実見 江戸の暮らし

内容(「BOOK」データベースより)
相手の顔さえよく見えないほど暗かった行灯。「数メートルに一軒」というほどの隆盛を極めた外食店。離婚・再婚は当たり前、婚活不要の自由な結婚事情―。名所図会や絵草紙をはじめとした図版を豊富に収録。目で見て、読んで追体験する、表舞台の歴史資料には記されない、江戸庶民の実生活を徹底ガイド。

 石川さんの本を読むのははじめてかな。解説に述べられている同著者の本では、「大江戸神仙伝」は現代人が江戸にタイムスリップする小説ということで、江戸についての著作を多く書いている人のそういう本というのは読んでみたいと思うし、「大江戸生活体験事情」という実際に江戸時代のライフスタイルを実体験して書かれた本は、面白そうで以前から読んでみたくあったがamazonで文庫本が品切れ状態(もしくは絶版)にあるので、まだ読めていない。
 江戸時代の女性は階級を問わずに、裾を引くように長く着付けた着物を着ていて、少し家の前まで程度だったら着物の前の合わせ目(褄)を掴んで持ち上げて済ませ、下働きしている女性だったり、長時間外出するのならば、『裾全体を持ち上げて腰の上に端折り、腰のすぐ舌に巻いている腰帯という太目の腰紐で固定した』(P18)が、腰紐は実用的だが実用的と野暮は紙一重なので、芸者集などは外出するときも左褄を取った。そのように、江戸の女性は家の中では裾を引きずって歩いていたということは知らなかった。
 江戸では色々なものの番付をつけるのが流行っていたというのは知っていたが、『為御菜』という、庶民のおかずの番付もあったというのは面白いし、当時の普通の人たちが食べていたものも知れて興味深い。それと、マグロから汁、まぐろすきみ、マグロきじ焼きなどまぐろ料理がいくつかその番付に入っていて、マグロが江戸時代でも庶民の食膳に乗っていたポピュラーなものだったことはちょっと意外だった、まあ、よく考えれば握り寿司のネタとかにもなっていたのだから特に驚くようなことでもないのだが、時代劇とかでマグロとかが出てくるイメージがなかったからそのせいで意外に思ったのかな。しかし、それは単なる個人的イメージだから、案外マグロとか出てきていますよ、というのだったら、勝手な偏見を持っていてすいませんとしかいいようがないが。
 「天下の台所」と呼ばれた大坂から来た人も江戸の飲食店の多さに驚いた、というのは知らなかった。
 日本酒、火入れをしていたから日本全国に流通させることができたが、ヨーロッパ人が同様の技術(パスチュアライゼーション)を知ったのは1864年というのはずいぶんと遅いな!樽廻船は酒樽を運ぶための船で1700石積みという大きさを持ち、千石船より大きいことは、以前はなんとなく「樽」という語から、樽のように小さな船なのかな、と最初にその語を見たときに想像してしまって、その後もずっとそういうイメージを持ち続けてしまっていた、というかこの本で読む以前もどこかでそれを見た記憶があるのだが、どこで読んだか、そして樽廻船が大きいという知識はこの本で改めて読むまですっかり忘れていた(苦笑)。
 大坂が銀遣いだった理由は、商取引の金額が十進数で細かく金額を表示できるほうが便利だったからというのは知らなかった。
 昼の一番長い夏至の、昼の一刻は2時間38分で、逆に昼の最も短い当時の昼の一刻は1時間50分。こうした時刻についての文章を読んで、小説とかで一刻は2時間だとか、四半刻で30分というのがよくでてくるから、なんか今まで江戸時代は不定時法時刻だということは知っていたはずなのに、今まで常に一刻が2時間だというような認識していたことに気づいた。