理想のヒモ生活 3

理想のヒモ生活 3 (ヒーロー文庫)

理想のヒモ生活 3 (ヒーロー文庫)


内容(「BOOK」データベースより)
善治郎が女王アウラの元に婿入りしてから一年。王都では二人の間に生まれた王子の生誕を祝う大規模な祭りが繰り広げられていた。明るい知らせに、わき立つカープァ王国。しかし、そんな時、女王アウラの元に一つの不吉な知らせが届く。ガジー辺境伯領に、今年の塩が届いていないという。原因究明と事態の解決のため即座に指令を飛ばす、女王アウラ。一方、後宮では、善治郎が、暇を持て余しはじめていた。暇に飽かせて、石けんや蒸留酒の製造に取りかかる善治郎。完成までの道のりは遠いが、順調に進むもの作り。しかし、そんな善治郎をも巻き込む大事件が起こる。3巻も書籍でしか読めない新章、新たなエピソードを収録してグレードアップ。

 このタイトルに限らずこの文庫自体が、いつも行っている駅の近くの書店では入荷されなくなったということもあるので、あれば買う程度の読者だったから、まあ、いっかとしばらく放っておいていたが、急に読みたくなった、本編はwebでも読めるけど、やっぱり書き下ろしの巻末の侍女たちの短編があるから、それが突発的に読みたくなったので、購入。
 労働力にならなくなった走竜や鈍竜の肉を食用にするって、いくら牛や豚などの家畜がいないんとかで、量が手に入る肉がそれくらいしか(鳥はあるのかしら?)ないとはいえ、よく食う気になるなあ。だって、走竜なんて、欧州世界で馬肉を食らうぐらいに忌避されてもおかしくないように思う。しかし、日本でも労働の役に立つ牛を食べるなんて、明治になってからそうした価値観が輸入されてこないと正気の沙汰ではない、といった感覚だったろうが、同じく牛を労働させている欧米では牛も食う価値観を持っているし、そう考えるとありなのかなあ。でもなあ、さすがに走竜はパートナー的な存在になりやすいと思うから、それを自ら食らうのではなくても使えなくなったら肉として出すのは、どうなんだろうなあ。だって、カープァ王国は温かい国ということもあって、結構食料ありそうな感じだから、走竜をわざわざ食うというのはどうなんでしょ。まあ、そんなに難しく考える必要ないといわれればそうだけどさ(苦笑)。
 善治郎はベロベロバーで、変な顔を作って、アウラにちょっと引かれているけど、ベロベロバーってたしか顔を隠して出すことで、赤ちゃんとかが反応するという効果が得られるんじゃなかったっけ。いや、どこかでチラリと見ただけで自信はないけど。まあ、それに、たとえ、そうだとしても、真顔で顔を隠して出し手という繰り返しをしていたらそれはそれで不気味だけど(笑)。
 しかし、善治郎は王配として、一応社交界でたり、税収でのごまかしを調べるなど、細々とした仕事を探したり、あるいは魔法習得のための練習をしたりなど、今更だが全然「ヒモ」ではないよな(笑)。そして、アウラが王として長く仕事を空ける事態を避けるために、2人目を産むのはまだいいということになったから、いよいよもって、彼もやるべきことがほとんどなくなり手持無沙汰の感があるから、より一層何か仕事をしたくなってきているのだろうな、いくら彼がそれなりにわきまえているとはいえ、何か変なことをして、それが彼ら夫妻にとって悪い結果にならないか少し心配だよ。しかし、一年もたってきたし、上に立つ者の振舞い方がわかってきて、照れずにそう振舞うことができるようになってきたというエピソードは、ちゃんと成長・適応しているのがわかっていいね。
 魔法には、正しい発音と正しい魔法量そして正しい認識が必要で、最後の正しい認識を戦闘中に持つことが難しいため、宮廷魔法使いのようなごく一部の存在だけが魔法を戦闘で使うことができ、ふつうは野営の際に建物を作るとか、水を浄化するとか、軍隊でも行軍中に使用するのが主な使い方であるというような、この世界の魔法の位置づけは面白いし、善治郎やアウラの日常シーンともしっかりマッチするように感じるからいいなあ。
 アウラのイラストは、やたらと太ましく感じてしまうようなイラストが多いから、個人的にはちょっとなあ。まあ、実際に本文中にも出産後少し太ったって書いてあるからそれを反映しているのかもしれないけど、ヒロインのイラストが魅力的でないというのはライトノベルとしてはなかなかないわ。しかし、アウラは王だからか、職人などに対して実に自然に「貴様」と呼ぶなあ(笑)。
 巻末の書き下ろし短編「付録 主と侍女の間接交流」、問題児三人組は絶対に破ってはならないラインは越えないが、「そのラインにかなりタイトに迫ることがある」という表現には思わず笑った。
 後宮出入りの商人、善治郎が見せた地球の文明品の技術を再現しようとしているというのは、善治郎本人にとっては、ある意味ありがたい存在なのかな?いや、まあ、彼が再現しようとしているもの優先順位は、善治郎のものとはだいぶ違うようだから、それほどでもないのかな?まあ、どちらにしても、生産拠点が国内にあるなら、輸出とかで国内に回る貨幣が増えるし、それなりに国庫も潤うだろうから、メリットはあるのかな。
 しかし、善治郎は、高価な香油を侍女たちにあげるというのはいいのだが、それを半分以上石鹸と混ぜて使えというのは、ちょっとどうかと思うわ。純粋に侍女たちへの贈り物なら用途を制限するのはあれだし、使い心地を試させて報告させるという目的があるようだが、それも結局は自分で試して比較してみないと本当のところは分からないだろうし、特に文化が違うのだから匂いについての感覚が違う可能性も結構高いと思うので、どうもこの行為はピントがずれている感があるな。しっかし、善治郎は現代日本人だから、それなりに倹約家だと思っていたけど、いまいち意味のわからない浪費をするね。