図解 メイド

図解 メイド (F-Files)

図解 メイド (F-Files)

内容(「BOOK」データベースより)
メイドという存在はお金持ちの家にしか存在しない、ごく珍しいものではなかった。また、メイドと一口に言ってもその種類は様々であった。本書では、こうした使用人の生活環境や、周囲を取り巻く人々について取り扱っている。主に18世紀から19世紀にかけてのイギリスを中心に、「メイド」成立前夜とも言える16世紀イギリスから、その終焉に至る20世紀初頭のイギリスまで、そして「メイド」が最も数多く存在した時代「ヴィクトリア朝」を対象とした。


 ヴィクトリア朝の使用人、メイドだけでなく(男性使用人含む)使用人全般のことについてのことが書かれている、その当時の使用人について広く知ることができ、同時に当時の生活についての知識を得ることもできたので、読んでいて楽しかった。
 『ある時代には現代でいうところのサラリーマンと同じくらい一般的な職業だったのである。』(P3)というのは、植民地とかからの収入が多かったから、そうした生産的でない職種がかなり一般的になれたのかな?いやあ、時代背景がどういうものだったのか、世界史やったことないからふわふわだけど。
 『19世紀は使用人にとって辛い時代でもあった。使用人雇用階級層と使用人の社会的立場が接近したことにより、彼らを虐げることによってより強い線引きを行おうとする風潮が現れたのである。』(P12)社会的立場が近づいたことでより厳格に違いを示そうとする、というのは面白い。立場が遠ければ、わざわざ線引きせずとも違いがわかるから、そう考えると、納得のいくことだけど。
 中流階級以上出身で、働かざるを得なくなった女性がつく職業で、世間に認められるものは『女家庭教師か上流階級の話し相手ぐらいしかなかった』(P19)というのは、そのあまりの選択肢の狭さに驚く。
 ジェントルマン、金のための仕事はしない、っていつみてもすごいと思う。けど、まあ、よく考えたら、貴族ってそんなものなのかな?江戸時代の日本の武士階級では、金欠でピーピーしている印象が強いが、金のための仕事はしないし、教養があるという点では似ているし。
 カントリーハウス、平均で30~50部屋という、ものすごい数の部屋に驚く。まあ、単純に、核家族が主になり家電製品によって家事負担が軽減された、使用人のいない現代の感覚から考えてはいけないのだろうが。
 鉄道、『庶民の乗ることのできた、二等、三等の客車は酷く粗末なもので、三等にいたっては屋根すらなかったという』(P68)屋根すら!?ちょっと衝撃すぎてよく理解できないのだが。
 蒸留室(スティル・ルーム)、どんな部屋だろ?と思っていたら、元々は『女主人が様々な薬品を蒸留するための部屋だったが、次第に保存食やお菓子を作るような機能を持ち合わせるようになった。18世紀以降はそうした女主人の役割が家政婦によって引き継がれるようになったため、最終的には使用人区画の家政婦部屋に併設されることにな』り『それと同時に、蒸留質に置かれた蒸留器は姿を消し』(P156)た。ということで、元々は、蒸留するための施設があったが、年月の経過による様々な変遷によって、最終的に名前にのみ「蒸留」というのが残る食料品貯蔵室へと姿を変えた、ということなのか。
 現代の日本でイメージされる(『雇用主の家事一般を総括する』〈P124〉)「執事」は、本来は「家令」のことをさす。
 日本における使用人『彼らのたどった変遷自体は、欧米のものとよく似通っている。近代化に伴う女性の仕事の多様化と、女性の使用人離れ。中産階級の隆盛による使用人不足や、使用人に対する扱いの変化。住み込みの使用人の減少など、ほぼ同様の流れだった。』(P210)そこらへんは、どこの国であっても変わらんものなのだね。
 「ビートン婦人の家政読本」何回もこの本の中で言及されている本だけど、著者は1836年生まれで、61年(25歳のとき!)に出版して、65年(29歳のとき)に死亡って、そんなに若い人が書いた本だったのか!