魔法科高校の劣等生 12

内容(「BOOK」データベースより)
西暦二〇九六年四月。司波達也と深雪は二年生に進級した。今までの目覚ましい活躍と実績が考慮され、今年度から新設された魔法工学科コースの生徒となった達也は、深雪の意向で彼女と同じく生徒会副会長にも抜擢される。今年こそ、深雪と共に平穏な学校生活を…と考えていた達也だったが、『新入生』たちはそれを許さなかった。七宝琢磨。入試成績トップとして、今年度の新入生総代を務めた『エリート』で、十師族の脇を固める師補十八家の一つ『七宝家』の長男。七草香澄、七草泉美。十師族のひとつ『七草家』の長女・七草真由美の双子の妹たち。同じ数字を持つ『ナンバーズ』の三人が、魔法科高校で波乱を巻き起こし―。新展開突入!

 ついに2年生編突入!今まではweb版を読んでいたので、加筆されていたところも多いとはいえ最終的な結果は知っていたので、久しぶりにこのシリーズの完全に新しい話を読めるのはとても嬉しい。
 今回は雫の弟、隅守賢人、黒羽文弥など達也に尊敬などの好意を抱いているショタ、美少年、男の娘がでてきて、なんだか達也は年下の男の子にモテモテだなあ(笑)。
 冒頭のカラーの十文字と真由美のイラストは、克人の性格からしてそんなことにならないとはわかっていても、そのイラストに本文から抜粋されている十文字の台詞を見ると、嫉妬っぽく見えて、そういうことは本編では見られることがないだろから、勝手な想像ではあるが、思わずニヤけてしまう。
 いつも飛ばしていたからわからなかったが、改めて数えてみると冒頭のキャラクターと用語の紹介だけで大台10ページもあることに思わず笑ってしまった。そして今回、戦略級魔法師十三使徒の名前と魔法名が載っていたことに気づいた!
 しかし九重八雲のキャラ紹介のところにイラストがあるが、彼がイラストかされていたことをすっかり忘れていた(覚えていないが、たぶん、挿絵に出ていたのだろう)が、なんだか思ったよりだいぶ若いことに違和感があるなあ。その違和感のせいで意識から忘却していたのかなあ、個人的なイメージとしてはなんとなく性格と少しギャップのある外見をしていて、もっと年かさで仙人っぽい外見、白髪で切れ長な目をしており、4、50代だが若々しく、顔立ちも整っているが、笑うときに出るシワで若くないことがわかるというような勝手な印象を持っていたのでね。まあ、性格から言えば、キャラ紹介にあるイラストのほうが「らしい」から、違和感を覚えているのは個人的に抱いていた勝手なイメージのせいだけど。
 日本が魔法強国になっている理由が、先進国の中ではより強い血統を作るために、見合いで結婚させるというのが容易だったからという理由付けがなされている。今まで他の地域のように現在の複数国が合併している状況でもないのに、日本がやたらと強いから読んでいて少し居心地悪かったのだが、この説明を聞いてようやくそうした先進国の中で相当な位置に居るわけや、人口が低いのに他に併呑されないどころか強国としてやっていけているわけについてようやく腑に落ちた。
 はじめの方の水波の訓練風景は、最初七草の双子のどちらかの訓練と勘違いしていたので、やたらとガチなので吃驚したが、四葉とわかり、ああ、なるほどとド折で本気すぎると思ったと納得がいった。
 達也の活躍で新たに魔法工学科が誕生して、出来た敬意からして当然のことながら達也もその科に入ったようだが、達也は新たな制服に魔法工学科の八枚花弁に似た歯車のエンブレムがあるから少し着るのを躊躇しているようなのを見るに一科、二科の区別に対してちょっと割り切りがたいような暗い思いをそれなりに抱いていたのね。
 追憶編での戦闘から達也は子供の頃からものすごく強かったので、得意な能力についてはその頃から完成されていたと思っていたが『現在の達也ならば、マテリアル・バーストの発動準備に手間取ったりはしない。「分解」を設置型領域魔法として放つことを覚えた今ならば、敵艦隊の艦砲射撃を撃ち落すのに穂波の力を借りる必要は無い』(P42)と回顧しているように、そうした生来の能力でも成長していたのだね。しかし達也は元々が強くていつも勝っているから、新たな技術を身につけて更に強くなってもそれがどの程度の成長なのかいまいちわかりづらいのよね。
 雫・ほのか・深雪・水波のドレス姿が描かれているイラストは、この時代って肌を露出しているのはあまりよろしくないという世界観だったけど、結構思いっきり肩を露出しているけどそれはOKなのかと思った。まあ、深雪は達也だけに見せるのではないということだから当然(笑)のことながら、ほとんど肌を見せないスタイルですが。
 しかし四葉の黒羽亜夜子、思っていたよりもなんか中二的センスの人なのかなあ(笑)。そしてその弟の文弥、普通の格好をしているよりも姉の趣味がふんだんに含まれた仕事着である女装をしているほうが可愛いわ(笑)。女装文弥のイラストはかなり好みだわ。
 平河千秋、まあだ逆恨みを継続しているのかいい加減しつこいわあ、好感が持てる要素が今のところ皆無なキャラなのでなるべく本編に関わってほしくないなあ。でも同じ魔法工学科に所属しているのだから、今後もたびたび出るのだろうけどね(嘆息)。
 七草泉美、初対面の深雪に一目惚れし「私のお姉さまになっていただけませんか」とお願いしており、真由美はその発言を聞いてかなり困っている表情をしているのがイラストに描かれているがかなり子供っぽく、達也が彼女に向かって大人っぽいと発言した直後にこれだから、なんだか笑えた。
