陸軍いちぜんめし物語

陸軍いちぜんめし物語―兵隊めしアラカルト (光人社NF文庫)

陸軍いちぜんめし物語―兵隊めしアラカルト (光人社NF文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
腹が減ってはいくさはできない。星の数より、めしの数…。新兵、古兵の区別なく、食欲も性欲も旺盛な兵と下士官のものがたり。男の料理・軍隊調理法など軍隊の食生活をあますところなく描いた体験的/帝国陸軍イラスト・エッセイ。兵隊屋敷の四季折々にふれて、分隊長殿が綴った汲めどもつきない兵隊ばなし。

 戦前の一般の食事についての話を少し知りたいと思ったので、まあ一般とは言えずとも戦前に大きな組織だった陸軍の兵隊の食事も、そんなに特殊なものではないだろうし、戦前の軍の話であまり重い話ではないものでないのも読みたいな、ともかねがね思っていたので丁度よいと思い、これを読了。しかしまえがきで、この本の前に「陸軍よもやま物語」(正・続)があって、「モサ(モサクレ)」という用語が良くでてくるか意味がさっぱりわからないので、そちらから先に読んだほうがよかったかなと少し後悔していたが、1/3程度を超えたところで、著者がいた連帯で二年兵を総称する言葉だったと説明されるが、それまで何回もモサ、モサという言葉が出ていたから、100ページを越えてからようやく説明とかではなくて、もうちょっと早くモサについての説明が欲しかったなあ。
 戦前の陸軍での普通の日常を垣間見ることができて面白かった、同じように戦前の東京とかの都会の日常を感じるようなエッセイで何かいいものないかな、その辺の時代に活躍した作家とかの作品にそういうものがあるだろうけど、どれが面白いものか、とか調べるの面倒だからねえ、それに昔の作家の本を読まないけど、エッセイから読み始めるのもなんか気が引けるしなあ。
 戦争に突入する前は一般家庭よりも、軍隊の兵隊のほうがいいものを食べているということは少し意外だった。まあ、当時の一般家庭の食事があまりよろしくないということでもあるのであろうけどね(苦笑)。
 軍隊で料理と裁縫を教えていたのは戦地での必要上のことだろうからそれほど驚かないが、料理も裁縫も当時は学校では教えていなかったから、むしろ著者はそこで初めて針を持ったというが、そういう人が著者だけでなく結構いそうだということの方が驚いた。料理も似たようなレベルのようだし、当時は大人になってからようやく家庭科みたいなことをしてたんだね。
 日露戦争ごろに作られた乾パンや牛缶が、満州事変で大陸へ派兵された兵士たちに支給され、携行していた(つまりいくら保存食とはいえ2、30年前の食料を!)というのは驚愕する。しかも、味が特に変わっていなかったと言うのも驚きだよ、現代のものもその位持つのかねえ、現代は味重視だったり、あるいは現代ではいれられない添加物が入っているから、現代のものはもっと短いのか。それとも、現代のものも一応そのくらい経ってもでも食おうと思えば食えるくらいのものなのかね。あと、著者が初年兵のときに炊事の使役で、常用倉庫の米俵を運んだとき、明治43年納入(著者が3歳のとき)のものだったというから、著者がいつ徴兵されて訓練を受けたかしらないが少なくとも20年くらい保存していた米を食っていたのかよ!なんか思っていたよりも食べ物って、長い期間劣化しないで保つものなんだね、と変に感心してしまう。
 後半になってから、第二次世界大戦中のエピソードもあり、戦後のエピソードもあるが、重苦しく描かれていないのは、読むのが辛くないからいいな。まあ、1つのエピソードを紹介するのに数ページしか費やしていないから、数ページで精神的にきついようなヘビーな描写をするのは難しいと言うのもあるだろうが、それにそういうのが何十ページも終わらなくて続けて読まざるをえないのが苦痛ってだけで、例えば10ページ程度ヘビーなものがあっても、それほど読むペースは落ちないからいいけどね。この本には、そんな重い描写はそもそもないけどね。