ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 1


 読んだのは単行本で。この小説はweb版でも一応さっと読んだことはあったので書籍では読んでいなかったのだが、最近漫画版を読んでそれがとても面白かったので、もうwebには残っていないからこれを再度読みたいと思い書籍版を読みはじめる。web版ではヒロインの中ではロゥリィが一番好きだったが、漫画版を読んでからレレイのキャラデザインがめっちゃ好みだったので彼女のことが好きになった。それにロゥリィの格好が思ったよりも子供っぽかったということもあるし。しかしロゥリィ(ロリ)て直球なネーミングだよね(笑)。
 中世的な武装の連中が出てから5日たたないと本格的な反撃に移れなかったというのは、敏速な対処できなかったというは日本の現状の甘さをリアルに示しているようで泣けるね。
 あと関係のないことだけど「コデゥ・リノ・グワバン(連合諸王国軍)」をコウノトリなんちゃらと空目してしまい、なんでコウノトリって名前をつけたのって思って少し困惑したが、改めて見直すと全然コウノトリじゃなかった。疲れているのかな、ボク。
 アメリカが門の向こうの世界の利権に食い込もうとなにやら画策しているようだが、日本が門を確保したあとにそんなことをあれやこれや考えているのはずいぶんと遅いなあ。未知の相手とはいえ、何日も猶予があったのだから、自衛隊が動いたときに在日米軍にも参戦させてその後も続けて介入できる流れを作ればよかったのに。
 レレイは謎の集団(自衛隊)にはっきりとした指揮系統があるようだと感じているが、彼女が指揮系統を感じた場面は桑原陸曹長が隊長の伊丹にまで指示を出しているから、本来の指揮系統トップをたぶん誤って認識しているのには笑う。確かに桑原が年長だし、伊丹は威厳のあるタイプの人間でもないからそれがしっくりくるのは仕方ないのだけど(笑)。
 ロゥリィの初登場シーン、盗賊相手とはいえなかなかキツイシーンだなあ。ヒロインとは思えない(笑)。
 皇女ピニャが勢いよく扉を開けたせいで、伊丹にぶつかり彼が気を失ったシーンは、それまでイタリカの都市が沈んだムードになっていたのだが一気に空気が緩和したな。張り詰めてばかりだったから、緩和するのはいいことだわ。まあ結局ピニャの策は捨て駒にしている人たちが自分たちが捨て駒と気づいて奮戦する気力がなくなったからあっさり破綻したが、そんな当然のことをまるきり計算に入れないというのはいかにも机上の将って感じだ。そして結局イタリカの戦場はジエイタイパワーであっさり終局となるのだが。しかし実力を見せると云う、示威行為含みとはいえ、攻撃を何度か仕掛けてきていまだに交渉の端緒にも立っていない敵国のために治安活動をするのも何だかなあ、腑に落ちないことこの上ない。
 盗賊たちは自衛隊が撃退した、皇帝に敵軍の情報を与えられずに仲間が上役が下僚が無駄死にさせられた諸王国軍の連中だが、死に場所、まともな戦場を探して甲状腺をやっているというのは、町の人たちにはかわいそうだが彼らの立場からすればある意味至当な行動しているから、少なからず好感を持つことが出来る。帝国の貴族連中やピニャみたいな奴らとは比較にならないほどにね。
 ピニャたちの驕慢さには読んでいてイライラ。そしてピニャの部下であるボーゼスらが、伊丹にした蛮行にはあまりの憤りにリアルに心拍数が上がったわ。
 しかしピニャが協定違反の謝罪のために自衛隊の本拠地に行くのに、失態犯し続けているボーゼスを近侍として連れて行くとは、思わず眉をひそめてしまう。相手が自分に近いメンタルをもっていたらボーゼスにしかるべき処断をと求められたら自分の手でそうする覚悟を持って連れて行ったのであればいいのだが、そうでなければ端的にいえば相手が優しいからかろうじて見逃される愚行のように見える。
 それにしてもピニャが牛丼に卵をかけて食べることにやすやすと順応しているのは意外極まりない。
 ピニャは敗勢必須であってもへこたれずいかに自分の祖国のためにましな条件をこぎつけるか、極端な思想や行動に流れず、(たとえ不恰好で失敗が多くとも)現実的な舞台で必死になって考えて行動しているから、そこらへんが魅力的にも見えるだろうキャラなんだろう。そうだとは考えても、自衛隊がどのようなものかを知るためにあせっていたとはいえ帝国の謀略によって時刻の軍をすりつぶされ、自らも半死半生となった従属国の王に対して帝国の軍事力を背景に自分の国がどうなってもいいのかと脅しをかけていたのは限りなく不快で、その王が哄笑していった軍事力によって滅ぼされるのもよろしい、しかしあなたがたもまた異世界の連中に軍事力で滅ぼされるだろうという言葉は凄みがあり、彼の言葉を聞いて以降彼のように帝国が滅ぼされて欲しい(自衛隊に限らず内乱でも他の国の逆襲でも良いが)と思ってしまったので、その国を護持しようとする彼女に一片の好感も持つことが出来ない。それにどうしても登場当初の彼女たちの驕慢さや無礼な行いは許せない。
 異世界の人レレイ、ロゥリィ、テュカらが日本に来たのに国際的な陰謀、画策があって色んな組織に追われていたので、現代を色々ゆっくり過ごしてカルチャーギャップを感じるといったシーンが少ないのは残念だ。