鋼殻のレギオス 25

内容(「BOOK」データベースより)
“新土歴”―自律型移動都市が歩みを止めた時代の物語。大広域情報誌「ワールド・タイムズ」の記者ミィフィ・ロッテンが記す“槍殻都市”グレンダンの現在!リーリン、クララ、アルシェイラたちの新たな日常を追跡した密着レポート!自律型移動都市という揺りかごを失った人類に襲いかかる“検索者”たち。存在理由、目的ともに謎の敵に立ち向かう国連軍の高位武芸者ニーナ・アントーク。ひとり戦いを続けるニーナの前に現れた、とてつもない剄力を持つ者。それは―「隊長、どういう状況ですか?」「変わらないな、お前は」最終決戦後の世界を描く「鋼殻のレギオス」真の完結巻!!

 ついにシリーズもこれで終わり、短編集。本編終了後の短編を2編含む。
 最初の短編「アーリー・ダイヤモンド」はニーナがツェルニについた当時の短編。しかしこうしてニーナを改めてみると、彼女のあふれ出る主人公臭は凄いわ。レイフォンよりもよほど主人公っぽい感じがするもの(笑)。それとこの短編ではハーレイとキリクの出会いも描かれているが、今までキリクにはそんなに強いという印象を持っていなかったのだがチンピラという風情の輩とはいえ武芸者三人をあっというまに倒しているのを見て驚いた。たぶん強いという印象がなかったのは、この世界ではかなり強い位置に属するレイフォンに強いという印象が持ちづらいから、それよりも実力は下で戦闘シーンもないキリクに強いあるいは強かったと思うことが難しいからかな。この短編でニーナが対決する相手は、Sっ気があって戦闘スタイルもねちっこいのに体力はないというのは同格以上相手ではきつそうだなあ。
 「バーベキュー・ポップ」レイフォン、外から見たら勝ち組に見えるとシャーニッドに指摘されても『でも、誰かと付き合ったりとかそんなことしてるわけじゃないですよ?みんな、友達です』(P55-6)一切動揺せず普通に言えるというのは流石の鈍感力だ。今回レイフォンが牧場でバイトをするが、その飼育する動物に過剰な愛着を覚えているが、情報盗難のためにそのうちの一匹が殺されてめちゃくちゃ切れていたが、最終的に出荷されることはわかっているし、最終日に同じ種の動物を食べることはわかっているのに、そのことを全く考えていないように怒っているのは不思議に思えるが、まあ、レイフォンならその思慮の浅さも仕方ないか。自分が世話をしていた固体を知らずに食べたということにショックを受けるのは普通な反応だとは思うけどね。
 「バス・ジャック・タイム」フェリ、あまりにも念威の量が多いため、念威の制御が出来ずに見る気のない場所が見えたり、聞く気もない場所の音が聞こえることがあるようだが、そういう状態に陥ったことを兄のカリアンがニーナやシャーニッドに話してしまったが、『フェリにとっては、この歳になってもまだ夜尿症が治ってないと思われるのと同じぐらいに屈辱』なので、イラストでは頬を赤らめながら、兄の脛を蹴ったというのは可愛い。
 「ウェア・マイ・ローズ」武芸科美形ランキングでシャーニッドが5位なのにレイフォンが4位というのは、レイフォンは情けない姿ばかりが描かれていたから、彼にそんなイケメンとか格好いいとかいう印象がないから甚だ意外感のある結果だ。しかしニーナに恋人が居るという疑惑を知って、レイフォンは『周囲の空気に花を散らすように、ほほを染めてひっそりと笑うニーナを想像して、レイフォンはあまりにもらしくないその姿に首を振って否定した。』(P153)というのは酷いなあ(笑)とくにレイフォンが恋愛についてのことでそんなことを言っているのが。しかしレイフォンはニーナへの恋心の自覚なしに、あるいは本当にあるのかもわからないのに、ニーナに恋人が出来たという情報を聞いてモヤモヤしているが、自覚していない独占欲は醜いぜとも思ったが、イラストで実際にその疑惑の2人が共に揃った姿を見たレイフォンが描かれているが、捨てられた犬のような絶望しきった目で見ているので何もいえなくなる(笑)。
 「パーソンズ」本編から時間が経ってレイフォンたちの学年が卒業してから3年後のグレンダンを描く短編、いろいろなキャラのその後が描かれているのはいいね。
 「ハイ・ブースター」最終決戦から14年後のニーナが主役の短編。レイフォン&フェリも登場。この世界に新しい秩序が出来始めているようだ、地上に下り立った普通の世界が構築されはじめている端境期。エーリ(短編とかに出てくるオカルトの人)、電子精霊の移動手段だった縁とは異なる、謎の空間跳躍をできるってなんだいそれ、しかしギャグだからああいった不思議なことがあると思っていたら、こうした本編のエピローグ的な短編でもそうした謎なことができるというのは予想外だったよ。
 それからフェリ『なんですか、みんなして、ちょっとわたしが永遠の超絶美少女になったからって。嫉妬されても困りますよね。なにしろこちらは生まれたときから美少女だったのですから、それがちょっとバージョンアップしただけじゃないですか。』(P277)といっているのは素敵です(笑)。
 また、年月の経過があってレイフォンとフェリの絆が強固になっているだろうというのもわかるのもいいよね。
 しかし最後の短編でもよくわからない設定をこんもりと出してくるとは流石に想定外だったよ。ある意味俺たちの戦いはこれからだ的にも見える終わりだなあ(笑)。