ソードアート・オンライン 13



離ればなれになってしまったキリトとユージオ。
二人はそれぞれの戦いに身を投じる――!

「咲け、青薔薇」
 《公理教会》の象徴である白亜の塔《セントラル・カセドラル》、最高司祭《アドミニストレータ》の待つ最上階を目指すキリトとユージオ。
 ついに二人は、《金木犀》の整合騎士アリスと再び対面する。しかし、キリトとアリスの《武装完全支配術》が暴走して塔の外壁を破壊、二人はカセドラルの外へと投げ出されてしまう。
 キリトと離ればなれになったユージオは、相棒の存命を信じ、単身塔を上り続ける。そんな彼の前に現れたのは、最古にして最強の整合騎士、ベルクーリ・シンセシス・ワン。
 子供の頃から憧れていた伝説の武人を前に、ユージオは青薔薇の剣を抜く。
 その決闘の結末は、一人の剣士の誕生により幕を閉じる。
 キリト不在の中、ユージオは整合騎士の鎧に身を包み、瞳に冷たい光を浮かべ――。
(電撃ドットコム電撃文庫トップ新刊/既刊情報ソードアート・オンライン より)


 そういえばキリトは脳神経が傷ついて、オーシャン・タートルに運ばれたんだっけ、アリシゼーション内では不自由がなかったからすっかり忘れてたよ(笑)。そして、現実サイドでは、護衛艦の任務放棄など不穏な空気が纏わりつきはじめたね。
 『現実世界なら、疲れて死ぬ、ということはほとんど起きないだろう。(中略)だがこの世界では時として意志力が肉体的な限界を超えてしまう。極論すれば、疲労と苦痛に耐えながら天命がゼロになるまで走り続け、その瞬間倒れて即死する、ということすらありえる。』(P20)「走る」という例を使っているから、現実に死ぬまで走ったというマラソンの起源の逸話を思い出し、思わずくすりと笑ってしまう。しかし、改めて思うと、そういう設定があるからこそ、かなりの怪我をしていても普通に戦えることが説明できるのだから、改めて考えるといい設定だよな。
 ユージオ、アリスとキリトのことを考え、少し嫉妬心が芽生えて、そこからアドミニストレータの誘惑(何らかの術がほどこされていたと思うが)によって一気に悪堕ちって、この巻だけでずいぶんと急展開だな!今までユージオの黒い感情が描かれてこなかった分、はじめてユージオのそういう感情を見ると、自分でも良くないと思う、勝手なイメージの押し付けが故だとはわかっていても、少しショックを受ける。しかし、そういう微かな嫉妬心の芽生えの描写の直後に『ならば、男が武器も防具も持っていないいまのうちに斬りかかり、倒すべきだ。キリトならきっとそうするだろう。頭ではそう考えながらも、しかしユージオは動けなかった。』(P77-8)という文章が来ると、若干キリトを落としている文章であるかのように、穿った目で見てしまう(笑)。
 キリト、同姓の親友ははじめてなのか!というか、異性の友人もアスナがいなかったら付き合ってもおかしくない人ばかりで純粋に友情だけ、という人は少ないからなあ(笑)。しかし、普段のフラグメーカーぶりを知っていると、『デスゲームSAOに囚われる以前の俺は、同じ学校の男子生徒たちを幼稚な子供と見なして常に一歩引いた付き合いに終始していた。』(P122)という文章がどうにも(女子は恋愛対象とみなしていたけど)という風に感じられてならない(笑)。
 アドミニストレータ、瞳孔が存在しないというのは、いったいどういった理由からだろう?しかし、まだ瞳孔が描かれない角度のイラストが無いし、こういった絵柄で描かれなくても、たぶんぱっと見て変だとは感じないだろうけど。あと、ユージオとアドミニストレータの挿絵は手とかも含めかなり色っぽくていいね。しかし、ユージオにはおそらく何らかの術がかけられていたとはいえ、彼女の愛をユージオ「だけに」与えてあげるなんて、嘘っぱちだとわかるのに、不安定な精神状況にさせられたこともあって、その誘惑に乗ってしまった。そして、ユージオの家族、彼の仕事に文句を言っていたくせに、ユージオの賃金を当然のように自分たちで使っているとは酷い奴ら。表面に出さなくても、申し訳ないと思っている人もいるかもしれないけどさ、長年そうした状況で利益を享受していたのだから、ユージオは「家族」と一緒くたにして怒りをぶつけてもそれは正当だ。
 また、ユージオは技なら既にキリトを超えているかも、というのは凄いな。やっぱりこの世界観では、キリトが最強だという印象が強いからなおさら凄く感じるよ。
 元老院、この人たちもアリスやユージオと同じ魂を持つ人間なのだから、身体は箱詰めにされ首だけ出された状態で、ただシステム・ウィンドウで禁忌目録の違反者を探していて、食事は蛇口から流動食で与えられているという、その光景はすごいグロテスクだ。
 ユージオとキリトの戦いが始まる、という引きで、次のソードアート・オンラインは「プログレッシブ」の2巻かあ!ここから8ヶ月も待たされそうなのは、なかなか鬼だな(笑)。