってきているような気がするなあ。
 『覚醒剤メタンフェタミンアメリカの風邪薬から台所のレンジと鍋で簡単に精製できる』(P118)そんなの売っていていいのかよ!wしかし、アメリカの推理小説だかで、そういった普通の薬をなんかもっている薬中だかを見たことあるが、あれは大量に服用して代用品にするとかでなく、そのまんま覚醒剤の素みたいなものだったのか。
 アメリカのトウモロコシ畑『収穫期には貯蔵庫に入りきらないコーンが10階建てのビルくらいの高さの山に積み上げられている。』(P136)十階建て!!想像つかないなあ、あとで、ググって、画像見てみようかな。と思っていたが、どういう検索ワードつかったらその高さのが見つかるのか解らぬ、搭状になったものは見たが、10階建ての高さをもったものはまだ見つけられていない。
 「史上サイテー大統領ワースト10」というランキングで、5位が13代目フィルモアということだが、ペリーが来たときの大統領という知識しかないが、そんな評価の低い大統領だったのか。まあ、南北戦争前に就任して南部の奴隷制に有効な手を打てなかったということから、そういう評価になったということで納得、13、14、15代目が、5、4、1位とトップクラスにいることからも、そうした南北戦争ちょっと前にやったという時期的なことが大きいことがわかるしね。
 「ブッシュの知恵袋」といわれた大統領補佐官のローヴ、権力を握った後の政治に理想もビジョンも無いが、選挙だけはバカ強い(汚い手を使うが)、というキャラクターは面白いな。