ジグβは神ですか

ジグβは神ですか (講談社ノベルス)

ジグβは神ですか (講談社ノベルス)


内容(「BOOK」データベースより)
芸術家たちが自給自足の生活を営む宗教施設・美之里。夏休みを利用しそこを訪れた加部谷恵美たちは、調査のため足を運んでいた旧知の探偵と再会を果たす。そんななか、芸術家の一人が全裸で棺に入れられ、ラッピングを施された状態で殺されているのが発見される。見え隠れするギリシャ文字「β」と、あの天才博士の影。萌絵が、紅子が、椙田が、時間を超えて交叉する―。ついに姿を現した天才博士。Gシリーズ最大の衝撃。惹かれ合う森ミステリィ

 Gシリーズ最新刊。加部谷たちが大学を卒業して就職した、となっているので結構前の巻から時間が飛んだなあ。
 タイトルにあるジグは、治具という漢字であらわすことができるが、それは「jig」に漢字を当てはめたもので元は英単語。
 赤柳(今回は男装をやめて水野を名のる)がVシリーズの紫子さんだということが明らかに!なんか赤柳って他シリーズの人物のようだけど、一体誰のことだろうと気になったので、ググってみて、そこで彼女だろうという話は目にしていたが遂に本編で明かされたか。というか、彼女に椙田(保呂草)が『嫁入りまえだしな』(P24)とからかっているが、以前短編で山吹さんの実家の島で医者をやっている小鳥遊練無のところに、彼女がたびたび遊びに来ていると明かされていたので、てっきり練無と結婚していると思っていたが、単にそれは友達のところに遊びに行っていただけなのか。
 水野が偶々このコテージに来ていた加部屋たちを見て、懐かしさから接近して思わず、彼女らの名前を言ったことで、加部屋たちがこの人は一体誰だったけと悩んでいるシーンは好きだ。
 この本を読む少し前に村上春樹の元オウムの人のインタビュー集である「約束された場所で underground 2」を読んだから、今回出てきた宗教施設の芸術村のような俗世から離れた場所があってもいい、というかあったほうが普通の社会に馴染めない人の救済にとってはいいという肯定的な感情が強くなった。もちろん、おかしな団体でないことが前提だけどさ。でも、俗世から離れたら、当然社会常識からも外れることになってしまうから、世間から見ても危険性がないと安心できて、社会に合わない人の逃げ込み場にもなる場所というのは非常に難しいのかな、とも同時に思うが。
 雨宮、テレビ局に就職したからといって、カメラも来ていないのに友人に手伝ってもらってレポートとして映像を撮りだすのは不謹慎に見えるな。いや、ミステリなのだからすっごく今更なんだけどさ(笑)。
 瀬在丸、いままで「せざまる」と間違えて覚えていたわ(恥)、「せざいまる」ね、「せざいまる」よっし、覚えた覚えた。
 ラスト付近の西之園の叔母と瀬在丸紅子が出会う場面は、それだけで読んでよかったと思えるシーン。以前の西之園萌絵と瀬在丸が会ったところも滅茶苦茶好きで何回も読んでいるくらい、個人的にはこういうシーンが大好き、個人的には瀬在丸さんは森さんの小説で一番のスターといってもいい人物(真賀田四季は最高の天才という、ある意味概念のようなキャラだから、スターというのとは少し違う気がするし)だから、その人がほかのシリーズの主要キャラと出会うというのは、それだけですごく興奮してしまう、描かれるのがわずか数ページであっても強い満足感を得ることができる。