MUSIC

MUSIC (新潮文庫)

MUSIC (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「痛快な小説を書きたかったのだ。どこまでもどこまでも痛快な」―。無敵の野良猫スタバ、猫笛を操る少年佑多、俊足の少女美余、恋人を失った北川和身、アートの世界的権威JI。4人の人間は1匹の猫によって東京から京都へと引き寄せられ、ついに「鳥ねこの乱」が始まった…。疾走は止まらない。猫と青春と音楽が奏でる二都物語は、時空間をも超越し、小説の奇跡がここに結実する。

最初の方から、たしか「LOVE」で登場してきたキャラが再び出てきているとは思っていたが、途中で解説を読んだら、「LOVE」の続編かい。というか、最近こういう解説を本文を読む前とか後じゃなくて、途中で気分転換というかそんなもののために本文の半ばくらいという変なタイミングで読むことが多くなってきたなあ。いや、だからといってどうということはないのだが、そういうことは我ながらちょっと変だと感じている(し、中位がないときとか、たまに中途でネタバレを見てしまうことがある〈まあ、それもネタバレを読んでしまったほうが気楽に読める場合もあるから一長一短だけど〉)ので、書くことで今後読了まで自制できたらなと考えている。
 『猫の体毛の灰色は英語ではブルーと表現される。』(P22)ということははじめて知ったがどうしてだろう、と思っていたら、その後『すなわち憂鬱(ブルー)。』(P117)とあったので、実際にはどうなのかは知らないが、憂鬱と灰色という取り合わせは個人的になんとなく納得できたので、本当の意味を知りたい、とちょっと気になっていた気持ちがなくなった。
 京都、伏見稲荷の名物に雀焼きというのがあるとは知らなかった。というか、これを読んだときは猟師についての本や漫画を読む前だったから、雀がわざわざ売っているほどに需要がある(ということは、それなりに美味しいのだろう)、というのがまず驚きだった。雀とかは骨ごと食べるのがどうやら普通のようだが、今まで知らなかった。あと、いくら小鳥とはいえ骨ごと食べるというのは、胃とかが傷つかないかなんか心配になる。雀の普通の食べ方として、骨を食べているのだから当然大丈夫なのだろうが、どうしてもね。
 アーティストJI、猫をテーマとした作品を作っているのに、それに猫皮のものを使ったりしているので、彼の猫に対して感情はよくわからないな。おそらく単純でも、普通でもないのだろうなということは想像できるが。
 皇居ラン、反時計回りで走る人がほとんど(逆走は7、80人に1人程度)、というような暗黙のルール的なものがあるというのは知らなかったが、そのことを小説に絡めてくるのも面白い。あと、ひょっとしてそれって、陸上のトラックの回り方がどっちかの方が走りやすく、その回り方へ統一されているというのを聞いた(あるいはテレビで見た、だったか)ことがあるが、その回り方と一緒じゃないかな?とふと思ったので、ググってみたらやはりトラックも左(反時計)回りなので、そういうのも反時計回りで回っている人が多い理由の一因なのかな。
 美術品(しかも重要文化財!)を盗んで海外などに売るような組織が出てくるが、フィクションであるとわかっていても出てくるだけで腹立たしい。現実でも盗んで海外に持っていくような屑どもがいるから、余計強くそういう風に感じる。
 祐太が夜に歌(猫笛)で猫たちをひきつけながら歩いている場面を想像すると、かの少年のスキンヘッドという外貌も含めて幻想的であり、絵にもなると感じるので好きだな。