魔法科高校の劣等生 13

内容(「BOOK」データベースより)

西暦二〇九六年、七月。今年も、魔法科高校生にとって夏最大のイベントである全国魔法科高校親善魔法競技大会、通称『九校戦』が開催される。しかし今年の『九校戦』はひと味違っていた。競技種目及びルール改定。本番まで残すところ一ヶ月の段階でもたらされた何の前触れもない大幅変更に、魔法科高校各校は慌ただしい対応を迫られる。そんなある日、九校戦の作戦立案に当たっていた達也の元へ、匿名のメッセージが届けられる。それは、九校戦を舞台とした新たな陰謀の存在を示唆するもので―。華やかな競技の裏で繰り広げられる暗闘。昼なお暗い富士の人工樹海を駆け抜ける達也が、背信の陰謀に挑む!『二学年度の部』九校戦編登場!

 冒頭のカラーページの吉祥寺は何故頬をそめているのだろうか、そのイラストを見るだけでは将輝に目を向けているから、なんか変な想像をしてしまう(笑)。
 今巻は九校戦ということで試合のシーンとか、九校戦の期間中の色々なキャラクターのシーンが見られるを楽しみにしていたので1巻で終わることもあって、巻き展開でそうしたものがほとんどほとんど描かれなかったのは残念だった。しかしあとがきによると、九校戦の期間中のサブエピソードを何篇か短編で書くようなので、それこそ個人的に求めていたものなので読めることが今から楽しみ。どういう形式で発表されるかはわからないようだが、なるべくなら雑誌掲載とかでなく、文庫ですぐに出てほしいなあ。
 それから巻末の広告ページに、7月に著者の新シリーズが出るとあるのは、現在魔法科高校の劣等生のアニメもやっているし、もうwebで連載していたストックがない状態なのに、新シリーズでるのは魔法科高校の劣等生の刊行ペースが遅くなりそうだから正直嫌だなあ。それに新しいシリーズを読むのは設定を覚えるのが億劫だしね。まあ、新シリーズは1巻目は読むつもりだけど。
 冒頭の九島は、息子が子供の魔法師としての能力を高めるために、遺伝子調整した生で孫の光宣は身体が弱くなってしまったということもあり、魔法師の軍事利用について反対の立場をとっているということだから、前回の九校戦のときに言っていた風間の知る老師の事情ってこれかな。てっきり達也関連のこととも思っていたが、違うのかなと少し自信がなくなっていたが、最後のほうで佐伯少将が老師に向かって「お孫さんも、『彼』も同様に」(P343)といっているので、やはり達也ともなんか関係あって、その隠された事情ゆえに彼を気にしているみたいだな。うーん、今回の孫の事情を見て、ちょっと思ったのだが実は達也は真夜と九島の精子卵子を遺伝子操作して生まれた子供という線はないかなあ。以前からその組み合わせの子供だとなんとなく考えていて、でもちょっと前にそれはちょっと違うかもと思ったのだが、今回光宣の事情を読んで、再びちょっとそんな話もないかなあと空想してしまった。まあ、それも最終的にはどうにか深雪とくっついて欲しいと思い、それには血縁的に従兄妹以上でなければならないから、このように勝手に達也の出生について色々と下らない考え(というか願望)を巡らせているのだけど。
 山岳部では部長が考案してダウンした部員を立たせるために、45度くらいのお湯をかけているという描写を見て、なんとなく「アイシールド21」の特訓シーンを思い出した。
 今回の九校戦で新たに追加された競技も別に九校戦の運営が新たに作った、なんてものではなくて以前から競技としてあるものなのね。それを聞いてちょっと安心したというか、競技バランス大丈夫なのという心配がなくなった。
 スティープルチェース(森林での、妨害有りの競争)は対策しなければ脱落者が大勢出ると達也が懸念しているのを見て、魔法師は繊細で、頭数も少ないのにこんなに特別な存在となっているのだろうかと、そうした面を見るとちょっと不思議に思ってしまう。でも、、一条とか達也レベルなら兵士相手なら相手が最新鋭の装備をもっていても無双できるから、地上の敵を征圧するにはきわめて有効な戦力であろう。そしてただでさえ危険な競技に九島は新兵器の実験までしようというのだから、あきれる。そして老師は孫を可愛がっているから、その孫光宣が出ていたらそんな企画は絶対しないのだろうなと思えるから、ちょっと九島老師への評価を下げざるを得ない。
 今回達也と服部の、選手を選ぶときの2人の会話だったり、シールド・ダウンの練習での代表の練習相手をしているレオとエリカの姿を見たときの会話を見ていると、最初のころから比べると彼らはずいぶんと親しくなったようで、それを見て作中の時の流れを感じる。
 軍の強硬派は開戦を望んでいるが、相手がいきなりミサイルをぶっ放してこない限り、こちら側から攻撃するのは、WW2の例もあるように面で制圧できなくて、多くの出血が強いられる展開になることが目に見えているから、大亜連合相手に強硬な態度でとかならともかく開戦を望むというのはちょっと呆れてしまう。
 CADを無系統魔法で操作する、つまり指じゃなくて思念で魔法が使えるようになるデバイスを新たに開発したとは達也も牛山さんもすごいな。こうした達也の技術者としてのすごさを感じられるシーンは大好き。
 わざわざ黒羽が深雪に情報を渡しにきたのは、四葉として何か思惑があってのことなのか、それとも貢が親バカなだけなのかちょっと判断に困るなあ。まあ、両方だという可能性も高いけど。
 深雪がそっと寝ている(と思った)達也の布団に入ったことに対して、達也は「幸い、こんな美少女と同衾しても性欲に流されることは無い。ただ性欲がまったくないというわけでもなかったし」(P227)なんて書かれているのを見ると、彼らが最後にはくっついて欲しいと思いつつも、達也が深雪に性欲を感じているともとれる書き方をされるとドキっとしてしまう。
 深雪から、お兄様が背負い込んで、事前に何もかもやる必要は無いといわれて、それで事前にどうこうするのをやめるという、こういうところに達也とライトノベルの普通の主人公との違いを感じる。ラノベの主人公なら普通、こうしたことをするときに、誰になに言われようが無鉄砲に行動しちゃう、あるいはパンクしてしまうことが多いからなあ。どちらが良いとかではないのだが、達也のその深雪の言葉で深雪第一という初心にかえるというのはいいね。
 達也がいないときの風間と八雲との会話を達也は実は聞いていたというのは抜け目ないというのかなんと言うのかしらないが、流石だ。まあ、それも八雲はそれを最初から聞かせるつもりだったかもというのだから、本当にそうなら弟子のことを良く理解しているし、弟子に追加の情報を与えると意味では本人が知りたいという目的もあろうが、なかなかの弟子思いだな。
 最後、周は黒羽貢を倒して、逃走するとはやり手だなあ。そして彼は最終的にどういったポジションに落ち着くのだろうか。