僕らの頭脳の鍛え方
- 作者: 立花隆・佐藤優
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/10/17
- メディア: 新書
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内容(「BOOK」データベースより)
今、何を読むべきか?どう考えるべきか?「知の巨人」立花隆と「知の怪物」佐藤優が空前絶後のブックリストを作り上げた。自分の書棚から百冊ずつ、本屋さんの文庫・新書の棚から百冊ずつ。古典の読み方、仕事術から、インテリジェンスの技法、戦争論まで、21世紀の知性の磨き方を徹底指南する。
たまに、こういう本の紹介本を読んで面白そうなものをチェックしているけど、最近読みたいと思う本があまり増えていかないので、読んでみた(まあ、余り増えすぎても読めなきゃ意味ないし、少しでも読みたいと思っている〈た〉本だけでも相当あるから、そんなに危急に必要と言うわけではないが)。それに、最近佐藤さんの本を多く読んでいるから、それで、これも読んでみようかなと言う気になったと言うのもある。
高畠素之という「資本論」を最初に訳した学者は、マルクス主義を紹介しながら共産主義に反対と言う姿勢をとって、反語法を巧みに用いて無政府主義運動をしていた。武市健人もヘーゲルを扱いながら、実質的にはマルクスについて書いた。という類のエピソードは面白い、そういう反語法を使って批判的な言葉を使いながら、そうした思想を研究したり、紹介したりしていたというのは興味深い。たしか「私のマルクス」でも、ソ連でも宗教的なことがそうやって扱われていたというエピソードがあったが、いまひとつ実際にそういうことをやっていた、ということに実感がわかなかった(曲芸めいた、珍しいエピソードのように感じた)が、日本の戦前でもそういうことがあったということを実際に人の名前を挙げて説明されたらちょっとずつ、そういう政府が認めていない思想をもっている知識人にとってのささやかな抵抗(喜び)として、抑圧的な政府のもとにいる知識人にとっては普遍的なことなのかな、とも思ったり。
立花『狂った政治思想はみなユートピア思想から生まれている。政治の基本は、ユートピアなんてものはないし、作ろうとすれば逆ユートピアを生むだけだったという歴史の現実を直視するレアリズムの認識から出発するべきです。』(P31)なるほどな、というか、こういうことは聞いたことがあるのだが、こういうことをしっかり心に刻んでおかないとな。というのは、僕は結局のところユートピア的なものにひかれている、望んでいる、という夢想的傾向がよく考えてみると少なからずあるからなあ。ユートピアという言葉を使うと拒否感があると思うし僕にもあるが、ある意味自分にとって都合の良い理想的な社会を妄想すると、どうにもユートピア的なものになってしまっているのに、この文章を見て気づく。まあ、個人の夢想ならいいが、現実の政治とかで無意識に抱いていたそうしたユートピアを好む気持ちを利用されないようにしないと、という自戒の意味もこめて、こうして文章でgdgdと書いてみた。
『佐藤 正しいことをやれば、どうして成功するのか、それは神様が判定しているからだ。これがプラグマティズムなんです。つまり、後ろに神様が隠れている。』(P125)プラグマティズムって、そんな考え方だったのか!プラグマティズムという語が翻訳された言葉の印象ではそんなところは全然感じなかったのでビックリ。
ブハーリンが罪を認めたことについて『佐藤 いろんな説があるんですよ。薬剤を打たれていたんじゃないか、脅されていたんじゃないか、あるいは裏で助けてやるという取り引きがあったんじゃないかとか。しかし、それが違うということは、私の付き合いのあるラーゲリ(矯正収容所)生活を経験したロシア人はみんな言っていたんです。いろんな裏の説に対して、「そんなことはない。人間と言うのは捕まりゃ、そうなるんだ」と。このことは私自身がつかまって、よくわかりました。人間というのは環境に順応する力がすごく高いんです。ポイントは途中で保釈されていないこと。保釈されると、娑婆に戻って、ほかの人と話をすることで現実を取り戻す。しかし一切保釈梨で面会も認められず、取調官と裁判所のあの閉鎖空間の中にはいってしまうと、やっぱり独自の世界観ができて、迎合してしまう。』(P129)という言葉には、実体験から実感していることだという、深みと重みがある言葉だし、非常に興味深い心理でもある。
佐藤『十年前と比べて、質疑応答の時間に質問する人が減った。ところが、質疑応答の時間が終わった瞬間に、演壇の前に長蛇の列ができる。人々の間で、個別に聞きたい、情報をシェアしたくない、という意識が強くなっている。』(P135)というのをみて、そういうのは最近の傾向であるのね、と感じたが、情報をシェア云々よりも個人的には質問がピントずれていたりしたら大勢の前で恥をかくのが嫌だという心理だと思っていた(少なくとも僕はそう)ので、そういう解釈もできるのか(僕はそういった意識がないからわからんが)。
立花『ゲオポリティクスは歴史的にナチスの世界制覇の理論という側面を持っていたため、戦後日本ではすっかり人気がなくなりました(中略)アメリカがソ連に対して何十年にもわたって展開した封じ込め戦略は、ゲオポリティクスそのものです。要するに洋の東西を問わず、世界戦略を考えるということは、ゲオポリティカルに見ることだというのが、昔も今も世界の常識なんですが、日本人には、この観点が全く欠けている。』(P142)地政学についての本を読んでみたいと気持ちがまたわいてきたぞ、買うだけでもさっさと買わないとな(興味がわいても、しばらくたつとまだいいかなあ、と言う気持ちになってしまい、先延ばし先延ばしにしていて、まだ買えていないから)。
佐藤『私の理解では「権力党」という政党があるんです。ロシア語で「パルチヤ・ブラスチ」パワーの政党です。これは自民党とか民主党、新進党、日本新党といった具体的な政党とは関係ないんです。権力と言うのは常にどこかにありますよね。その権力から常に外れない権力党員というのがいるんです。』(P155)そういう奴はいるよね、でも、そういう人たちに権力党というラベルをつけて分類する、ということは考え付かなかったのでちょっとハッとした。
外務省、宗男事件以後、専門家を作らないように(専門家と政治家が組んで自分たちの頭越しにやって、秩序が崩れるのを防ぐため)することで、外交では負け続けるが、対永田町では常に勝利する。という構造になっている、というのは、本当にふざけるなという気持ちがわいてくるなあ。本来の目的(外交)において、クソの役にも立たない連中(有為な人材を腐らせておく、あるいは作らないようにする努力しかしない)に税金がふんだんに使われ、選挙という洗礼も受けずに政治に関与しているというのは本当に腹立たしい。
