耳刈ネルリと奪われた七人の花婿

耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
平穏が戻り、いつものように農芸隊の活動に勤しむレイチとネルリ(+ワン)。そんなある日、どこからか聴こえてきた楽器の音に誘われて、彼らは舞姫チェリの華麗な踊りを目の当たりにする。彼女に感心しきりのネルリだったが、なりゆきでチェリと演劇大祭の舞台で勝負すると宣言!しかも今回は文化英雄コーチキンが審査員としてやってくるため注目度アップ!問題児たちの舞台は八高に何をもたらすのか!?大爆笑のネルリアリズムが襲いかかる第2弾。

 演劇のパートも面白くて、いいね。しっかしこの巻は感想を書くのが遅れた、感想を書くまで次の最終巻は読まずにおこうと思っていたから、書くのが遅れたせいで2012年中には読み終わらなさそうだ。
 先生は、大ネルリが出てくる有名な小説「動乱」を基にして芝居をすることを薦めるが、あまり良い描かれ方はしていないということなので、ネルリにそんなものを薦めるなよwww、嫌がらせかwww性格上嫌がらせでは(猫被っているとかでないかぎり)ないだろうけどさあ。
 『僕はいつもどおりの自然体でポツリとつぶやいただけだったのだが、(中略)僕のメッセージは完全に誤解をまねいてしまっているようだ』(P51)レイチが地の文(独白)でも本心を明かさずに、誤解だ誤解だ、と言いながら、わざとらしく冷静に挑発しているのは面白い。どこかのブログの書評でレイチの地の文ですら本心を明かさずに行動している(すごいうろ覚えなので全然違うかもしれない)と書いてあったが、こういう文章を見て、ようやくこういうことか、とわかる。ただ、この部分は非常にわかりやすいが他の部分で地の文と裏の本音を知ることは中々大変そうだなあ。
 『「レイチ、あなたはいじめられていませんね?」ときかれたから、「だいじょうぶです」と答えたので、たぶんだいじょうぶなんだろうと思った。』(P74)自分のことなのに他人事だなあ。まあ、妙にひらがなが多いし、地の文(心の声)でのおふざけなのだろうが。
 一夜にして村人が全員斬殺された「血の一月」事件でただ一人生き残った記憶が、とあるが、それをルポタージュ風に記したノートを従妹に見つかり通報されて、半日説教されたって黒歴史(ルポ風の自作小説)かよwwwと思うけど、この国家体制であるならば、ひょっとしたら、本当にそんな事件が起こってなかったことにされているかもという一抹の疑念が残るな。でもそれなら半日の説教じゃすまないなあ、とも思うが、見つかったとか通報された以降の地の文がうそなのかもとレイチなら疑えるから。
 レイチ、チェリ先輩の載った雑誌を欲しがってみたり、どこまで本心かわからない行動が多く、真意がどこにあるか個々までわからん主人公もまれだなあと思う。この行動も案外ネルリを嫉妬する姿が(あるいは自分がこういう行動をしたら、ネルリはどういう反応をするかを)見たいだけかも知れないし、単にミーハーで本当に欲しいだけかもしれんし、よくわからん。
 『そんな感じの村だったから、僕と二人の兄は孤立してた。いつも三人で遊んでいたような気がする』(P102)という台詞や、この周囲の行動や台詞だけを見ると、頭がよくてはかなげで繊細な青年に見えるなあ、レイチ。案外彼の本質はそういうものなのかもね、少なくともそうだといわれても意外には思わないし
 劇中の役名は、音は変わらず、漢字表記になっているだけだが、レイチは漢字表記(麗智)だと格好いいなあ。
 劇での演技を不自然でなくできるようにするためとはいえ、男子組がネルリにいいよる(ドッキリみたいな風に)芝居をするというのは悪趣味でイジメとされてもおかしくないと感じてしまうなあ。
 レイチ、兄の前では気丈でけなげな弟だな。久々に会ったからなのか、それとも兄に対してはいつもそんな感じなのかはわからんが。
 『オリガは気立てがよくて働きものでおっぱいが大きくて、古きよき本地民の理想的女性像を体現していた(最後の項目に関してはチェリ先輩は少しがっかりな感じだったので』(P170)イラストでは、結構胸が大きいように描かれているが、実際はスレンダーな体型なのかチェリ先輩。
 いくら芝居だからといって、『ネルリの首が手土産さ』(P191)というフレーズを入れて作詞できるのはすごいな、ネルリ。
 コーキチン、亡命して連邦外の他国に移って執筆活動を続けているというのは、なんだか今まで連邦が世界の中心で世界政府が如く、大なり小なり連邦に、その支配力が強いか弱いかの差異はあれど、統率されていると思っていたが、一応そうしたイデオロギーによらない他国もあるのだね。というか、そういうことを、このシリーズを読んでいて視野に入らなかったということを思えば、昔の共産主義陣営の市井の人々にとっては西側の国々について、普通に生活をしていれば意識をすることのない、全くイメージがわかない国だったのかな、と少し考えてしまう。
 しかしラストのネルリが栽培したひょうたん、ネルリが他の人に渡すのは嫌だという気持ちがあるのは、恋なのかな、変な独占力の発露ではあるが、まあ、恋にシリアスには向き合わず、ちょっと地の文含めてふざけているのはレイチらしいが。