3月に読んだ本のまとめ

2014年3月の読書メーター
読んだ本の数:23冊
読んだページ数:7454ページ
ナイス数:353ナイス

フットボールの犬 (幻冬舎文庫)フットボールの犬 (幻冬舎文庫)感想
1999年から2009年までの雑誌などに掲載された記事を集めたもので、それぞれの記事のあとには文庫化までにあった取材したチーム、リーグ、選手の後日談が付記されている。ヨーロッパのサッカーを取材したものだが東欧だったり、フェロー諸島やマルタのような人口数万から数十万といった国のリーグなど、欧州サッカーのメインストリームから外れた場所でのサッカーの風景を主に描いている。
読了日:3月31日 著者:宇都宮徹壱
世界史への扉 (講談社学術文庫)世界史への扉 (講談社学術文庫)感想
世界史についてのエッセイ。19世紀半ばのちょうど日本が開国したあたりが、世界的にも通商条約の締結が頻繁になされていた時期だった。学生が講義ノートをとるようになったのは羊皮紙が出回り羽ペンが考案され、草書体ができた13世紀からで、それ以前は教授がテキストを読み上げ、それをひたすら暗記するというスタイルだった。
読了日:3月31日 著者:樺山紘一
空の中 (角川文庫)空の中 (角川文庫)感想
UMAを拾った高校生の瞬と佳江のパートと、自衛隊の女性パイロット光稀と航空機設計会社の高巳を主人公として白鯨との対話を描くパートの2つのパートで構成されている物語。光稀と高巳のパートの方が面白かった。巻末の短編「仁淀の神様」は、本編終了から十数年後の宮じいの死を書いた短編。やはり著者はこうした日常に根ざした、普通に起こる出来事を書いた物語が面白いな。
読了日:3月31日 著者:有川浩
チベット滞在記 (講談社学術文庫 1946)チベット滞在記 (講談社学術文庫 1946)感想
大正時代にチベットに10年間滞在した僧侶多田等観の話。多田がチベットの人物や文化に自然になじんでいることが伝わってくるのがいいな。本願寺法主大谷光瑞が北京でダライ・ラマ13世に交換留学を提案して了承されたことで、多田はチベットに遣わされダライ・ラマの保護を受けながらラサ近郊の大寺院に滞在して勉強をしていた。多田はダライ・ラマ13世に可愛がられ、多田が帰国のためにラサを発つ前日には、宮殿でダライ・ラマと枕を並べて名残惜しんで話しながら寝についたというエピソードがあることからもその親密さがよくわかる。
読了日:3月30日 著者:多田等観
ハーレムの熱い日々 (講談社文庫 よ 10-1)ハーレムの熱い日々 (講談社文庫 よ 10-1)感想
60年代の米国の黒人運動でのハーレムの普通の人たちの変化を書いたルポ。ハーレムではブラック・モスレムが演説広場で演説したところから変化の兆しが見られ、それから数ヶ月で一気にそうした言説が受け入れられ、自分たちの誇りを取り戻すための声がハーレムの普通の人たちからもあがりはじめた。しかし「文庫版あとがき」での、文庫になると友人に話したら「ついに君の本も古典になるか!」と冷やかされたという挿話は時代を感じるというか、文庫化=古典化なんて意識がかつてあったということにびっくりしてしまう。
読了日:3月29日 著者:吉田ルイ子,亀倉雄策
ドイツ史10講 (岩波新書)ドイツ史10講 (岩波新書)感想
ドイツの歴史を10個の時代に分けて、それぞれの時代の特色や変化などが簡潔に書かれている。プロイセンからドイツへ移行していったかということは、今まであやふやだったので、この本で短くわかりやすく書いてあるのを読んですっきりした。三十年戦争で人口が30、40%も減ったという説があるが、教会に残るデータをコンピューターで処理して人口の動きを推定的に捉える「歴史人口学」では人口の極端な落ち込みを否定する傾向にあるようだ。しかしそれでも戦前の人口水準に回復するのにほぼ3世代かかったというのには驚く。
読了日:3月28日 著者:坂井栄八郎
出世ミミズ (集英社文庫(日本))出世ミミズ (集英社文庫(日本))感想
エッセイ。1つ数ページと短いエッセイだけど、各エッセイごとにきちんとオチをつけているので読みやすい。同じ魚とか昆虫の日本語と英語のネーミングの違い、強調されるアングルの違いから新鮮な驚きだったり、感で変わる印象についてのエッセイが面白い。それから著者が入っている短歌会や謡いの教室についてのことが書いてある『「鼻たれ小僧」をめざして』も好き。
読了日:3月26日 著者:アーサー・ビナード
民法はおもしろい (講談社現代新書)民法はおもしろい (講談社現代新書)感想
民法の規定を具体的にどのように適応するかという話だけでなく、民法の歴史や民法改正についてなど民法に関する色々なことが書かれている。運送会社の社員Aが仕事中に事故を起こしたらAと会社双方に損害賠償を請求できるが、個人で運送業をしていたAが事故を起こした場合でも『じつはAはBという運送会社から仕事を得ていたというケースであれば、AとB社のあいだに正式な雇用関係はなくても、実質的な使用・被用関係が認められるのであれば、民法七一五条の使用者責任という規定によって、被害者はAとB者の両方に損害賠償の請求ができる』。
読了日:3月25日 著者:池田真朗
天帝の愛でたまう孤島 (幻冬舎文庫)天帝の愛でたまう孤島 (幻冬舎文庫)感想
