王の逃亡 小説フランス革命7

内容(「BOOK」データベースより)
王家に味方してきたミラボーが病死し、議会工作の術を失った国王ルイ16世。王族の亡命に神経を尖らせるパリの民衆に、別荘行きを力尽くで阻止され、にわかにパリ脱出を決意する。スウェーデン貴族フェルセンの協力で、王妃マリー・アントワネットと幼い王子、王女とともに、真夜中のテュイルリ宮から抜け出すが、逃亡計画は次第にほころびはじめ―。国王一家の運命や、いかに。緊迫の第7巻。

 感想を書くまでにかなり間が空いてしまったから結構忘れているなあ。
 パリの人々がもしかしたら王が亡命するのではないかと神経質になっているのを王は地の文では理解できなくはないといっていて、王本人は人々の神経質になっているのに対して怒ったり憤ったりはしていないし、それに革命によって変わってしまったことも憤りを伴わず客観的に認識できているようだし、案外(といったら失礼かもしれないが)理解(共感)力が高くて我慢強いなあ。
 ロベスピエール、他派への懐柔策や小冊子で市民を味方につける戦術、故ミラボーを手本にして強かになってきたなあ。
 パリを出るという決断をしたときに、王が自分で決断するという新鮮な体験に気分が高揚していたという、子供っぽい微笑ましいような場面を見ると、後に処刑されることがわかっているから痛ましく思える。
 毎晩11時に就寝の儀が市民でも見られるって、本当に見世物っぽくて、この当時の王というのも大変だなと同情してしまう。
 フェルセン、王が目立つ行動するわけにはいかないのだし、自分が御者役を勤めるのだから、せめて道とどの門から出たほうが安全かくらいの下調べはしておこうよ、計画を成功させるに当たって一番重要な下準備を疎かにしているのは酷い。身命を賭すという気持ちを持っていれば成功するわけでなし、すごいことをしている自分というものに(あるいは愛人をその旦那ごと逃がそうとしている自分の献身に)酔ってしまっているのかい?
 脱出するのに多くのお金を持ってくることはできなくて『それでも金貨銀貨の数枚は隠しに忍ばせられたのであり、これで道中の費えくらいは賄える。』(P140)というように、一国の王がそのわずかな金銭があるから大丈夫と自分を勇気づけている光景を想像すると哀れに思え、なんだか泣けてくる。
 フランス王だと疑われて無礼な扱いを受けるというシーンは、革命後の変化を端的に現しているシーンだな、もちろんそう疑っている奴も本当に王なら無礼といわれてひるんではいるけどね。そして引きで、自分が王だと明かしたルイ16世の足元に90歳の老婆が身を投げるシーンは革命以前の尊崇の念が現されていて、90歳の老婆のその気持ちこそが現在のルイ16世にとって救いなのだと思うと少し泣ける。