5月に読んだ本のまとめ

2014年5月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:7489ページ
ナイス数:381ナイス

大聖堂 (中) (ソフトバンク文庫)大聖堂 (中) (ソフトバンク文庫)感想
相変わらずリアリティのある中世描写が面白い。しかし物語は順風満帆には進まず、大体が敵対者ウィリアム・ハムレイのせいで主役級のキャラ全員に困難が降りかかるので読んでいてフラストレーションがたまる。この巻は物語の締めへ向けての溜めの巻だと思うので、下巻ではこのフラストレーションを晴らすような大団円なラストになることを期待。特にアリエナは全てを失ったところから商人として身を立てるが、ウィリアムのせいで再び全てを失い、不幸な結婚をすることになったので彼女に幸福な結末がもたらされることを切に願う。
読了日:5月31日 著者:ケン・フォレット
夏から夏へ (集英社文庫)夏から夏へ (集英社文庫)感想
2007年の大阪世界陸上、そして2008年北京五輪に向けてトレーニングをしている4×100メートルリレー(通称「4継」)の日本代表メンバー末續、朝原、高平、塚原、小島〔リザーブメンバー〕各選手の姿を描いたノンフィクション。後半の世界陸上後に著者が選手たちを取材している場面では選手たちの人柄も伝わってくるからいいな。しっかりとした自分の考えを持って、どこまでもまっすぐで、真摯に競技と向き合い、エネルギーを限界まで絞りつくしてトレーニングをやっている彼らの姿は格好いい。
読了日:5月31日 著者:佐藤多佳子
ボクの彼氏はどこにいる? (講談社文庫)ボクの彼氏はどこにいる? (講談社文庫)感想
同性愛者の自伝。青春記。人間の3〜5%は同性愛者であるのだが、同性愛者への社会的な偏見から、彼ら/彼女らは異性愛者として振舞わざるを得ない状況に置かれている。そのため、たとえ同性愛者同士が出会っても互いに互いの存在を、相手が同性愛者であるということに気づけないので一人孤独に、自分はおかしいんじゃないかという苦しみ、悩みを抱えて過ごすということになっているという現実があるようだ。
読了日:5月30日 著者:石川大我
大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)感想
12世紀のイギリスを舞台とした小説。聖職者、石工(建築職人)、貴族、森に住むアウトサイダーなどさまざまな立場の人間について描写されていたり、中世欧州の風俗・習俗などについて細かく書かれているのでリアリティがある。また一人の主人公がいるのではなく、幾人かの異なる立場の人物の視点に切り替わることで、幅広い細かな情報を知ることができる。そのように現代とは色々なルールや常識が異なる中世という時代の空気が直に伝わってくる気がするほどにリアリティを感じる描写はいいね。
読了日:5月29日 著者:ケン・フォレット
フェルメールになれなかった男: 20世紀最大の贋作事件 (ちくま文庫)フェルメールになれなかった男: 20世紀最大の贋作事件 (ちくま文庫)感想
贋作師ハン・ファン・メーヘレンの伝記。想像以上に読みやすかったし面白かった。ハンは「傑作」<エマオの食事>をはじめとする贋作群で莫大な富を得た。戦後にフェルメールナチスに売った罪で逮捕されたが、その作品は自分が作った贋作だと告白した。そう自白してその証明として「新たなフェルメール作品」を実際に描いてもなお「有名な」<エマオの食事>が偽物だという告白には疑いを持つ人間が多く存在し、<エマオの食事>を所有する美術館の館長や美術史家ジャン・デクンなどは熱狂的にこの絵は本物のフェルメールの作品だと主張した。
読了日:5月28日 著者:フランクウイン
蹴る群れ (集英社文庫)蹴る群れ (集英社文庫)感想
三部18章の短編ノンフィクション集。基本的には各章一人の選手にスポットをあてているが、その選手のことだけでなくその選手の国の当時の状況も書いているので、当時のその国の状況についても知ることができる。「第一部 歴史から蹴りだせ」では主に絶えざる戦闘などで国情が不安定だったり独裁政権下でプレーしていた選手たちの話を扱っている。「第二部 日本サッカー稗史」では語られることの少ないJリーグ以外の、例えばバブル期の世界最高峰だった女子サッカーリーグなどを扱っている。「第三部 守護神を見ろ」はGKたちの物語。
読了日:5月27日 著者:木村元彦
ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)感想
ゴールデン・ボーイ」異様な迫力のある作品。アメリカで息を殺して生活する元ナチス強制収容所副所長だった老人を少年が発見し、強制収容所のグロテスクな事実に魅了されていた少年は強制収容所の話を聞くために老人を脅迫する。彼らの歪んだ交流は過去から悪夢と亡霊を呼び起こした。悪夢を見るようになった二人は悪夢から逃れるため、あるいは悪夢に魅入られたかのように、浮浪者殺しを繰り返す。少年の残虐な事実への強い関心は一過性のものだったのかもしれないが「本物」を発見した、してしまったことが彼を決定的に歪ませてしまった。
