桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)


内容紹介
映画化大ヒット青春小説!
バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こして……。至るところでリンクする、17歳の青春群像小説。第22回小説すばる新人賞受賞作。(解説/吉田大八)


 単行本で出たときから少し読んでみたいとは思っていたのだが、文庫化したときには今は読む気分じゃないから読むとき買おうと思っていて、その後本屋で年間売り上げベスト10の棚においてあったが、気づいたときは1冊しか残っておらず、他の人の手に多く触れていたせいのか、カバーがいまいち本にあっていない、ふくらんだような感じになっていたのがもう少し綺麗な本がいいなと思って、そこでも買わなかったが、今年になっていつまでも気にしているのも嫌だからとりあえず買うだけでも買おうと思って購入したが、買ってからもこの本ってひょっとしてスクールカースト系の気分が陰に入るような成分も含まれているのかなと邪推して、というか直木賞を取ったとはいえ新人賞に文学系の人だと思って文学系の本は読むのに時間がかかるから、読み始めることを躊躇ってしまうから、こういう風にあれこれ理由をつけて読むのを遅らせてしまう。そんなこんなで、ちょっとしばらく棚に差しっぱなしで自宅で他に読む本の選択肢があるときは読めなそうだったので、通学時に携帯して細切れに読み進めて読了した。
 まあ、思ったとおりスクールカーストについても言及があるが、まあ基本的にカーストの上の方にいる人とかが多いし、各章の主役になっている誰もが学校の中に自分の居場所があるようだから、雰囲気が暗くならずにすんでいるので、それはよかった。
 あと、題名になっている桐島は登場してこないとは思わなかった。まあ、彼の退部による些細な変化が多くの章で少しずつ描かれているけど、同じバレー部で桐島と同ポジションで控えだった小泉風助の話以外はそれほど重大といえるほどの変化がなかったし、この題名はインパクトは強いけど、内容との関連はそれほど強くないような。まあ、作者さんが物語を考える上でフックとなった部分とかなのかもしれないが。
 「宮部美果」、重い重い。基本的に学生生活での話ばかりだったから、この人のように家庭のことでのヘヴィーな悩みの話がくるとは思っていなかったわ。
 「菊池宏樹」のラストで、久々に部活へいくやる気を出したのはいいけどさ、彼女を待たせるのは可哀想だから、キチンとそのことを連絡しているのか、というのが辺に木にかかってしまった。
 巻末の「東原かすみ〜14歳」は文庫化にあたり新たに収録された章らしいが、学外の友人がイジメられているときに、美紀のようにそういう人と付き合うと自分の格がおちるといように考えるのか付き合いが冷淡になる人だったり、そうでなくても助力ができないもどかしさから距離感がつかめず結局距離が離れてしまったりということもあると思うが、彼女のようにその場ではげますことができ、自分が好きなものは好きといえるのは素敵なことだな。
 しかし、朝井さん19歳で現実の自分とほとんど変わらない年齢の女性視点の話も普通に上手に書けているのはスゴいわ、照れがないもんなあ。