ぼくは猟師になった

ぼくは猟師になった (新潮文庫)

ぼくは猟師になった (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
木についた傷や足跡などからシカやイノシシの気配を探る。網をしかけ、カモやスズメをとる。手製のワナをつくる。かかった獲物にとどめをさし、自らさばき、余すところなく食べ尽くす―。33歳ワナ猟師の日常は、生命への驚きと生きることの発見に満ちている。猟の仕方、獲物のさばき方から、自然と向き合う中で考えたことまで。京都の山から見つめた若者猟師の等身大の記録。

 題名からちょっと気になって、それにアマゾンの星がかなり高かったからきっと面白いだろうと思い読んだ。今まで知らなかった世界だが、興味深いし面白かった。本文中にカラーの写真が入っているから紙質がいいなあ。それで紙がちょっと厚めなので、外見よりもページ数が少ないが。
 著者はまだ30代と若い人だけど、子供時代に薪風呂に入っていて、家の手伝いで薪割りをしていたというのは驚きだ。まあ、その当時、そのことを小学校時代に日記に書いたら先生に驚かれたのだから、その地域でもかなり古めかしいことだったのだろうけど、案外そんな昔のものを極少数だろうが80年代くらいまで日常で使っている人がいた、という事実には驚きというよりも一般に使われなくなっても一部では意外と長く使われるものなんだねと感心してしまう。あと、薪でも木材によって燃焼時間などが違うのは言われてみれば当然だが、今までそうした違いがあると考えたことがなかったから、ちょっと虚を突かれた。
 狩猟免許を取るときに診察が必要でも、「覚醒剤中毒ではありませんか?」や「自己の好意を判別して行動できますか?」などの質問に自己申告で答えるって、ちょっとザルいなあ(笑)。
 雀などの鳥を網で捕まえる、網猟という猟法があるということは、ここで書かれているのを見て初めて知ったわ。
 イノシシの嗅覚は犬の4、5倍あるというのは、そんなイメージをまったく持っていなかったから驚いたわ。
 猟をするようになって、山には色々な種類の動物がいることが、その動物が残した痕跡を見分けられるようになることで意識されるようになったということだが、そうして人間の世界だけでなく、動物の世界まで見えるように、関われるようになるというふうに世界が広がるというのは楽しそう。
 解体作業の描写は、動物のでも臓器の名前は同じだから生々しくて痛そうに感じてしまうなあ。
 しかし、毛皮も自分でなめしてみたりとか、かなり色々な技術を習得しようとしているのは好感が持てる。
 あと、この本を読んだあと、以前から少し気になっていた同じく狩猟をテーマにした漫画エッセイの「山賊ダイアリー」を読んだがそちらも面白かった。

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

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