ココロコネクト アスランダム 下

内容(「BOOK」データベースより)
目を覚ました時、太一はただ一人グラウンドにいた。人気もなく薄暗い校舎に怯えながら仲間を探す内に、ようやく伊織と合流する太一。そして二人は気づいてしまう。外に出ることができない『孤立空間』、そこで出会ったすべての人に現象が起きていると…。百人を超える生徒を積極的に取りまとめる生徒会長の香取、強制終了を避けるために動く文研部。だが現象が長引くにつれ、そこには不穏な空気が漂い始めていた―。愛と青春の五角形コメディ、完結。


 遂に本編も終了か。あとがきを見ると、短編集がまだ出るらしいので、それは楽しみだ。
 登場キャラ紹介で脇役もイラストを使って紹介してあるのはラストにふさわしくていいね!
 冒頭の『まるで体が別の空間に引き込まれていくみたいな感覚があった。』(P5)その表現からはどんなものか想像ができない上、まんま過ぎる!(笑)
 ふうせんかずらの『……記憶が消えちゃうと変わっちゃうから。死んだも同然だしねぇ……』(P61)という発言には、零崎シリーズでのいーちゃんの「変わりたいというのは自殺だよね」(うろ覚え)というのを想起させるな。
 文研部の面々だけ現象が出ていないから精神的にしんどいということはないが、異端審問や吊るし上げをくらわないか少し心配だった。
 ふうせんかずら、<三番目>たちの監視を逃れるためアクション映画みたいなスタントでの登場をしたが、どうやって監視しているのかいまいちつかめんなあ。文研部の面々は普通にふうせんかずらとかの名前を使っているが、そこらを聞かれて三番目たちにはばれないのかと疑問符が浮かんだが、たとえば<三番目>たちは1人(?)で1グループを観察しているとかなので、他者と接触する際にそれらの言動に気をつければいいというような算段なのかな?そうすれば人目につきにくいアクロバットな方法で登場したのも、だれか文研部以外を観察している<三番目>たちに気づかれない、という理由も一応つくといえばつくような気がするし。まあ、いまいちそのへんよくわからんから当て推量もいいとこだが。
 『なにかを話す際には、場面やその人にある背景が重要だ。なにかを言ったって、それはただの言葉の羅列に過ぎない。下手をすればただの音だ。場面や背景を伴って初めて意味をなすのだ。』(P251-2)状況やその人の背景があってはじめて言葉は人を動かす力を持つ。たとえば、それまで文研部の面々が行動していたが無為に終わっていたのは、個人ではなく対象が不明確な「みんな」を対象とした言葉を使っていた、というのはなるほど。全員が一丸とするために、全員を動かそうとするなら、まずは1人1人を動かさなければならず、天才的な煽動家ならぬ身としては、自分と相手との関係性というような背景を持ってきてはじめて人を動かすための力を得るというわけか。
 香取、自分がやらなければと気を張って、わかりやすい指針を打ち出すことに腐心していたから、ああも極端な方向にいったのか。嫌な奴とまでは思わんかったが、邪魔だと思っていてごめんな。
 ふうせんかずらたち、結局進化しきった知的生命体だということしかわからんのか。
 しかし、最後の記憶を失った文研部の面々が自分たちでその記憶を取り戻すという展開は読んでいて面白かった。そしてラストは、本編を締めくくるのにふさわしい、余韻を損なうものや物足りなさがない、いい終わり方でした!