立花『面白いのは、エンタングルメントという現象です。二つの粒子が、たとえ宇宙の両端にはなれて存在していたとしても、エンタングルメント状態にあれば、お互いに瞬間的に影響を与えることができる。アインシュタインの相対性理論によれば、どんな情報も光速より早く伝えることはできないはずです。だからこのエンタングルメントというのは摩訶不思議で、実在とは何なのか考えさせられる現象です。』(P179)初めて知ったが、たしかに面白い現象だ。
『立花 ガンにも個性があって、どれ一つ同じガンはないということが次第にわかってきました。』(P185)というのは、まるで知らなかったし、ガンに差異があるとは思っても見なかった(しかも「どれ一つとして同じものはない」と言うくらい多種多様に分かれるなんて)ことなのでビックリ。
立花『生命現象が解明されればされるほど生命現象に永遠の継続がないということがわかりつつある』(P186)そうなのか、現在を生きる自分にはまるで関係のないことだとわかっていながら、不死はありえないという事実を突きつけられ、それとしっかりと向き合うのはそれなりに痛みが伴う。
ナショナリズムも、共産主義運動も、二流のエリートたちの運動ということは、目から鱗。
雨宮処凛さんが麻生邸の前で集団示威行動を行って、3人の逮捕者が出たときに、その人たちを一刻も早く出すためにどうしたらいいか、まず佐藤さんに聞いてきたというエピソード(その後、佐藤さんは鈴木宗男に仲介した)は興味深い。
勝間さん『彼女の発想とは、基本的にマルクスの『資本論』で言うところの熟練労働者になれというものだと思うんですね。』(P204)名前は聞いたことがあるが、読んだことはない(基本的に、自己啓発本は読まない)が、そういう本なのか。
土井たか子、共和制論者でも社会主義者でもない『土井さんが議長になったとき、天皇に会いに行くことが楽しくてしょうがない様子だったそうです。「それだから大変なのよ」と言うわけです。それで周りの人たちがみんな文句をつけた。そんな調子で宮中行事に参加していいのかって。すると土井さん「私、田畑忍先生に相談する」と電話をかけた。田畑さんは土井さんの同志社大学法学部時代の指導教授で、尊王家です。「田畑先生が天皇の関係をいろいろやるのは別に問題ないと言ったから、私、いく」とか意味不明なことを言って、宮中行事に言ったそうです。/日本社会党における彼女の歴史的な役割とは、本人が意識していたかどうかは別にして、結果として、労農派マルクス主義があれだけ強かった党を非マルクス主義的な右翼社会民主主義政党にしたことなんです。』(P210)中々意味が解らないエピソードだな、でもこのエピソードを読んで、土井さんには好感をもったが。そして、党の色を結果としてでも変えたというのは(そして、なんで毛色の違う政党の政治家になったのかがわからぬが、いや他になかったのか、2大政党だけど、自民よりましということだったとか?)すごいな。
ブックリストにあげられている本のうちで特に興味がそそられたもの10冊。
「中国古典名言事典」(立花045)
- 作者: 諸橋轍次
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/11/01
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- 作者: 角田房子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 文庫
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- 作者: 小西豊治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/07/19
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- 作者: 伊藤昌哉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/03/10
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- 作者: 伊藤昌哉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/03/10
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「新左翼とロスジェネ」(立花148、佐藤167)
- 作者: 鈴木英生
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/04/17
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- 作者: 立花隆
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1983/01/10
- メディア: 文庫
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- 作者: 立花隆
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1983/01/10
- メディア: 文庫
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- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1981/10/19
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- 作者: 城塚登
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/02
- メディア: 文庫
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「国防婦人会 日の丸とカッポウ着」(岩波新書)(佐藤132)
- 作者: 藤井忠俊
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1985/04/19
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「入門!論理学」(佐藤188)
- 作者: 野矢茂樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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