「イギリス社会」入門 日本人に伝えたい本当の英国

「イギリス社会」入門 日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書)

「イギリス社会」入門 日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書)

内容(「BOOK」データベースより)
「女王のことをみんなどう思っているの?」「階級社会はいまも続いているの?」「雨ばかりで憂鬱になるって本当?」「おすすめの料理はなに?」。こんなベーシックな話題から、社会の真相に迫る奥深いテーマまで、イギリス人なら誰もが共有している習慣や感覚を、異邦人の目であらためてじっくり観察し、ユーモアたっぷりに解説した至極のガイド。本物のイギリスが立ち上がってくる。


 そういえば、現代外国の社会について書かれた本をろくに読んだことがなかったな、と思い読了。著者の本はこれで2冊目。まあ、両方とも図書館で読んだんだけど。
 著者は学生時代に偉い先生たちとのディナーの席で『共通の話題がなさそうな人と会話する能力も育ちのよさによるのだと、このときわかった。』(P23)とあるが、なるほど、そういう相手に合わせて適宜様々な話題を選べるというのも教養というものか。そういうことができるということは、当然広範な話題についていける知識を持っていて、視野が広いということだよなあ、羨ましい。
 ロンドンの年間降水量は東京の半分!なのに、何故雨(というか、曇り空からくる悪天候)のイメージがあるかというと、季節を問わずに2〜3日置きに軽い雨が降る、そして雨はたいてい数十分も続かない、というように少しずつだが頻繁に雨が降っているから。それと、曇り空のときが多いからそこから来るイメージも。
 ユニオン・ジャックのデザインは製品につけたり単なる飾りにつかっていたり、あるいは他の国の国旗にも使われている、これは無論、植民地が多かったのも理由だが、オーストラリアのように旧宗主国に複雑な感情を抱いている国も、(恐らく)デザインの秀逸さゆえに使っている。また、イギリスが嫌われて当然の国でもユニオン・ジャックはあちこちで見られるとあり、ああ、イギリスの国旗を単なるデザインとみなしているのは世界中どこでもなんだ、とそれを見て実感した。今までなんか、全くイギリスと関係のない製品で、ユニオン・ジャックが使われているのを見ると、なんとなく、<勝手次第>に使っている感がしてそこはかとない罪悪感があったが、他の国も同じと知ってなんかホッとした。
 イギリス人が住宅価格へ非常に強い関心がある、ということはこの本を読んではじめて知ったわ。『ある年齢から、イギリスでは賃貸住まいがどこか恥ずかしいこととされるようになる。(中略)二〇代ならまあかまわないが、三〇代だとまわりの目が気になりはじめる』(P43)ちょっと前までの日本みたいに、自分の家を持つことが一人前の証みたいなものなのかね。
 『王室が外国から来たという事実は、けっこう多くのイギリス人が気に入っている。』(P62)なぜかというと、イギリスには、移民とその子孫が多い(著者の家計もアイルランド系だ、とのこと)から、王室が外国から来たということは「世界のほかの場所からきてもイギリス人になれる」という考えを支えてくれる根拠になるからだ。とあるが、そうしたことを気に入っているのは意外だ、日本だと拒否感を覚える人の方が多いだろうし。少なくとも1500年以上土着しているんだから、それを日本人と呼ばずしてなんと呼ぶのか(笑)、と返せるものであるし、まあ第一日本人の半分くらいは弥生系(また、母系父系のどちらかがそうだとしても、当然縄文系と混血しているだろうし、縄文系もまた同じだが)なのに、僕もそうした感覚とは全く無縁だとは言い切れないしね。まあ、外国から来たということが事実として残っているか否かという差もあるだろうが。
 チャーチルナチス台頭以前は『一九三六年にはふさわしくない人物が王になるのを支持し、マハトマ・ガンディー(真に偉大な人物だ)を侮辱し、スト参加者をさげすみ、アイルランド民族主義者を軽蔑し、第一次世界大戦中のトルコでの恥ずべき軍事的失敗の元凶でもあった。』(P97)というような、列挙されてわかるとおり、偉大な人物とはとてもいえないものだったが、ヒトラーとの不妥協姿勢を貫いて第二次世界大戦を戦い抜いたことで真に偉人となった。前もどこかで読んだ気がするが(しかも複数回)毎回の如く忘れているから、いい加減忘れないようにせねば。
 イギリス、90年代半ば「クール・ブリタニア」というキャッチフレーズが流行し、98年には、東京の英国大使館は「UK NOW」という新しいイギリスを知ってもらうためのプロモーションを展開した。『「クール・ブリタニア」を喧伝していたことが、今は酔っ払いの大言壮語のように思える。あの時代はたいしたものを生まなかったと今ならはっきり言える。』(P190)日本がやっている「クールジャパン」というヤツと相通ずるものがあるねwあれも結局のところ何か新しいものを生み出しているわけではないわけですし、10年後に赤面せずにそうした語を政府が使ってアピールしてたという事実と向き合えるか、というと甚だ怪しい、少なくとも僕は無理(現在でも既に)。
 「ワン・マン・アンド・ヒズ・ドッグ」農民が犬に支持して羊にゲートを通らせる、そしてそれをスピード、能率、正確さなどの部門別に得点が与えられる、という競技(?)をしていた番組。1999年に打ち切られたのか。というか、この番組の話をこの本を読む数日前に「イギリスは愉快だ」に書いてあったのを読んだが、まさか数日中に別の本で読むことになろうとは思わなかったよ(笑)。