ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業 上

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業〔上〕(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業〔上〕(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
遭難した男たちが生き延びるため少年を殺して食べたとき、その行為は道徳的に許されるのか?ハーバード大学の人気教授マイケル・サンデルは、鋭い問いかけで現代社会の中にひそむ「正義」の問題を取り出し、刺激的な議論を繰り広げる。その彼の話題の講義が待望の文庫化!NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第1回~6回、および東京大学特別授業の前篇「イチローの年俸は高すぎる?」を収録する。

 「これからの正義の話をしよう」も読んだが、こちらは重要なワードが見開きの末尾に脚注してあり、また解説で要点を示してくれているので、こっちの方がだいぶ読みやすい!あちらも結構読みやすかったのだが、この本はそれより更に、何も知識ない状態で読むなら特に脚注で示されているのでどれが重要なワードなのかがわかりやすくなり、読みやすく。
 冒頭から、(一同笑)がずいぶんと多くて、そういうのが出てくる文章(例えば鼎談とか)を読むのは久しぶりだったから、少しだけ面食らった。
 『帰結主義者の道徳理論の中で、最も影響力のある見解を一つ検討していく。それは、功利主義の哲学だ。』(P35)ああ、帰結主義の下位のカテゴリに功利主義があるのね。同じ「主義」という語があるから、どれが上位のカテゴリで、また、その下位カテゴリは何かということは考えたこともなかったが、そういった関係があるということに、今回はじめて気がついたよ(「これからの「正義」の話をしよう」でもたぶんでてきたと思うが、読み流してたよ、たぶんw)。他の〜主義でも、A主義はB主義に内包するとかの関係についても知りたいな。
 パターナリズム、『人々が自分を守ることを強制する法律だ。例えばシートベルト着用、オートバイのヘルメット着用など』(P108)あと麻薬とか、いままで、そうした例は知っていたが、どうも簡潔にまとめることができなかった(父権主義、という訳語と同時に覚えていたので、まとめるときにどうしても入れようとしてしまい、簡潔にならなかった)ので、こうして簡潔に説明した文章を見つけられて、なんだか胸のつかえがおりたような気分だ。
 リバタリアニズム、どうもアメリカのような大国で、「自由」という言葉がアメリカを語るときに必ず使われるような国で、移民を受け入れることに抵抗感のない国柄だからこそ一定の説得力がある提案のようにしか見えないなあ。だって、この世界観だと貧富の格差、というか貧者の数が増えて出生率が減り、移民が一定の度合いで流入してこないと、人口が減る未来しか見えないからなあ。それに、個人的に福祉を切り捨てるようなことは好きじゃないので、個人的にはそれを切り捨てられたら確実に将来困るから、僕がw。
 解説を読んで、サンデル教授がリバタリアニズムに反対する立場(人間はバラバラの個々人であるだけでなく社会性という要素についても考えなければならないとする)から理論を展開、とあり、もしかしたら、そうかな?とはちょっと思っていたが、言葉にされてようやくすっきり。僕は、読解力が低いからわかりやすく言い切って言葉にされないと、その人の立場の輪郭がぼやけたままになるので、上手く整理がつかない。
 ロックは、政府が作られた後も自然法は存続し、政府を作る主目的は所有権を守るためで、政府はそれに誓約されると主張した。だが、『何を持って所有権とするか、どうすれば生命や自由を尊重していることになるのか、そういったことを定義するのは政府』(P160)である、何故なら『所有はある意味では自然のものであるが、別の意味では協定によるもので』あり『所有権を恣意的に取り上げるのは、自然法の侵害であり違法である』(P171)からだ。
 ロック『権利は不可譲だから、結局自分自身を本当に所有していることにはならない。自分の権利を侵害するようなやり方で、生命や自由や財産を放棄することはできない。』(P178)自殺禁止とかそういう点ではキリスト教と同じだなあ、まあ、そういうことで同じ結果を導けるロジックつかっているからこそ、生命、自由、財産が自然権であると主張していることに説得力が増したのだろうか。それと『正統な政府が誕生したら、ロックが考える唯一の制限は生命や自由、財産を恣意的に取り上げることだけだ/しかし、過半数の決定によって一般に適用できる法律が公布され、それが公正な手続きによって正式に選ばれたものなら、課税であろうと徴兵であろうと権利の侵害にはあたらない。』(P178)という考えだったのにはちょっとビックリした。