ルピナス探偵団の憂愁

ルピナス探偵団の憂愁 (創元推理文庫)

ルピナス探偵団の憂愁 (創元推理文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
高校時代「ルピナス探偵団」と称して様々な謎解きに関わった三人の少女と少年一人。だが卒業から数年後に、一人が不治の病で世を去った、奇妙な小径の謎を残して―。探偵団最後の事件を描く第一話「百合の木陰」から卒業式前夜に発生した殺人事件の謎に挑む第四話「慈悲の花園」まで、時間を遡って少女探偵団の“その後”を描く、津原泰水にしか書き得ない青春探偵小説の傑作。

 このシリーズ久々だから、登場人物のキャラをすっかり忘れてしまった、しかも作中時間もかなり経過しているから読み終えた後でも1作目に出てきた設定の7割も思い出せている自信がない。最初の短編は高校生だった皆が25歳のときの話で、短編ごとに時間が遡行していって、最後の短編は高校の卒業式の話。そして、個人的には最後の短編が好み、高校時代の1冊目が特段好きだったというわけでもないのだが、この巻の最初の話で死んだことが描写されている摩耶が登場してきているし、4人揃ったありし日の日常の描写があるから懐古的な気分になったのもあるのかな。
 キリエが摩耶の夫のことを「チュウチュウ」などと妙なあだ名で呼んでいて、妻が死んで傷心中の人間にずいぶん無礼だな、と少しムッとしたが、キリエと摩耶は親しいから以前からそのあだ名で呼んでいたとかなのかな。まあ、死の前の摩耶の不思議な行動を詮索しているから今更だし、そういえば、このシリーズはこんな風に探偵でも警察でも無いのに、ずけずけと踏み込んで勝手に捜査していき進行していくのだった、と半分呆れながらも思い出せた。
 しかし、シリーズ2作目といえども、主要な登場人物だったキャラクターが死ぬのは結構悲しい。ミステリーという死者がばんばん出てくるジャンルを読んでいてこんな感想はちょっと可笑しいのかもしれないけどさ。
 祀島の薀蓄で『駱駝の起源はアメリカ大陸だよ。今はいないけどね』(P75)とあったが、思いも寄らないことだったので驚いた。
 有名な犬のことを述べている会話文中で、ハチ公のあとに、スプートニク2号に乗ったクドリャフカと並んで主人の墓二十四年間寄り添ったボビーという犬のことが挙げられていたが、そのボビーという犬のことは知らなかったので、ちょっと気になったから、あとでwikiでも読んでみようかな。
 児童心理学によれば、虐待を受けた子供は、親を嫌いになるよりも、逆にどうやったら親に気に入られるのだろうと必死になるというのは泣けるねえ。ただ、犯人だったら、授業で聞いたというような、そんな生半可な知識を基に行動を推察されたくはないだろうが。