魔法科高校の劣等生 9

魔法科高校の劣等生(9) 来訪者編<上> (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生(9) 来訪者編<上> (電撃文庫)

一学年目最終エピソード『来訪者編』!
金髪碧眼の魔法師・リーナが魔法科高校にやってくる!

 司波兄妹にとって波乱続きだった西暦二〇九五年もあと一月。
 そしてこの十二月にも、彼らが通う魔法科高校に『激動』はやってきた──。
 深雪のクラスメイトである北山雫が、USNA(北アメリカ大陸合衆国)に留学することになった。この時代、ハイレベルの魔法師は、遺伝子の流出=軍事資源の流出を避ける為に、政府によって海外渡航を制限(禁止)されている。にもかかわらず許可された理由、それは『交換留学』だからだ。
 アンジェリーナ=クドウ=シールズ。
 雫がアメリカに渡り、入れ替わりで魔法科高校に入学したのは、金髪碧眼の留学生。「司波深雪に劣らぬ美貌」と称される美少女、通称リーナだった。
 彼女を見た達也は、瞬時にその『正体』に気づく。
 リーナの本当の姿、それは大規模破壊兵器に匹敵する戦略級魔法師「十三使徒」の一人、USNAの魔法師部隊『スターズ』総隊長、アンジーシリウス少佐。
 魔法科高校にやってきた米軍最強の魔法師という『火の粉』を、司波達也はどう振り払うのか──。
(電撃ドットコム > 電撃文庫電撃文庫MAGAZINE > 新刊情報より)

 カバー折り返しの紹介文で「米軍最強の魔法師という『火の粉』」と、達也相手じゃ米軍最強も形無しで火の粉扱いでしかないのか(笑)。まあ、確かに達也は世界最強の一角であるくらいには強いので、相手がどんなに強くて、相性の問題があるとしても地力で明らかに劣ることはないだろうし(たしか達也は十文字先輩と相性が悪いんだっけ?web版のコメ返しでそのようなことを見た記憶が朧気ながらある)、しかも達也の近くには深雪もいるから、どんな強い相手だとしても絶望感を覚えることは難しいな。
 『エリカ、レオ、美月、幹比古は一人ずつ別々の車輌に乗り込んだ。お互い、少しくらいはハプニングの起こる可能性を期待しないでもない様子だったが、四人ともまだその段階ではなかったと見える。』(P33)おやおや、「四人とも」ということは、美月、幹比古のペアのことはともかく、エリカ、レオもお互いのことをそうした対象として結構気にしている様子なのね(ニヤニヤ)。
 リーナの髪型は縦ロールであるとは想像していなかったのでビックリした。ただ、イラストを見て、改めて読んでみると、気の強さだったり、自らが属する集団が背景にある自負心などは、金髪縦ロールのキャラ類型にも当てはまるように思えるので、なるほど、とも思える。
 131ページのイラストは、十文字先輩が真剣になって凄みを帯びた表情になったとき、その顔を見て真由美がちょっと怖いといっているシーンだが、地の文では演技か本音かは別とあるが、本気でちょっと怯んでいる表情にみえ、なおかつほんのわずかに距離をとっているので、その表情と動作に加えてちょっと怖いとまでいわれたら、それはわりと天然な十文字先輩でもへこむだろうな(笑)。
 リーナたちUSNA軍サイドの吸血鬼追跡のパートがweb版より大分増えたな。それと、USNA独自の追跡用の魔法やCADを使用不可にする魔法についての描写が増えたのも、やはりアメリカ母体だから凄さを感じさせる描写がないとアメリカなのにしょぼいと感じる、というかヤラレ役にされていることに読んでいて罪悪感すら覚えるから、USNAの魔法技術も凄いんだということをweb版よりも多めに描いてくれているのは良かった。
 レオが意識の底で吸血鬼たちの思念波での会話をノイズとして、その大まかな意味さえも、感じ取れるのは祖父の出自と関係があるのだろうが、なんで感じ取れるのかがさっぱりわからんな。
 幹比古、達也に救援要請をして助けに来てもらったが、戦闘後に他のグループと鉢合わせしないように撤退するときに、バイクだから2人までしか乗れないためしかたないんだが、彼1人が置いていかれたのには笑った。まあ、どうやら逃げおおせたようなのでよかったけど。というか、逃げられることはわかっていたから置いていったんだよね、たぶん。もし、そうでなかったら、達也ただの鬼畜だが(笑)。
 その戦闘の翌日にリーナとあったときに、達也が右肩を軽く叩いたって、web版で読んだときは特に気にしていなかったけど、前日にエリカに右肩の鎖骨を折られたから、茶目っ気を見せてそんなことをしていたのか。
 九重八雲が隠れて出番を待っていたことについて、web版で読んだときには、何で達也が知っていたのだろうと思ったが、単に達也の察知力が凄いのかと勝手に結論付けていたが、今回読むと『達也の「視覚」は、深雪が何処にいてどんな状態なのか、情報という形で識る事ができる』(P255)とあるのに気づき、八雲が深雪と共に行動していたから隠れて出番を伺っていたことがわかったのか、と達也が八雲がいることに気づいていた理由がようやくわかった。まあ、web版で何回も読んでいて、当然わかるべきところを今更わかるって、どんだけ適当に読んでいるという話なのかもしれないけどさ(苦笑)。
 達也の『フェアという言葉は自分が有利な立場にあるときに有利な条件を維持する為に使われる建前、アンフェアという言葉は自分が不利な状況にあるときに相手から譲歩を引き出す方便だ。』(P281)という台詞は、webで読んだときもなるほどな、と凄く寒心した言葉だが、何度読んでも首肯できるし、あまりこういうことは言われないが真理であるよな、と思える。
 『八雲と彼の弟子に挟まれてモーターセダンの後部座席に深く腰掛けた姿は、彼女の立場を知るものが見れば護送に他ならないだろう。両隣に座る男の実力を思い知らされたばかりのリーナにとっては、尚更その間が強かった。』(P286)「両隣に座り男の実力」ということは、リーナから見て、八雲の弟子も相当な実力を持っているのか。まあ、こういう機会に八雲が連れてきているのだから相当な実力なのだろうが、名前が出てきていない(よね?)から、そんなに強いとは考えていなかったのでちょっと意外だった。
 あとがきによると「来訪者編」は三分冊で、次の中巻は6月に発売ということなので楽しみ。