今回はそれまで主人公「まほろ」の仲間の吹奏楽部の面々という、犯人と疑いもしなかった人たちが真犯人だったので驚いた。こうしたキャラクターが立っているシリーズ物で、絶対にありえないと思える人物たちを犯人にすえてくるとはおそれいる。そして5章で真の真相に気づいた、偽の真相を推理させ、探偵/道化を演じさせられた「まほろ」の火のような激しい怒りには思わず魅入ってしまう。
読了日:3月24日 著者:古野まほろ
アフリカを食べる/アフリカで寝る (朝日文庫 ま 16-5)アフリカを食べる/アフリカで寝る (朝日文庫 ま 16-5)感想
「アフリカを食べる」と「アフリカで寝る」の合本。個人的には「アフリカを食べる」のほうが好み。ガーナ地方のフーフーという、野菜バナナとキャッサバ粉を強く念入りについて腰をだして、餅みたいにして、その餅状のものを辛いトマト系のスープにつけて食べる料理は美味しそう。ヤシ酒はヤシの実ではなく、ヤシの樹液から作られる。ココヤシの樹液を夕方から朝まで採取して、それをそのまま放っておくと糖分が多いため昼頃には自然に酒となるようだ。ヤシ酒がほとんど手間をかけずに自然にできる酒とは知らなかったのでちょっと驚いた。
読了日:3月23日 著者:松本仁一
遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)感想
読んでいて涙があふれてきてしまう。釜石市は半分津波に飲み込まれなかった地区があるため、「同じ市内に暮らす人々が隣人たちの遺体を発見し、運び、調べ、保管することになった」。そうした隣人の、友人の、肉親の「遺体」と向き合った話、助からなかった物語が積み重ねられているので、被害の大きさや3.11で生まれた東北沿岸部の悲しみ、喪失、絶望の一端を知ることができる。複数の視点から同じ遺体や遺族の姿を書かれることで、それらの遺体が数時間前、数日前まで生きていたという事実を改めて思い知らされる。
読了日:3月20日 著者:石井光太
ジーノの家 (文春文庫)ジーノの家 (文春文庫)感想
小説のようなエッセイ。この本で語られるエピソードはどれも、登場してくる人物がいい人たちばかりだし、終わり方が綺麗なので読後感がいい。「リグリアで北斎に会う」北斎の生まれ変わりだと述べる元技術者のイタリア人と、彼の画業を手伝う謎の日本の老婦人に会った話。彼らみたいな人物は村上春樹の小説に出てきてもおかしくないようなキャラクターなので、エッセイと知ってはいても、ちょっとノンフィクションなのかフィクションなのかちょっと良くわからなくなってしまう。
読了日:3月19日 著者:内田洋子
八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)感想
江戸での上方出身の女性料理人澪の話。彼女が江戸人にはなじみの浅い上方の料理を江戸の民が馴染みやすいように味や名前に工夫を凝らした結果、彼女の料理に人気が出る。たとえば、油の乗った戻り鰹は美味しいけど江戸人は初物好きだから初鰹を好み、戻り鰹は好まない。そのため戻り鰹で美味しい料理を作ろうが名前で敬遠される。だから料理の名前を「はてなの飯」と変えた。そうした名称の突飛さ、洒落っ気でその戻り鰹に対する悪印象を中和させる工夫があってはじめて売れて、単純に美味しければ売れるのではないのがリアリティがあっていいね。
読了日:3月18日 著者:高田郁
モンゴルとイスラーム的中国 (文春学藝ライブラリー)モンゴルとイスラーム的中国 (文春学藝ライブラリー)感想
中国西北部のモンゴルと人種や言語が近かったり、歴史的に関係が深い地域のイスラームの話。黄土高原という厳しい土地に住む中国西北部の諸民族のムスリムたちを理解するためにはスーフィズム神秘主義)を理解するのが重要。そして、この地のスーフィー教団では門宦制度がとられている。門宦制度とは、教父シャイフへの強い権限を持たせた制度で、中国の伝統的な封建制度儒教思想と結合していることを現した制度でもある。取材された諸スーフィー教団の起源、教団史がわりと詳しく書いているが、それらの情報はどうにも頭に入ってこないなあ。
読了日:3月17日 著者:楊海英
前へ!: 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録 (新潮文庫)前へ!: 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録 (新潮文庫)感想
第一章では原発が危機にあるときに給水作業などで最前線に居た自衛隊の話を、第二章では被災地に救命救助の緊急車両が入れるように、道路をふさいだ物を撤去する啓開作業を迅速に行った東北地方整備局を扱う。そして三章では東京で役所の代表が集まり、さまざまな問題を即決して常にない速さで問題を処理していたあまり知られていない事実が描かれる。しかしそんな中で菅総理は彼らの指揮をせずに総理専用室に篭って東京電力保安院原子力安全委員会の面々と密室で秘密裏に会談していたようだ。
読了日:3月14日 著者:麻生幾
僕と彼女のゲーム戦争 ゲーマーたちの日常 (電撃文庫)僕と彼女のゲーム戦争 ゲーマーたちの日常 (電撃文庫)感想
シリーズ初の短編集。日常編だけど普段の長編と扱っているゲームの毛色がさほど変わらないのは、今まで扱われなかったジャンルのゲームをこうしたところでやるのかと思っていたので、ちょっと残念かな。しかしゲーム初心者の岸峰が「毎日のように行われるゲーム勝負の勝率は随一」(P34)というのは、特殊能力みたいな彼の集中力が発揮されたときだけ強いのかと思っていたので意外。
