昔には帰れない

昔には帰れない (ハヤカワ文庫SF)

昔には帰れない (ハヤカワ文庫SF)


内容(「BOOK」データベースより)
笛の音によって空に浮かぶ不思議な“月”。その“月”にときめいた子供時代の日々は遠く…表題作「昔には帰れない」をはじめ、神話的な過去と現在を巧みに溶かしあわせた「崖を登る」、悩みをかかえる奇妙なエイリアンがつぎつぎに訪れる名医とは…「忘れた義足」、ヒューゴー賞受賞に輝く奇妙奇天烈な名品「素顔のユリーマ」など、SF界きってのホラ吹きおじさんの魅力あふれる中短篇16篇を収録した日本オリジナル傑作集。

 この短編集は、ショートショートみたいな作品だったり、あるいは聖書知識が必要だったり、寓意を読み取ることが必要だと言ったものが多く、そのどれもが個人的に苦手なものだったためにどうにもいまいち楽しめなかった。
 「月の裏側」なんとなく、北村薫の「俺の席」(だっけ?)を思い起こさせるような短編、というかショートショートのような作品だ。まあ、ショートショートっぽいのはこの短編に限った話ではないが。ただ、最初に普段のバス停を乗り過ごしたときに、何で彼の妻が知っていたのかが良くわからない。わざわざ3人ともが家についてすぐに電話する大ニュースとは思えないし、とも思ったが3人が彼と同じバスに乗っているのはひょっとして彼がいつもどおりのルーティーンを守っているかを調べるためだったりする?ただもし調べていたとしても、実際彼の妻がやったのは彼に釘を刺すことなので、それだけを目的とするには、無駄が多い労力に思えるが。
 「楽園にて」、相手がこの惑星から出て行った後の「楽園」の人たちのパートを見て、騙されていたことに気づいたが、ちょっと怪しいなあとは思っていたが、3日間の調査で何事もなく、脅威を感じずに存分に休息がとれ惑星の環境もいいなら、自身が永住するわけでもないのだから警戒心が削がれても不思議ではないのだが、開発用の良い惑星を見つけに来た側もさるもので、最後で彼らの1人は、しっかりと胡散臭いことに感づいていたのか。
 「昔には帰れない」最初はどういう世界観で、どういうことをしているのかがさっぱりとつかめなかったので、冒頭を何度か読み返さざるを得なかった。
 「すべての陸地ふたたび溢れいづるとき」他の短編でもそうだが聖書知識が必須なように思える短編が多いなあ。そして、この短編は特に聖書知識(より正確にいうと聖書解釈の知識)がないとわからない短編のように思う。僕は聖書についての知識が全くといって良いほどないので、何いっているのかさっぱりとわからなかった。
 「行間からはみだすものを読め」登場するのが、アウストラロピテクスだったり、人形だったり幽霊だったりするのに会話メインで進む。抜け落ち、折りたたまれた見えない歴史というのはなんかいいなと思う発想だ。しかし、こういう寓意を読み取らなければいけない短編はさっぱりわからんなあ。まあ、僕が持っている、もともとの知識が貧弱だからというのが原因だから自業自得なんだけどさ。それに寓意云々は、この短編集全体的に言えることだけどさ。