オタク・イン・USA

内容(「BOOK」データベースより)
全米で人気が爆発した日本製オタク・カルチャー。しかしそれらが受け入れられるまでには、大いなる誤解と先駆者たちの苦闘があった―。/デタラメな英語吹き替えでダジャレ満載に!『ウルトラセブン』/大和魂を抜かれ、『スター・ブレイザーズ』として放映された『宇宙戦艦ヤマト』/ポルノもどきと弾劾されて打ち切られた『セーラームーン』はファンの署名で復活!


 元は雑誌で連載されていたものを本にしたということだが、雑誌などという媒体で読む文には気にならないのだろうけど、個人的には本で纏めて読むにはこういう主観的で軽い文体のものはどうもいまひとつ好きになれないなあ。自分でもこういう文体の本のどういうところが苦手なのかがいまいち把握できていないのだが、なんかどうも好みと合わないと感じてしまうんだ、申し訳ないけれど。
 ギークとナードの区別はギークが娯楽を楽しんで、その作品について語るような人で、ナードは頭がよくてプログラムとか理系の分野が好きなような人か。今まで両方の言葉は見たことがあっても、そこらへんの区別がよくわかっていなかった。
 『SFドラマや映画の台詞の引用だけで会話する、社会性ゼロのやつらもいた』(P21)そういうキャラは漫画・小説でたまに見かける(最初に思い浮かんだのはこの本を読む少し前に読んだということもあり「チア男子」の溝口)けど、実際にそんな人がいるとは思わなかったのでかなり驚いた。
 『ハイ!ハイ!パフィー・アミユミ』が作られ人気となったということで、昔そんなことテレビで知ったなあ。しかし『アメリカには、ビートルズジャクソン5など実在のバンドを主人公にしたアニメの伝統がある』(P51)とは知らなかったわ。現存している実在の人物を主役にしたアニメというのは日本にはない気がするので(知らないだけかもしれないが)、そんなジャンルがアメリカにはあるのかと面白く思った。
 アメリカでゴジラマーチャンダイジング権を獲得したサパスタインは、アメリカでのゴジラの玩具の種類を制限することによって、多くのアメリカ製でいまいち似ていないゴジラの玩具を売り、その中のひとつの「パチモノにしか見えない」がゴジラの賞品が少ないので、その人形は1年で300万個アメリカで売れたというのは凄いわ。人気があって関連商品がほとんどないと、そんな質の悪いものでも売れるものなのだねと感心した。
 ガッチャマンアメリカで人気があったがその人気が出たものは、勝手にシーンが加えられるわ、ストーリーも違うものになるわともうガッチャマンのアニメ映像を使った別作品といったものだった。著者はアメリカ版の改竄をズタボロに言っているが、その指摘を見ていると眼も当てられないように変えられたことがわかって思わず遠い目をしてしまう。
 しかし日本の作品がアメリカで人気になった大きな理由がアクション描写の上手さやバイオレンス、エロ描写の激しさというのはなんだかな。他にも個々の作品にいいところはあり、掴みはそうした激しさでもそうしたいいところが見ているうちにわかったのだと思うが、昔のアニメや映画は知らないからそうした過激さで売れたり、ニッチな層に人気が出たというだけにしか見えないなあ(それもかなり大きな要因だろうが)。
 アメコミ『映画のヒットはコミック・ブックの部数に数千部程度しか影響しない。』(P226)というのはそのあまりの影響の少なさに驚愕してしまう。
 訳者の町山さんは作者のマシアスさんに、体育会系的な先輩後輩関係のようなキツイ言葉遣いや接し方をしているのはかなりマシアスさん可哀想というか町山さんってそんな体育会系な人格とはじめて知り、それに町山さん自身の解説でも、マチアスさんに『パーティやるからマリファナLSDを調達して来いといっても、しょぼいジョイント一本しか用意できなかった。』(P341)なんてエピソードが書いてあるし、もう町山さんのことが苦手になってしまった。価値観を共有している中でそういうことをするのは本人同士の勝手だけど、いろんな意味で違うのにそうやって年功序列な関係があるものとして接しているのはなあ……。
 マンガが儲かると見て多くの出版社が参入して質の悪い作品も数多く翻訳された結果、アメリカでのマンガ人気は2007年と比べて2012年には売り上げ冊数では1/5以下にまで縮小(680万部('07)→120万部('12))してしまった。