昨日まで不思議の校舎

内容(「BOOK」データベースより)
超自然現象研究会が配布した“エリア51”の「市立七不思議」特集が影響を与えたのだろうか?突如休み時間に流れた、七不思議のひとつ「カシマレイコ」を呼び出す放送。そんな生徒はもちろん存在しない。さらに「口裂け女」「一階トイレの花子さん」の悪戯まで見つかった。なぜこの三つなのだろう…。調査を進めた葉山君は、ある真実に気づく。ますます快調な、シリーズ第五弾。

 このシリーズは毎回読んでいて楽しい好きなシリーズなのに、創元推理文庫で追っているシリーズとかはあまりないから、チェックが甘かったのか、発売していたことを、お気に入りを整理しているときに久しぶりに似鳥さんのブログを見てようやく知った。でも、発売してから2週間程度で気づけてよかったよ。それと同時に、似鳥さんのもう1つのシリーズである、動物園が舞台のミステリの第二弾「ダチョウは軽車両に該当します」も6月に発売することに気づいたので、それは覚えておくようにしなければな。
 しかし、あとがきで担当さんにも今回で完結かと思われた、と書いてあるが、それはシリーズ1作目の「理由あって冬に出る」での壁男についても決着した、ということもあるから、そういう疑いをもたれても仕方ないよ(笑)。だけど、完結じゃないと言うことは好きなシリーズなので純粋に嬉しいよ、せめて葉山くんと柳瀬さんがく付き合い始めるところまで行ってほしいし、そのあとに恋人関係になったあとのエピソードも是非読んでみたいからね(笑)。
 しかし今更だが、いつもの「あとがき」とか、1作目だったり、本書だったりと、都市伝説的な内容がかなり盛り込まれているけど、似鳥さんって都市伝説好きなのだろうか?
 本編冒頭で触れられた、「自分の友人は変なやつばかりだ」というのは、プロフィールをどんどん詳細にしていけばどこかで必ず「個性的な」情報があらわれるから、よく知っているものほど個性的だと感じるのは、そのせいで、心理学的には「内集団びいき」または「外集団均質化効果」というものだ、ということは知らなかったが面白いし素直になるほどと思える。こういう心理学のちょっとした知識というのをもっと知りたい、と前から思っているけど全然読めていない。なので、心理学についての本をもう少し読まなければなあ、少なくとも積読して気が向いたときに読める状況にしなければな、そうでもしないと読みたいと思ってから、面白そうなのを調べて買おうとするところまでいく、途中で徐々に読む気が薄れていくというのが、起こってしまうからなあ(苦笑)まあ、他の本でもままあることなんだけどね。
 放送室の機械仕掛けの密室トリックをあっさりと見破るとは、葉山とか三野の推理能力は事件に多く関わってきているから洗練されてきているのかな(笑)。
 葉山が感じた、入学してから、時間を経るごとに慣れるのではなく、落ち着かない気分を味わわせる、というのは変な学校だ。だが、今までの多くの事件に関わってきたせいでそう感じているのでは、と疑いたくもなる(笑)。葉山くん本人も、現場の何を保存し、何から順番に確認すればいいのかというリストが頭に浮かぶくらいに、事件に慣れてしまっていることを、自覚しているようだしね(笑)。
 柳瀬さん『他の女から見たら、確かに葉山くんを身も心も虜にして毎日貢がせて愛の言葉を囁かせて性奴隷にしている私は、嫉妬の対象になってもおかしくないかも』(P41)冗談であるが、やたらエロイ、特に「性奴隷」とかね(笑)。
 口裂け女を彷彿とさせるように犯人が作った事件で、犯人はミス研のポスターを破損したが、そのポスターは値段的に安いものだったが、だからといって恨みがあっては買い行動したわけではない、と速断しているのはなんでだろう?単純に価値がわからなかったから、たまたま安いもの、あるいは高いもの、を破損させてしまったということも十分に考えられると思うのだが。と、個々まで書いておいてあれだが、同日中に4つの事件を連続して起こすのに、下準備として部室にどんな物品があるか視察していただろうから、吹奏楽部をメインと思わせるためにあまり高いものは破損させたくないだろうから、値段もきちんと調べたんだろう、ということなのかな。まあ、コロンボのポスターとか、市価を調べるの面倒そうだなあ、と思ったから、そんな疑問が頭をよぎったのだが、ある図柄のものを画像検索するということが最近できるんだっけか、使ったことないからよく知らないけど。
