デスニードラウンド 1


デスニードラウンド ラウンド1 (オーバーラップ文庫)

デスニードラウンド ラウンド1 (オーバーラップ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
多額の借金を背負う女子高生のユリは返済のために銃を持ち、己の命をリスクに晒す…そんな危険な傭兵稼業に手を出した。彼女は合法・非合法を問わず危険な仕事を請け負う「死に損ない」ばかりの松倉チームで仕事を始めるが、なぜか連れて行かれたのは都内のバーガーショップ。「こ、これ、ヤバくないですか!?超ヤバイですよね!?」ユリの初仕事は、なんとバーガーショップのマスコットキャラクターを襲撃することだった…!不可思議な仕事依頼を切っ掛けに、銃弾と血と笑い声が飛び交う常軌を逸した夜が始まる―ユリは未来を切り開くために戦い抜けるのか!?『ベン・トー』のアサウラが描く衝撃の新シリーズ。

 「ベン・トー」のアサウラさんの新シリーズ、出ることは知っていたが、発売していたことに気づいたのは、ちょうどベン・トーの新刊を買うためにライトノベルの棚を見ていたとき、同月発売じゃなければ危うく見過ごしていたな(苦笑)。しかし、レーベルも新興のものだし、大人気になるとは思わない作品なので、次巻以後に発売を見過ごさないか少し心配だ(笑)。
 しかしこの作品は、銃の描写がやたら多いなあ。アサウラさんの作品だから、趣味全開だな、と微笑ましく思いながら読める(とはいえ、銃の種類とかよくわからんから読み流しているが)けど、そうじゃなかったら退屈だと感じてしまっただろうな。あと、相変わらずアサウラさんの食べ物の描写は実に美味しそうだ。天丼や野菜炒め(というより煮込みに近いもの)といった、特段変わったところがない普通の食べ物がすごく美味しそうに多くの言葉を費やせて描けるのはすごいわ。
 ロナウダやワック、またルック・ルック・ミー♪とか、こういうネタがメイン要素となっているシリアスな作品は、シリーズ内の1つの短編やあるいはネットでシリアスな笑い狙いでやっているとかならともかくシリーズ一発目でこれはどうなんだろう、という微妙な気分にならないでもないなあ。
 あと、ロナウダの取り巻きはMAC-10(マックテン)という銃で武装しているが、作中ではワックだから、登場人物には通じず何でこんな物を、と思われているのが面白い。
 ユリがこうした傭兵稼業をやるようになったのは莫大な借金が理由だが、自己破産とかをせずにいるのは、自分を置いて失踪した家族探しのためとは泣ける。しかし、現在では自己破産もできなくなっているだろうってのは、万一の逃げ道が塞がれているのは気分が重くなるなあ、一体どんな嵌め技はくらったのか。しっかし、そんな状況で傭兵仕事をやるというのに、保険に入れることができたり、実際に保険がおりるんだろうか、ということも少し気になるなあ。
 しかし、ユリの洋服を女子高生使用済み衣類として売ろうなんていうのは流石にうわあ、ってなるわ。あとユリ、松倉のチームに入ってからも学校へは行っていたが、部活はお金がないし、学内で両親の失踪が噂になっていたため、仲良くしてくれる人がいないため諦めたようだ。その話は使用済み衣類の話が出てきて直ぐだったけど、部活させてユニフォームも売るのか、なんて想像シテナイヨ、ホントダヨ。
 ロナウダは化物ではあるけど自分から攻撃せず、襲撃してきた相手に対してしか攻撃しない。そうしたユリたちが傭兵で、依頼主が殺せといったから仕事でやっているという以外に彼を打倒すべき根拠が見当たらない、という相手は悪人ではなく、ユリたちが正義ではなく、むしろ何もやっていない人間を殺そうとしているからどちらかといえば「悪」、というかロナウダを油断させるために奴の息子ともども殺すのだから普通に善悪でいえば悪か。そうして、その戦う正当性が何もなくただ目の前の敵を倒そうとしているだけというのは、そういった意味でもタイトル通り「デスニードラウンド」だし、そうした大きな目的や浪漫のない、ただ仕事だから戦うといった傭兵らしい感じも素敵。
 しかし息子ごと殺そうとするというのは流石に予想外だ、精々ユリの想像と同様に、息子と対話させて油断を誘う程度かと思っていたので動揺したわ、それまでユリの視点で見ていたから、仲間たちは「いい人」に見えていたから尚更。
 そして、ユリがそのことに怒ったり悲しんでも、ロナウダが生きているとわかると、即座に何をしてでも死から逃げようとあがき、そんなことをしているのを自分でもよくわからず他人を巻き込んでも逃げるために必死になって行動しているのは、人間の生への執着がいかに強いかがわかるし、そうした描写はあまり見たことないから、興味深く読んだ。そのロナウダ再生後に作戦もない、即興のごちゃごちゃした戦いになっている場面はすごい面白い。特に大野と大崎がトラックでつっこんだあたりとか好きだな。
 そしてエピローグ、ロナウダはまだ死なず、……か。またいずれ対戦する機会がありそうな終わり方だ。まあ、毎回同じ相手ではきっと飽きるので、今後何巻も彼と戦闘を繰り返すことにならなければいいなあ。