継母礼賛
- 作者: マリオ・バルガス=リョサ,西村英一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/10/23
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
あどけない美少年フォンチートに翻弄される継母ルクレシア、妻を女神のように崇拝する夫のリゴベルト。密やかに、優雅に進行する危険な三人の関係と、神話や絵画から紡がれる幻想が重なり合い、思いもよらぬ結末へと導かれていく。ノーベル賞作家が描く、香りと色彩に充ちた華麗なエロス的世界。
ここまで全体的にエロティックなものだとは、というかそれがメインで扱われている小説だとは思わなかったよ。だって、文学の大家が書いた小説だから想像していなかった。だが、よく考えれば谷崎潤一郎とかを文学の大家でエロも有名って人もいるから、このくらい普通に有るのかな?そういえば、谷崎の小説は一冊も読んだことがないから読まなくてはなあ。あと、「ドン・リゴベルドの手帖」はこの小説の続編なのね。続けるように文庫で出ていたけど、同じような趣向の作品化それともリョサの短い・非メジャーな小説を文庫化しただけかと思っていた。まあ、あやうくこの本を買う前にそっち買うところだったので、これを読む前に買わなくて良かった(笑)。
こうやって、絵のバックストーリーを物語仕立て(登場人物たちの妄想の産物だから当然だが)で、書いてくれるのは有難い。というか、有名な絵を解説しているような本とかでもこうした物語仕立てで絵に表わされているものを書いてくれれば、面白いのに、とも思った。まあ、そんな自分の主観が入るものを書くのは勇気がいるし、受けるか受けないかわからないから難しいとは思うけどさ。
物語で言及されている絵が、巻頭にカラーであるのは有難いわ。正直絵を文章で説明されても想像できないからね。というか、9章のフランシスコ・ベーコンの絵って、(異形とはいえ)人なの!?正直、これは、文章で説明されても、どこがどの部位かがいまいちつかめないわ。
父親が在宅中にも、そういう行為に及ぶとか、かなりルクレシアも麻痺してきているのか、行動がエスカレーションしているな。
しっかし、アルフォンソ、継母と密通しているのに父子関係は変わらず、普段どおり甘えさえしているし、今までどおりかそれ以上に敬意をもって接しているというのはおっそろしいなあ。こういうのを「恐るべき子供たち」というのかなあ、コクトーの小説読んだことがないからいまいちイメージつかめていないから、全然違かったらごめんなさいね。
しかも、そうして情事を繰り返したあと、無邪気を装って、父に継母を告発するなんて、本当に罪を知らないように父にそのことを示したのは、グロテスクにさえ思える。というか、エピローグまでは、本当に無邪気な子供かと思っていたよ。そこまで、演じきれるとは恐ろしいなあ。しかし、演じることについては本当に無邪気なのかもわからないとも思わせるほどの魔性があるな、アルフォンソ。