アイスクリン強し


アイスクリン強し (講談社文庫)

アイスクリン強し (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
お江戸が東京へと変わり、ビスキット、アイスクリン、チヨコレイトなど西洋菓子が次々お目見え。築地の居留地で孤児として育った皆川真次郎は、念願の西洋菓子屋・風琴屋を開いた。今日もまた、甘いお菓子目当てに元幕臣の警官たち「若様組」がやってきて、あれやこれやの騒動が…。キュートな文明開化物語

 大正ロマンとかそのあたりの話が読みたくて、そういうのないかなと思って探していたが、畠中さんの本なので読みやすそうだし、明治時代の話ということで、コレも面白そうだと思い購入した。まあ、日露戦争後〜昭和初期あたりが大正ロマン(と昭和モダン)の時代なので、この本の舞台となる明治23年(1890)という日清戦争以前のこの頃では、本来探していた大正ロマン的な小説とは大分時代が違うけどね(笑)。
 冒頭辺りでは、明治で時代小説っぽい感じの文章なのにちびっと違和感を覚えたが、まあ、しばらく読んでいると慣れた。まあ、明治と現代よりも明治と江戸のがずっと近い(当たり前だが)そういう文章になるのも自然なのかな?それに、まだ、19世紀だしね。
 『「七年の十二月には、ガス灯が点火した」/八年、民はすべて姓を名乗ることとなっていた。神社の神主や坊主など、姓を付けてくれるよう頼まれ大忙しだったと聞いた。/「西南戦争が起こったのは明治十年だったな。」』(P19)こういった対話で歴史のことを語られると、なんだか「大鏡」とかそうした歴史書っぽいと感じる(といっても、実際にそうした〜鏡とかの歴史書を読んだことないから、単なるイメージですがw)。まあ、そこの部分が、羅列というか、とってつけた感がするから、変な(見当違いな)連想をしてしまったんだと思う。
 馬車鉄道は何人乗りくらいだったか調べてみたら、25人乗りくらいだったようね。調べるの結構な時間がかかってしまった(苦笑)。
 真次郎、お人好しにつけこまれて、小弥太という人をかくまわされて、しかもその小弥太が起こさんでいい親切心を起こして、勝手に店の物を使って食えない菓子を作られたのはひどく災難。本当に真次郎のことが可哀想で、周りの連中はもっと彼のこと気遣えよと結構本気で思った。まあ、真次郎は、自分の店に小弥太の持っている鍔を狙ってきて、店の中を無茶苦茶に荒らした士族に対しても、『お前さんの知り合いの士族たちも、早く何かを見つけて、江戸を思い出に出来たらいいのにな』(P91)と思うなんて、度外れのお人好しだな。まあ、とりあえず、資金を援助してもらうためのテスト(前日にその準備をしていたのを、その士族どもに台無しにされた)に受かったから、安心感もあってそんなことを口に出来たのだと思うが。
 パンバタプリン、どんなものかと思ったら、中々検索に引っかからず、ようやく見つけたら「パンプディング」のことね。いや、パンプディングも知らんが、とりあえずそれを検索して画像を見て美味しそうだとようやく思えた(笑)。
 『ならばせめて、最初に首を突っ込む外国との戦争で、勝ったりしないよう願うよ』(P212)結果から言っているようにしか感じないから、どうしてもしらけるなあ、こういう言説は。
 コレラの治療法が、「風雲児たち」で既にコレラの治療法(海水をきれいな水で薄めて飲ませる)が出ていたのに、その知識がまだ普及していなかったことに、しかも新聞記者やコレラの消毒に当たっている巡査達でさえ知らないことに、呆れるべきか悲しむべきか。
 手紙、沙羅が真次郎のことが欲しいとかそういったラブいものかと想像していたが、全然的外れだったわ(笑)。