読了日:3月13日 著者:師走トオル
弁護士が教える分かりやすい「民法」の授業 (光文社新書)弁護士が教える分かりやすい「民法」の授業 (光文社新書)感想
民法の基本的な部分や判例・通説などが読みやすくコンパクトに書かれている。巻末に用語索引、条文索引がついてあるのはちょっと見返すとき便利なのでありがたい。連帯保証人となっても何の音沙汰もなく10年以上が経過すれば、消滅時効になるというのは意外だった。今まで借金した本人に、その10年の間に請求していれば、連帯保証人についても消滅時効にならないのだと考えていたが、そうでもないのか。
読了日:3月12日 著者:木山泰嗣
徹底図解 社会心理学―歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで徹底図解 社会心理学―歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで感想
つまらない作業をして報酬を貰った後、次に作業をする人に面白い作業だったと言う実験では、20ドルをもらって面白かったと言った集団は作業直後と感想はほぼ変わらなかったが、1ドルだった集団は作業直後より報酬を貰った後の感想のほうが面白かったという感想が増えた。わずか1ドルの報酬で、面白いと告げたことで生まれた不協和を正当化するために実際に面白い部分もあったと認知を変えた。実は個人ではアメリカ人よりも日本人のほうが個人主義的というのは意外。日本人が集団主義的な行動を取るのは集団を離れることで失うものが大きいから。
読了日:3月11日 著者:
「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)感想
1試合で各ポジションに球が来る回数は3〜8回、そのうち猛烈な守備練習が生かされる球は1つあるかないかのため、実は守備の巧拙ではあまり差がつかないというのは驚きだ。部員全員が個性的で、色々と理論付けて話しているので、著者による部員たちへのインタビューは一般的な野球のイメージとは異なる理屈っぽい言葉が出てくるのがユーモラスで面白い。しかし開成の野球部員はみんなとてもしっかりしているな。
読了日:3月10日 著者:高橋秀実
島人もびっくりオモシロ琉球・沖縄史 (角川ソフィア文庫)島人もびっくりオモシロ琉球・沖縄史 (角川ソフィア文庫)感想
神に捧げる儀式用の口噛み酒「米奇」が戦前まで実際に作られ、神事に使われていた。口噛み酒は「もやしもん」で存在は知っていたが、案外身近なところで近年まで作っていたとは思わなかったので少しびっくり。現在の中国風な沖縄の伝統文化は、薩摩侵攻後の17世紀半ばにそれまでの伝統を破壊する大改革を経て形作られた。その改革には中国化することで琉球王国が日本に呑み込まれないようにして主体性を維持すること、中華の優等生としてふるまうことで清との貿易が縮小しないようにすることなどの目的があった。
読了日:3月7日 著者:上里隆史
救命: 東日本大震災、医師たちの奮闘 (新潮文庫)救命: 東日本大震災、医師たちの奮闘 (新潮文庫)感想
被災地での医療活動に携わった医者9人のインタビューを収録。震災から数ヶ月という時期のインタビューだが、医師たちの背景も含めてとても丁寧に聞き取って書かれている。そしてそれぞれの医師たちの2014年現在についてが、各医師のインタビューの末尾に数ページ書かれている。自らも被災した医師たちが休みも取らずに被災者の医療活動に従事したり、自腹で薬を買って無償で患者たちに渡したりしているというような高潔な姿には(それが例外的、英雄的な1人2人ではないということも含めて)感動を覚える。
読了日:3月6日 著者:
死体は生きている (角川文庫)死体は生きている (角川文庫)感想
著者が30年以上監察医として、不自然死(突然死も含む)した人の行政解剖をしていた。1本数ページで実際の死体が出た事故や事件について書かれているエッセイ。著者は本書中で幾度も述べている、不自然死で亡くなった人の死因を検死によって明らかにすることは死人の人権のためにも重要だし、後日遺産目当てに殺したのではないかなどの疑惑を残さないためにも必要という意見には納得できたので、現在でも監察医制度があるのは5都市(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸)と限られた場所だけだという事実には少しがっかりしてしまう。
読了日:3月5日 著者:上野正彦
カラシニコフ II (朝日文庫)カラシニコフ II (朝日文庫)感想
南米コロンビアは政府に国家建設の意欲はあり、失敗国家ではないのだが、領土がアンデス山地を抱えていて治安確保が難しい土地柄なためゲリラが跋扈する状況となっている。そして同地では、少し改造すれば連射できる中国製ノリンコというカラシニコフを競技用に連射できなくした銃が米国内の3倍近い値で売れ、他の銃器も高い値で売れる。そのため銃を密輸する人間が後を絶たず、米国の銃器業者が関わった銃密輸出が非常に多い。また、その取引で銃の代金の半分をコカイン払いとすることもあるため、米国内での違法薬物が広まる原因ともなっている。
読了日:3月3日 著者:松本仁一