 カウンセラーの小野遥は達也に手玉に取られている印象が強いが、七草香澄あたりならばそれなりに御せているのをみると高校生相手のカウンセラーとしては十分な能力を持っているのね。しかしところどころで表情が隠しきれていないので、達也クラス相手でなくとも表情を隠しきれていないところを見ると、若干詰めの甘い部分はあるようだけど。
 『クッションを抱えていた香澄が、仮想琢磨とでもしたのかそのクッションを床に二、三度たたきつけて不満を表明した。』(P208)普通の行為ではあるのだが「仮想琢磨」という表現には思わず笑いが。
 達也、黒羽の姉弟について『少なくとは敵ではないと分かっている数少ない身内』(P225)と表現しているほど好意的に見ているが、子供時代から好意を向けられているからそれなりの好感を抱いていても、四葉だから敵にもなるだろうくらいの冷淡に割り切っていると思っていたので意外感があった。
 反魔法師の政治家が来襲するという情報を得た達也は、魔法科高校プロパガンダの具にされないために、その日に常駐型重力制御魔法式熱核融合炉の恒星炉実験をすることを企画した。それをすることの目的は純粋に魔法の発展のためではないという意味で不順ではあるが、生徒会の面々などと協力して、廿楽という一級の研究者でもある人間にその実験について「面白いアプローチ」だといわれるようなことを若人たちでやるというのは、面白いアプローチという表現がいかにも研究者っぽいから余計に学問の研究って感じがするのもあって、なんだか興奮する。しかしその実験を政治家とその取り巻きのマスコミが見て、マスコミはコメントを引き出し、それを針小棒大にしてしまおうという意図が見え見えなのに対して、廿楽が棘のある口調で応対しているのは見事、よくぞ言ってくれた!普段そういうことを言うキャラでないから、そうしたことをいってくれたのは意外感もあり一層嬉しい。
 七宝琢磨は、十文字や真由美、そして達也とか高校生離れした落ち着きを持つ面子を見ているから、青臭さを感じるなあ。しかしそんな人間まで、政治的運動に利用しようとするのを見ると、早熟にならざるを得ない魔法師の悲哀が感じられるよ。
 香澄は森崎のことをあまり評価していなかったようだが、そのドロウレスという技術を見てみる目がなかったと内心で率直に認めているのは、彼はあまり好きなキャラというわけではないけど、最初から登場するキャラであるし、悪人ではなく努力家であるのも知っているのでその実力に驚き、認められているのはなんだか嬉しい。
 それから琢磨、七枝の双子と2人同時に対戦して、互角な戦いを演じているのは驚き。経験差があるわけでもないのだから、琢磨って本当に才能・実力が相当にある人間なんだな。
 琢磨をおだてて動かしていた、小和村真紀にでかい釘をさすために、盗聴して弱みを握り不法侵入して脅したのに、藤林が自分たちも盗聴していたのに「盗撮という行為に対する感情的な反発」を覚え、達也も「単なる盗撮ではなく不法侵入するつもりか、と最前の自分の行為を棚に上げた呟きを心の中で放っ」ているが、そんな重量物を幾つも上げると棚も壊れるぞ(笑)。
 最後の方の琢磨に上級生の凄さを見せ付けるため十三束が達也に戦闘の試合をしてくれるようにそれなりの覚悟を持って頼んだのに、それを一回すげなく断っているのはさすが達也だ(笑)。しかし達也と十三束の戦闘シーンは熱い格闘戦となっていて面白いなあ。十三束が達也と互角な戦いを繰り広げているのは凄いわ。今更だけど、この高校実力者が多すぎだなあ。達也は初っ端から雲散霧消って、利かないという推測をしていたとはいえ相当にガチでございますね。しかし試しで、結果が出なければその能力は知られないと思っているからこそ使ったのかもしれないけど、その魔法を見せていいのかと不安になる。琢磨の目から見る、2人(特に達也)の超絶技巧の魔法を用いた攻防はすごく面白く魅力的!そして琢磨が達也の技術の凄さに驚いていることには、思わず読んでいてニヤニヤしてしまう。
 十三束、サイオンが身体から離れようとしない体質なのに、達也の攻撃によってそのサイオンの場が広がり始めたことに驚きながらも、そのことに試合中にもかかわらず希望を見て浮き立つような気持ちになってしまっていたというのを見ると、その出来事が本当に彼にとって非常に大きなことだとわかるから好きだなこのシーン。そしてそんな希望を抱いている中でも、十三束は気をしっかりと引き締め直して切り札を使って再び攻勢に出るなど、試合にもちゃんと集中しているのもいいね。それが気になって、負けたなんてしょっぱい落ちは嫌だからね。
 この試合で達也は術式解散、遠当て、そして最初に出して不発だったが雲散霧消など、かなりの札を使わされたのはそれだけ本気でやっていたということがわかりいいのだが、そんなに見せて大丈夫なのと不安にも感じていたので、その後ピクシーに試合のデータを改竄させたというのを見てようやくホッとした。
 最後の最後に、香澄と琢磨のフラグが立つとは予想外だったわ(笑)。
 それから今回、そして今回以降も七草弘一は色々と裏で暗躍しているようだが、どうも私怨を利用されているという面があるし、相手に持ちかけられてそのプランに乗るという形で動いているから、どうしても大物には見えないなあ。
 そして次巻は九校戦か!九校戦はすごく好きなんだけど、一年生でもやったから、二年次以降はさらっと流されてしまうのかなと悲観していたので、二年次の九校戦も描いてくれるというのは非常に嬉しいし楽しみ!次の13巻の発売は来年になるようだが、待ちきれないほど早く読みたくなってきた。