読了日:5月26日 著者:スティーヴンキング
ロシア人しか知らない本当のロシア (日経プレミアシリーズ)ロシア人しか知らない本当のロシア (日経プレミアシリーズ)感想
著者はロシアから日本に帰化した人。日経から出ている本だから経済の話が中心だけど、小難しい話とかやたらと数字が出てくるようなこともなく読みやすい。ソ連末期の物資不足の時代に、著者はあまり人気のなかった冷凍イカや昆布をよく食べていた。それなのに『あのころの記憶のせいだろうか。私は今でも昆布が好きである。イカの料理もレパートリーを増やし、よく作る。意外と飽きないものだ。』(P16-7)とはタフだねえ。2007年にモスクワは東京を抜き、世界一生活費が高い都市となったとは知らなかったので驚いた。
読了日:5月23日 著者:井本沙織
世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)感想
短編・中篇クラスの話をいくつも収録しているノンフィクション集。「世にも奇妙なマラソン大会」表題作。高野さんはなにか面白いことはないかと深夜にネットで探しているとアルジェリアにある西サハラの難民キャンプで行われる砂漠の中を走るサハラ・マラソンの存在を知り、これは面白いと、走ったことのある最長距離が15キロで最近三週間走っていなかったが、深夜のテンションでつい「ぜひ参加したい」とメールを送って、サハラ・マラソンに参加することに。
読了日:5月21日 著者:高野秀行
ウルトラ・ダラー (新潮文庫)ウルトラ・ダラー (新潮文庫)感想
日本在住で英国情報機関に所属するスティーブンを主人公としたインテリジェンス小説。そうしたジャンルは良く分からないのだが現代的なスパイ小説・情報機関を扱った小説か。直接ある国に潜入して情報を抜き取ってくるということではなく、他国の情報機関の人間との情報交換だったりで情報を得ている。最後の、主人公の恋人が誘拐されて彼女を助けるために銃撃戦を繰り広げるというシーンはそれまでの話とちょっと毛色が違って少し面食らうが、(ろくに読んだことがないので、イメージだけど)それはスパイ小説を意識して書いたシーンなのかな。
読了日:5月20日 著者:手嶋龍一
クジラの彼 (角川文庫)クジラの彼 (角川文庫)感想
恋愛と自衛隊がテーマの短編集。「海の底」の前日譚(「クジラの彼」)と後日譚(「有能な彼女」)、それから「空の中」の後日談(「ファイターパイロットの君」)が収録されている。「有能な彼女」夏木と森尾望の話。本編には二人が普通に恋愛関係になったあとの描写はなかったから、今回二人のその後を見ることができてよかった。夏木が年の差とか自分が釣り合っているかとか色々に弱気に考えて望にプロポーズするのに躊躇しているのは、彼のイメージとちょっと違うというギャップもあって、なんだか少し微笑ましく感じる。
読了日:5月19日 著者:有川浩
新約 とある魔術の禁書目録 (10) (電撃文庫)新約 とある魔術の禁書目録 (10) (電撃文庫)感想
予告通りのボスラッシュ。表紙のオティヌスは、前巻最後近くまで最強の敵役・悪役だったとは思えないほどヒロイン然としているな。目的地への移動とその途上での敵の戦いというシンプルな筋で読みやすかった。また、移動シーンとか戦闘でも御坂戦やバードウェイ戦の対戦時の会話は結構コミカルで、個人的にこのくらいギャグパートがあるほうが好きだな。終章直前でオティヌス消失かと思ってちょっとショックを受けたが、終章で小人や妖精のように小さくなっていたが彼女が生きていたことがわかってほっとした。
読了日:5月16日 著者:鎌池和馬
誘拐の知らせ (ちくま文庫)誘拐の知らせ (ちくま文庫)感想
ノンフィクション。麻薬王エスコバルが政府に投降するために、国外引渡しをしないことなどの有利な条件を取り付けようとして起こした連続ジャーナリスト誘拐事件をめぐる物語。妻が誘拐された政治家ビヤミサルが一足早く投降していたファビオ兄弟を動かし、彼らの仲介で、かつて自分の命を狙ったこともあるエスコバル相手に粘り強く誠実に交渉をしていたことが強く印象に残る。またエピローグのエスコバルも末路を含めて印象的で「訳者あとがき」にも書かれていたように、最終的にエスコバルは約束を守る名誉ある悪漢として浮かび上がってくる。
読了日:5月14日 著者:G・ガルシア=マルケス
フランス史10講 (岩波新書)フランス史10講 (岩波新書)感想
近世以後に多くページ数を割いている。なかでも近代フランスの政治体制の変化について重点的に書いている。フランスでは9世紀末に王位の世襲制を廃止して選挙制度にして、中世中期はじめにはドイツとほぼ同条件であった。それどころかその時点では王権は「むしろドイツのほうが強力だった」が、カペー朝の歴代の当主が比較的長命で男子に恵まれ、本拠地が経済的に豊かで法律家などの新しい知識人を登用してテクノクラートとして使えたなどさまざまな理由が重なったことで王権を大きく拡大することに成功した。
