なにかのご縁

内容(「BOOK」データベースより)
お人好しの青年・波多野ゆかりくんは、あるとき謎の白うさぎと出会いました。いきなり喋ったその「うさぎさん」は、なんとその自慢の長い耳で人の『縁』の紐を結んだり、ハサミのようにちょきんとやったり出来るのだそうです。さらにうさぎさんは、ゆかりくんにもその『縁』を見る力があると言います。そうして一人と一匹は、恋人や親友、家族などの『縁』をめぐるトラブルに巻き込まれ…?人と人との“こころのつながり”を描いた、ハートウォーミング・ストーリー。

 「昨日まで不思議の校舎」と同様に、発売していることを全然気づかなかったが、ちょうど同じころに発売していることに気づいて購入した。野崎さんの小説は「2」がそれまでの小説の総決算的な作品だったから、今後どういう作品を書くのだろうか、それとも今までとそう変わらないままなのか、どうするんだろう、と思っていた。今まであった人知を超越する天才や超自然的な存在や物が毎回出てきたが、今回はそういういつものものが存在しないということで、今までとはまた大分雰囲気が変わっている。まあ、よく考えると、喋ったり、ほかにも色々と人間的なうさぎとか縁いうのが出てくるけど、今までに出てきたスケールが巨大な超自然的な人やモノとかと比べると同類項にいれられないくらいのもので、感想を書くときになってそういえば、そういう点では同じか、とようやく気づいたものだからね。あと、笑わせてくれるような文章や冗談は今回もあるから、そういう点は変わらない。ただ、これまでの作品と比べるとだいぶインパクトが薄いなあ。だから、個人的にはワンパターン気味だったけど、以前までの雰囲気のほうが個人的には好みかな。
 第一話、貝澤さん、傘屋先輩のことを好きだが、照れ屋で視界に入っただけで物陰に隠れるって相当だな。しかし、それなのに彼の絵をいっぱい描いていることとそれだけ思われていることを、傘屋先輩が知ったことで縁ができたというのは不思議。だって、男女逆にしたらすごくわかりやすいけど、ドン引きされても可笑しくないこと所業だからね(笑)。傘屋先輩は、そんなに思われている、ということでほだされた、というかキュンときてしまったのかなあ(笑)。
 西院さん、「うさぎさん」が話したりすることは知らないはずなのに、DSのゲームソフトをうさぎに与えるとは、何を思ってうさぎにあげたのか謎だ(笑)。
 大人びた少年の篠岡君を見て主人公は『現代っ子ってみんなこんな偉大なんだろうか。ゆとり教育は実は素晴らしい施策だったのかもしれない。』と思っているが、君もゆとり教育を受けた世代だろ(笑)。
 西院さん相手に、グラウンドの使用権で無理な要求をした大友先輩は、園芸部から伴侶動物愛好会やら科学同好会、さらに学食にいたるまで陰湿な嫌が……、ではなくあくまで不幸な事故!が起こった結果西院さんに謝罪し、それに対し西院さんは「なんで私に謝るのかしら」という反応だったようだが、周りから異様に敬愛されているのね西院さん(笑)。ただ、彼女は何でもできそうにみえるから、本当に全く知らなかったのかだろうか、という疑問が頭を掠めるが、もしそのことを察していながらそうした反応だったら怖いなあ、まあ、考えすぎだとは思うけど(笑)。でも、『西院さんは人に隠し事をされるのが大嫌いだ。あと隠し事を暴くためなら学生の一人や二人躊躇なく消す』(P256)というように、なかなか物騒な御仁だし、そんな嫌、、、「不幸な事故」を起こしているという隠し事が暴かれていても不思議ではないからなあ。
 西院さんの以前の恋人(故人)の話、かわいそうとか思うより先にベタだなあ、と感じてしまった。しかし、死者の縁という話を見ると、本当に傘屋先輩との縁は切らないほうが正解だったね。
 茅弥、自分の言葉では西院さんに届かないとわかっていても、「でも。やらなきゃ」と行動を起こそうとしている、その決意は切ないなあ。
 縁と悔い(杭)を頼りに、故人との思い出の場所場所へと、西院さんに思い出の場所が何でわかるのかについて詳しく説明せずに連れ歩くというシーンは綺麗で好きだな。