読書メーター


ラ/
小///
エ////
ノ/////5//
歴///
そ/////5

「世界史への扉」は歴史換算。「アフリカを食べる/アフリカで寝る」はエッセイ換算。



ライトノベル 1
小説 3
エッセイ 4
ノンフィクション 7
歴史 3
その他 5

 先月末から今月にかけては東日本大震災から3年が経ったということで、その時期に合わせて関連の本の文庫化が相次いだ。今月は小説やライトノベルはあまり読めなかったが、その分ノンフィクションなどを多く読むことができた。


3月に読んで特に面白かったもの。
「遺体: 震災、津波の果てに」

遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)

遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)

 本を読んでいて涙が溢れてきてしまった。2014年読んだ本のなかでのベストは3月だけどもうこの本で決まった。
「島人もびっくりオモシロ琉球・沖縄史」
島人もびっくりオモシロ琉球・沖縄史 (角川ソフィア文庫)

島人もびっくりオモシロ琉球・沖縄史 (角川ソフィア文庫)

 以前から沖縄の近代以前の歴史について知りたいと思っていたので、著者が歴史家であとがきに歴史研究界では常識になっていることを書いたとあるので安心してその内容を信頼することができる。さらに簡単に近代以前の沖縄の歴史についての知識を、小さくトピックをわけて非常に読みやすく書いてくれているのでとてもうれしい。