読了日:5月13日 著者:柴田三千雄
オン・ザ・ロード (河出文庫)オン・ザ・ロード (河出文庫)感想
一部は1947年、二部は1948年、三部は1949年、四部は1950年の話。各部でディーンと他の登場人物との関係は大きく変わる。部が進むごとに登場人物の中で、青春が終わり、ディーンの無軌道な行動へ理解を示さなくなる人も増えてくる。語り手のサルも最後の旅もせず終わる5部でディーンと距離を置き、旅と青春に別れをつげる。この小説は旅と青春の物語であり、終わりゆく青春についての物語でもある。一部ラストの旅が終わり家に帰った後の達成感や安堵を感じられる描写はいいね、ここで一旦読む手を止めて余韻を楽しみたくなる。
読了日:5月12日 著者:ジャック・ケルアック
太平記  ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)太平記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)感想
基本的に細かな描写を省略した各章段の筋が書かれて、各巻1、2個の場面については現代語訳と原文を置かれている。六波羅探題の武士たちが北朝光厳天皇上皇らと共に関東に下ろうとするが多勢に待ち伏せされ、勝ち目なく上皇を守護する武士たち432人全員が切腹したというのは絶句する。周囲が数百人の自決者の骸のなかにわずか数人で取り残された天皇上皇らの心境はどのようなものだったのか想像できない。そして鎌倉の北条氏族滅の場面は壮絶。ここまで劇的にそれまでの支配者一族が一日にして滅びるというのは日本史で他にない。
読了日:5月10日 著者:
アフガニスタンの診療所から (ちくま文庫)アフガニスタンの診療所から (ちくま文庫)感想
読み始める前は医療の現場の話が主だと思ったが、アフガニスタンパキスタンの現状(といっても単行本が出たのが1993年なので、ソ連侵攻後米軍侵攻前での状況)についての説明が結構多く書かれており、また善意ではあるがが独りよがりの援助とならない本当の意味での国際協力とは「何かしてあげる」のではなく、現地の事情を考慮して、その地の人と協力して「ともに生きる」、ともに作り上げるものだというような国際協力の心得みたいなこともしばしば書かれていて、医療の現場の話というのはそれほど多くない。
読了日:5月8日 著者:中村哲
理想のヒモ生活 5 (ヒーロー文庫)理想のヒモ生活 5 (ヒーロー文庫)感想
前巻まではweb版と同じ展開だったが、今回はweb版未掲載の話。いつもと違って善治郎が内助の功でなく宮廷の外で活躍していて面白かった。シリーズで一番好きな話かも。遠方の国との貿易を開始することによる利益の王家独占を狙い、現地に善治郎を「お飾り」として派遣して交渉にあたる。しかし彼が現地に居る間に群竜の襲撃が起こり、心ならずも活躍することになる。善治郎は群竜は臭いを頼りに行動するということで、彼が作った物品や覚えていた知識を活用して有利な戦場に誘導した。その結果群竜たちを殲滅できたという展開はいいね。
読了日:5月7日 著者:渡辺恒彦
疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)感想
旧世界と接触する前のアメリカは、メキシコやペルーでは相当程度の市街地の大きさと人口密度があったのだが、アメリカでは感染症を保持できるほど大きな群れを作る家畜・動物が居なかったということもあり、疫病が極めて少ない土地であった(梅毒も、中世欧州においてハンセン病と分類された深く破れた腫れ物という症状の皮膚接触で感染するフランベジアという病気が梅毒のスピロヘータと同一のものなので、アメリカ発祥か怪しい)。そのため、スペインとの接触ではネイティブ・アメリカンの人口は120年約5〜6世代で90%も減少した。(続く)
読了日:5月6日 著者:ウィリアム・H.マクニール
薔薇のマリア 21.I love you.[rouge] (角川スニーカー文庫)薔薇のマリア 21.I love you.[rouge] (角川スニーカー文庫)感想
ついに最終巻。すごく好きなシリーズだったから終わるのは寂しい。SIXの『ようやくわかった。俺が手に入れてきたもの、捨ててきたもの、失ってきたもの、その全部に意味があるんだってことを。正確に言えば、意味なんかなくても意味を持たせることはできるし、意味を持たせられるってことに意味があるんだってことをね。』(P40)という言葉は、いい言葉だ。特に彼がかつて悪党だった過去を背負う言重い言葉だからこそ心を動かされる。今回でこのシリーズの世界の設定が出揃ったから、近いうちにもう一度このシリーズを読み返そう!
読了日:5月5日 著者:十文字青

