帝都物語 第壱番

帝都物語〈第壱番〉 (角川文庫)

帝都物語〈第壱番〉 (角川文庫)

内容紹介
関東最大の怨霊平将門を喚び覚まし帝都を破滅させる怖るべき秘術とは!? 帝都壊滅を企む魔人加藤保憲の野望をつぶせるか!! 科学、都市計画、風水まで、あらゆる叡知が結晶した大崩壊小説。

 大正ロマンの時代の小説が読みたかったので、有名なこの小説を読む。というか、そういうのを読みたければまず最初に手を出してしかるべきなんだろうけど、大正ロマンの時代の日常とかが描かれている小説とかを読みたかったので、オカルトとかバトル的なものが多く日常の生活を描く場面は少なそうと思っていたのでこの小説(しかも何巻もある長編!)を読もうという気には中々なれなかった。そして、その予想は概ね当たりだった。大正時代の人物について詳しく知らないので、どこまでが史実の人物、エピソードなのかよくわからなかった。たぶん、登場人物のところにある辰宮洋一郎より後ろに書かれている人たちは創作でそれより前は史実の人物だろうとは想像できるけど。
 高知の宇賀瀬という土地の一角にトビスという土地があり、その名前は首が向い地まで飛んでいったことが由来だそうで、将門の首と同じような話だが、それにどういった意味があるのだろうかちょっと気になるけど、こうした伝承の意味を知るためにはどんな本を読んだらいいのかな。あと、トビスが飛んでいった向かい地はどんな地名が着いているのかがちょっとだけ気になる(笑)
 旧暦から太陽暦に変えた事情、翌年が13ヶ月あり、月給を13回支払わなければならぬことを避けるために改暦した、というのは面白い。しかし、この本でその記述を見た後にほかの本でも同じことが書かれていたから、結構有名なエピソードなのかしら。
 『蟲毒のうちでも最強といわれるのは蛇だ。』(P128)とあるのを見て、「蟲毒」なのに蛇?とすこしいぶかしく思ったけど、漢字では蛇も虫偏なのね。ということは、すごい今更というか常識的なことなのかもしれないけど、蛇と虫は同類項としてひとくくりにして扱われていたってことか、いつごろまでそう思われていたとかはわからないけど。
 幸田露伴森鴎外がペンタグラマ、清明紋などを話している場面で、籠目という言葉が出てきてふと思ったんだが、ユダヤの「ダビデの星」とかも籠目が由来だったりするのかな?どうもWikiを見たら、籠目紋という同じ形の家紋が日本に存在するようだし。
 渋沢栄一に『明神も天神も、古くから江戸市民の敬愛を集め、人身の安寧をはかる大きな力となってきた。これらの御霊がわれらを守ってくださればこそ、江戸はたび重なる火事や地震にも耐えてきた。この役割はきわめて多かったと思う』(P167)江戸時代の武士とかは朱子学を勉強しているから神仏とかを馬鹿にして、そういう存在を信じない無宗教的なところがあるというイメージだったので、元幕臣である渋沢がそういっているのはちょっと意外だったが(こうしたテーマの小説だから、そう喋らせたというのももちろんあるだろうけど)、Wikiを見たら農家の生まれだったから、それでなんとなく納得した。なんとなく納得したのは、城下〈都市〉にいる人たちよりも、自然といった人知を超えたものと触れ合う機会が多いし、そういった神仏といった存在を無碍にすることはないだろうとなんとなく思ったから、まあ、的外れな納得かもしないけど。
 『欧米の住宅には半地下ないし地下室をそなえる例がすこぶる多く、地上部屋に見られぬ長所を居住空間の一部に利用する慣習がすでに一般化している。ぼくが描く東京地下都市構想にとり、すこぶる心強き味方といえる。』(P236)といっているが、確か欧米の地下ないし半地下の住居って、貧しい人たちが住んでいるような場所じゃなかったっけ。まあ、自分の着想に夢中になって、そうした都合の悪い部分を黙殺しているのだろうけど(苦笑)、それに地下都市が実現可能で、東京をまるっと地下へ移せたとしても、電力消費が非常に増えると思うがそれを賄えるのかなあ?
 加藤中尉、朝鮮語で寝言をいっていたりするわりに、鮮人という略称をもちいていたりと結局日本人なのか、いまいち判然としないな。でも、まつろわぬ民をルーツとしてもっていて、韓と縁が深いということはわかったが、ここまで日本に危機をもたらすことに執着するとは、怨霊の類なのかな。
 渋沢栄一が夜間飛行で東京の夜景を眺めたというエピソードは好きだが、史実かどうか気になるな。