凶鳥の如き忌むもの

凶鳥の如き忌むもの (講談社文庫)

凶鳥の如き忌むもの (講談社文庫)


内容(「BOOK」データベースより)
瀬戸内海の兜離の浦沖に浮かぶ鳥坏島。鵺敷神社の祭壇“大鳥様の間”で巫女、朱音は神事“鳥人の儀”を執り行う。怪異譚蒐集の為、この地を訪ねた刀城言耶の目前で、謎の人間消失は起きた。大鳥様の奇跡か?鳥女と呼ばれる化け物の仕業か?『厭魅の如き憑くもの』に続く“刀城言耶”シリーズ第二長編待望の刊行。

 今回は探偵役の刀城が最初から出ずっぱりでいいなあ、シリーズ進むにつれて探偵役が中々登場してこないことが多いけど、やっぱり最初から登場してくれたほうがより関心を持って読めるから、シリーズ何冊めかのものなのに最初から出ずっぱりなのは嬉しいなあ。と思っていたけど、読み終えてから解説を見たら、講談社ノベルス原書房で単行本化した後文庫化するという事情のせいで文庫に入るのが遅れただけで、この本は長編に2冊目だったのね(笑)。
 うーむ、それにしてもこのシリーズは、ミステリー要素の強いミステリーというか、最近(だか、どうだか知らないが)のミステリーによくあるように登場人物固有の話というか、事件とはあまり関係のないちょっとした日常描写とかがなく、基本的に事件についての検討していく部分がかなりのウェイトを占めており、地の文で一人称の人の内心がかなり赤裸々に書かれたりすることもないので、ネタバレを回避していくと感想に困るなあ。
 和船、帆柱を切るのは、船を転覆させないためとされるが、実際には切る必要なかったというのはビックリ。髷を切ることから、船乗りの神仏への祈りの儀式的な意味もあるとは思っていたが、思っていた以上に儀式とかの側面が大きいのね。いや、当時は本当に帆柱を切ることで転覆しづらくなるというのは、自明の事実だったろうから、帆柱を切ることが現実に有効な対処法だと疑いもしなかっただろうけど。
 あ、町長の話で駆け落ちがどうこうという話が出てきていたのは、先代の巫女に儀式中に行方不明になったが、実は男と満州にでも駆け落ちしたのではないか?という噂話がそれなりの信憑性を持って伝えられているからか。
 巫女のどう消失したかの真相は、最初はちょっと無理な想定じゃないか?と考え、また後でどんでん返しがくるのかな?と身構えていたが、外国の記録で凡そ15分というのがあると刀城が述べられているのを見てようやく、これが正答なんだということに納得がいった。