読書メーター


ラ///
小/////5/
エ/
ノ/////5/
歴///
そ/

太平記 ビギナーズ・クラシックス」は歴史換算。



ライトノベル 3
小説 6
エッセイ 1
ノンフィクション 6
歴史 3
その他 1

5月に読んで特に面白かったもの。
薔薇のマリア 21」

 確実にライトノベルの中で三指に入る大好きなこのシリーズもついに完結。完結お疲れ様です!色々と設定の謎も明かされて良かった。
フェルメールになれなかった男」
フェルメールになれなかった男: 20世紀最大の贋作事件 (ちくま文庫)

フェルメールになれなかった男: 20世紀最大の贋作事件 (ちくま文庫)

 これは面白かった。ちょっとびっくりするほど読みやすく、また精神的につらくて読みづらいということも全くないので、らくらくと読み進められ内容も面白い。今年読んだノンフィクションの中でも屈指の本。
理想のヒモ生活 5」 シリーズの中でベストの巻。善治郎は政治的に厄介になりかねないことを頭を使って上手い具合に回避したり、他にも色々と活躍していたのは、本人的には不本意だろうが、良かった。
「【東方卓遊戯】 お嬢と五人の奇人達 4-25 【サタスペ】」
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 一気に最後まで走りきってくださいました。ああ、面白かった。