マネー資本主義

マネー資本主義―暴走から崩壊への真相 (新潮文庫)

マネー資本主義―暴走から崩壊への真相 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
世界を大恐慌という崩潰の淵に立たせた2008年秋のリーマンショック。何が“百年に一度”の危機を招いたのか。怪物のような金融商品を作った天才たち、年金基金の役回り、「超金余り」現象を生んだ背景…日米政府関係者やウォール街のトップら当事者の肉声が浮き彫りにした「失敗の本質」。出口なき経済昏迷の元凶を明らかにして、大反響を呼んだNHKスペシャル同名番組の文庫化。


 リーマンショックサブプライムローンの話は非常に重大なニュースだったのにもかかわらずろくに知らないままだったので、遅きに逸した感がすごくあるけど、ずっと知らないままというのも具合が悪いので、関連の本を今更ながら読んでみた。
 BRICsへの投資ブームを演出したのが、ゴールドマンって、そんな投資ブームを作り出せるほど大きな会社だったのか、いやあれだけ大きく扱われたのだから当然かもしれないが、そんな投資会社、しかもアメリカの、とかまるきり縁がないし、普通名前はこうした恐慌が起こらぬ限り聞く機会ないだろうからなあ。
 商機逃すまい、あるいは乗り遅れないように、競争相手に負けないよう取るリスクをガンガンと上げた結果が、ああした世界的な不況につながったのか。
 クリントン政権時代、貿易摩擦が起こっていたが、内部にはドル安で赤字を減らすことを主張する「通商派」とドル高でアメリカ人の購買力を高め、世界の投資家から資金を集め経済を活性化することを主張する「金融派」の2派が対立していたというのは知らなかった。一旦は「通商派」が買ったが、ルービンが財務長官在任期間より強いドルへと舵をきりはじめた。しかし、その間に協調介入してドル安を是正したのは、日本側がこのままの状態が続けばアメリカ国債を売るという姿勢を見せたからだというのは意外だった、正直カードとして、そういう姿勢を見せるような外交が日本の外務省に出来るとは思ってみなかったもので(失礼)。
 一部の富裕層のために高い利回りを上げてきたヘッドファンドが、世界中の年金機構が客になって、しかも客が増えて高い利回りが難しくなったのに、同様の利回りを求め続けたので以前より高いリスクをとらざるを得なくなったし、年金機構は説明を受けても目先の利益にとらわれて危険について鈍感であった。
 どうやって、住宅ローンが商品に変えられたのかがさっぱりとわからなかったが、「4章 金融工学」の説明は平易でわかりやすかったので、4章の説明を最初に読んでもいいかもしれない。ただ、それでも元々の頭が悪いからわかったような、わからんようなという程度の理解だが。本来は住宅ローンだけでなくさまざまな種類のローンを大量に集めて、リスクを分散し、更にリスクの高低で商品にして投資家に売るということで、つまり銀行が取っているリスクとリターンを変わりに投資家が取れる証券にしたということなのかな。しかも証券の中に含まれている何個かが焦げ付いても、ハイリスク・ハイリターンの商品が損を被るから、ローリスク・ローリターンの商品にはかなり損をしにくい構造になっていた。
 2006年夏についに住宅価格が下落に転じて、以前はサブプライムローンの貸し倒れ発生率は5%前後だったのに、2006年以降25%まで上昇した。
 有名なヘッドファンドの社長であるらしいジム・チャノスは、『今回、過ちを犯した人々は何のリスクもとらずにすみました。その代わりに、アメリカやイギリスの納税者が90年代の日本の納税者と同じように後始末をする羽目になりました。彼らが大量の利益を得ていたとき、納税者は何ももらえないにもかかわらず、です。これは、いい時は資本主義に則っていたのに、悪いときは社会主義を取り入れるようなものです。』(P260)というのは、そうした金融の第一線で活躍している人でもそういう認識を持っているのかと安心した。あと、ヘッドファンドは税金注入をされずに自分たちでのりきったというのは知らなかった。
 現在もマネー資本主義が猛威を振るっているというのは、まあ、そりゃたった数年で抜本的に変えられるとは思わないが、リーマンショックによって実態があぶり出されたことで、リスクをとることへの警戒心が芽生えているなら良いのだが。まあ、そうだとしても、いずれまた大きくリスクを取って同業者からぬきんでようとする会社がでてくるのだろうけど。