検証 アメリカ500年の物語

検証アメリカ500年の物語 (平凡社ライブラリー)

検証アメリカ500年の物語 (平凡社ライブラリー)

内容(「BOOK」データベースより)
世界に冠たる超大国アメリカほど無知と錯覚と誤解に覆われた国はない。せいぜい知るのは第二次大戦後の、しかも細切れのアメリカではないか。親米派のためでもなく、反米派のためでもなく、「知米派」をこそ増やしたい。アメリカ史の泰斗がその願いを込めてつぶさに検証した五百年の光と影。


 アメリカの歴史についてほとんど知らなかったし、知っていることは断片的なものでしかなかったので、少し流れをもったものとしてアメリカの歴史の本を読んでみたいなと思ったので、以前から少し気になっていたのだがいまいち買う機会がなかったこの本をようやく購入し読了したが、世界史は元々知識がないし、人名がずらっとでてきてもさっぱり覚えられないから海外の歴史についての本は読みづらいものが多いのであと、世界史の知識がないから、この時代のことが好きというのがあまりないというのも大きいし、仮にあってもその時代について専門的でない廉価な本というのは少ないから、あまり読まないのだが、この本はかなり読みやすかったのでその点でもよかった。だけど、思っていたよりも現代史の分量が多いなあ。
 北米への入植は遅く、イギリスの植民地がはじめてヴァージニアにできたのが1607年と中南米よりも一世紀遅いというのは、現在は北米の方が発展しているせいか中南米よりも一世紀も遅い時期になってようやく欧米人が北米に移り始めたというのは少し意外だった。また、北米では中南米のように強大な先住民の帝国はなかったため軍隊が派遣されてきたわけではなく、ごく少数の植民者が、そこに自分たちが定住する植民地を築こうとして入ってきた、という違いはあまり意識したことがなかったけど、そういうはじまりの違いというのは結構重要そうだな。ただ、その違いが具体的にどのように違うかについてはアメリカでさえろくに知らないし、中南米についてはもっと知らないので、よくわからんけど(苦笑)。
 独立宣言の6年前の1770年のアメリカの人口がたった214万人しかいなかったというのは、人数的な少なさというよりも面積あたりの人口の少なさに結構驚くな。
 それと、独立戦争ののちにも、イギリスがナポレオンと戦っていた時期である1812から1815年まで米英戦争でイギリスと戦っていたというのは知らなかった。また、この戦争が第二次独立戦争と呼ばれており、アメリカ人の自立が一層確立された契機であったようだ。しかし、結構重要そうなのにろくにページが割かれていないでどういう経緯で戦争したとかもまるで書かれていないのはどういうことなの?少なくとも1ページでさらっとワシントンについて話している中でさらっと触れられる程度で済ましているのはなあ。
 ヨーロッパがアメリカ大陸の問題に介入することに反対し、アメリカはヨーロッパ大陸の問題に介入しないことを言明した「モンロー宣言」は、元々はヨーロッパの列強と競い合う余裕のないアメリカとしては時刻を強化する歳月を稼ぐ自衛の策だった。自衛というのは知らなかった、今まで、その後の西部への拡張と近現代のアメリカが中米とかに勢力を広げていったから、アメリカ大陸でのアメリカの優位を説くものだと思っていたわ。
 1829年ミズーリ協定では、『将来、北緯三六度三〇分の線以北では奴隷制度を認めないという妥協が成立したのだった。』(P97)そんなものがあったとは(たぶん)知らなかった、忘れているだけという気がしなくもないのだけど(笑)。
 カリフォルニアで金が発見され、翌年(1849年)にカリフォルニアに多くの人が殺到し始めたため、その一攫千金の夢を抱いた人々の群れに「フォーティ・ナイナーズ」という言葉が使われたというのを読んで、ピンチョン「競売ナンバー49の叫び」という小説は以前からちょっと気になっていたがまだ読めていないのだが、この49ってそのフォーティ・ナイナーズからきているのかな、とふと思った。
 南北戦争後、北部人が支配して南部に駐在していたが1877年までに最後の連邦軍が北部へ引き上げていてから、南部各州では黒人への差別を合法化する動きが目立ってきた。というのは、今までなぜ第二次大戦後になって公民権運動が起こったようにひどい差別がある状態にとどまっていたのかわからなかったが、こうした動きが根っこにあるのね。
 大陸横断鉄道が開通したあと、それまで高原の先住民はバッファローを必要以上に殺さず、腱や骨まで生活用品として丁寧に使っていたのに、西部に乗り込んできた白人はスポーツを楽しむようにバッファローを数多く殺したり、東部の皮革業者が進出し皮を大量に東部へ輸送するようになって、生活資源や食料源を失った先住民たちは白人の開拓村を襲うことになった、なんか理由があるとは知っていたが具体的な理由までは覚えていなかったわ。
 禁酒法憲法修正第十八条として成立した、というように憲法で定められていたものだったというのは知らなかったので驚いた。
 1915年にはKKKの団員は約500万人もいたという事実には、そんな大規模な組織だったとは重いも寄らなかったので驚いた。
 『ケネディの残した業績は、個々の政策よりもアメリカ社会にリベラルなムードを巻き起こした点にあるだろう。』(P263)なるほど、そうした具体的には計れない点で大きな業績があるのねん。
 アメリカ西南部は元々メキシコの土地を奪った(例えばテキサス州は当時メキシコの辺境だったが、アメリカの開拓民がどんどん移住してきて彼らがアメリカからの援助の約束を取り付け1836年にメキシコから独立する反乱を起こし、有名なアラモ砦の戦いが起こった)ものだから、現在メキシコからの移民や密入国という問題を抱えているが、それを著者は「メキシコからの報復を受けているようにみえる」と書いてあるように、首肯しながら、実に因果応報だなと思わざるをえないな。