 葉山くんが、秋野と妙な状況になっていたとき、絶妙のタイミングで電話をかけて浮気wを疑うなんて、柳瀬さん勘がいいねえ(笑)。
 用務員の御隠居さん、「子供の悪戯かね?」とまず口にしていて、葉山くんが「いえ、大人の〜」といっていたのは、子供という言葉の認識が微妙にかみ合ってないんじゃない、と思って微妙に笑った。たぶん用務員さんのほうは、精神的にという意味か、それとも単純に高校生を子供と思っているからだと思ったのだが、真相を知ると後者はなさそうだし、普通に幼児で認識は合致しているのかな?そうだとしたら、早合点で勝手にうけていたのは恥ずかしいな(苦笑)。
 しかし柳瀬さん、人に嫌がられるかも、ということを気にしないで、ズバズバと質問することができる押しの強さは(少なくともミステリにおいては重要な)才能だよなあ(笑)。
 葉山君と柳瀬さんの会話で自然に人間のでは手には負えないから伊神さんを頼ろう、となったのには笑う。中盤から伊神さんが登場するが、やっぱり伊神さんが登場すると面白いなあ。伊神さんのキャラもそうだけど、葉山くんの伊神さんへの世話女房っぷりも好きなの。文庫アンソロジーの「放課後探偵団」収録の短編で葉山くんが、ご飯を作りに行くといっていたが、今回それが果たされたか。あの短編も伊神さんが葉山くんの自宅に来て、葉山くんの手製のご飯を食べているところとか好き、なぜなら伊神さんと言う日常から剥離しているようなキャラが日常的な面が見れるからね。
 話を聞いただけで、あっさりと事件の真相が大体わかるとは流石伊神さんだ、こういうシーンを見るとこのシリーズで伊神さんがあっさりと卒業した理由が良くわかる(笑)、だって、そうじゃなければあっさりと解決してしまい、長編にならないからね。それと伊神さんは、君ばかり面白い事件と遭遇して、と嘆いているが、そういうのは最近の名探偵では珍しい、まあ、記憶力良くないから印象に過ぎないが。うろ覚えだがホームズは事件がなくて暇で阿片を吸っていた、というようなシーンはあったことは覚えているのだが、それ以外で事件と遭遇できず嘆く名探偵というのは思い出せないなあ。
 伊神さんが登場して以降、解決編が続くが、実はいくつもの事件だったということもあって、それぞれの事件で関係者を集めて解説する間が適度に開いているので、解決編が長すぎてだれたりすることが全くない、そうした楽しんで読める工夫がなされているのはいいね。
 怪談口裂け女を連想させる事件で、論理的に捜査をする葉山が今回も捜査してくれると見込んで今回の事件を演出した、というのは探偵役を努めようとしていた彼にとっては口惜しいことだろうなあ。
 怪談カシマレイコの解決編での、至急で呼び出した、無関係の人へ体育科からの至急の呼び出しと思わせておいてから、別に用はないといって安心させることで、文句が出ないようにするという丸め込み方は、上手いけど、その効果を狙ってあえてやっているのはいやらしいなあ(笑)。
 怪談花子さんの解決編で、本人に直接ではないけど、葉山くんの柳瀬さんへの好意が口にされているのにはニヨニヨ。
 それぞれ怪談の事件の解決編後には、犯人の(探偵に話すのではなくて)独白みたいなのが数ページあるけど、特に花子さん事件の真相は少しぎょっとするけど、独白は読んだことのないようなものが描かれているのでいいなあ。
 市立三怪が実際にあったものだということは、ちょっと怖くなるなあ。日常の謎がメインのシリーズだと、昔の事件でも実際の殺人事件がでてくると普通のミステリとは比べ物にならないくらいの不安感や恐怖に襲われる。あと、都市伝説とかそうした不気味なものはそもそも苦手だし、都市伝説は現在を舞台にしている分、身近で怖さが増すというのもあるから、すごく普通に怖がってしまう。それに129〜130ページに、本編の謎とは全く関係なく、葉山くんが帰り道に傘を傾けて差しているから視野が狭くなっていた時に、女の子の足だけ見えてよけたが、道路の真ん中で何をしていたんだろうと気になり振り返ってみると、その場所には水溜りがあっただけ、というような怪談じみたエピソードが挿入されているから、それが布石となって、余計に怖く感じたというのもあるかもね。