6月に読んだ本のまとめ

2014年6月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:6145ページ
ナイス数:332ナイス

森見登美彦の京都ぐるぐる案内 (新潮文庫)森見登美彦の京都ぐるぐる案内 (新潮文庫)感想
京都のガイドと2つのエッセイ。全編でカラーの写真を多く載せながら森見作品に登場した場所を、どういった作品のどの場面でその場所のシーンがあるかと共に、その場所が舞台のシーンの文章を引用して紹介されている。また、地図でそうした場所がこの本のどこで紹介されているかというページ数が記されているので、それぞれの場所がどのような位置関係になっているかがわかるのはありがたい。今後森見作品を読んだり読み返したりする時に副読本として使えそうだ。
読了日:6月30日 著者:森見登美彦
十七歳の硫黄島 (文春新書)十七歳の硫黄島 (文春新書)感想
この本は著者が戦後私的に書きとめていた文章の中から、著者が通信兵として硫黄島に赴任して六ヵ月後に起きた米軍上陸直前から重症と栄養失調で意識不明となるまでをまとめたもの。その後著者は意識不明時に米軍に発見され捕虜となる。硫黄島は熱気と悪臭が立ち込める豪の中で十分な水も清浄な空気もない常況で、著者が倒れる直前には一週間以上一杯分の水すら口に入れておらず、身体にたかるしらみを口にして生きていたという壮絶な状況を見ると、著者が硫黄島という戦場を人間の耐久試験と表現したことは決して誇張でないことが伝わってくる。
読了日:6月30日 著者:秋草鶴次
ディスコ探偵水曜日〈下〉 (新潮文庫)ディスコ探偵水曜日〈下〉 (新潮文庫)感想
ミステリーでSFでセカイ系。いやあ、徹底的にディスコと梢の物語だったな。そして名探偵たちはこの物語の癒しで、彼らのズレ具合はクスリと笑えて面白かったよ。子供たちを犠牲にして、永遠を手に入れようとする社会というディストピア的な未来を見たディスコは小枝(=梢)と共に、滅び行く現在の世界から子供たちを「双子世界」に移して行く。しかし出豆海はいいやつなのに、他の名探偵たちのように3億人の子供たちと共に「双子世界」へと行くことなく滅び行く世界にパインハウスにいた面々の中でただ一人取り残されているのは哀れ。
読了日:6月30日 著者:舞城王太郎
とむらい機関車 (創元推理文庫)とむらい機関車 (創元推理文庫)感想
戦前のミステリー作家の短編集。短編集だが随筆も少し。収録作の中では「あやつり裁判」と「坑鬼」が特に面白かった。解説に『極端に飛躍した動機や、奇怪だが妙に筋の通った心理など、常識を終えた歪んだ論理の面白さ』(P334)とあるように、そうした犯人像は現代的だから今読んでも全く古臭さを感じない作品群。この著者の作品は青空文庫にも結構あるのだけど、ネット使えるとネットのほうであれこれと見てしまいろくに読み進められないことが多いので文庫本で読む。
読了日:6月30日 著者:大阪圭吉
足利尊氏と関東 (人をあるく)足利尊氏と関東 (人をあるく)感想
「I足利尊氏の履歴書」尊氏は側室から生まれた次男で母は北条氏の出でない。そのため尊氏が足利家の家督を継いだのは父が死亡し後醍醐天皇が二度目の倒幕運動を始めた1331年、27歳の時と結構遅かった。「?歴代足利一族をめぐる伝説と史実」足利家が精神病的な特徴が歴代当主に出る血統という話は、父貞氏が精神のバランスを崩したことや尊氏が情緒の振り幅が激しかったことを逆に神秘性として源氏の棟梁として君臨する正当性を示すための神話として作られた。「?足利・鎌倉の故地を歩く」足利家ゆかりの足利・鎌倉の関連史跡のガイド。
読了日:6月27日 著者:清水克行
泉光院江戸旅日記: 山伏が見た江戸期庶民のくらし (ちくま学芸文庫)泉光院江戸旅日記: 山伏が見た江戸期庶民のくらし (ちくま学芸文庫)感想
文化年間に6年間、1812年から1818年まで、托鉢をしながら諸国を回った、国元ではかなり大きな寺の住職である老山伏泉光院がつけた記録から当時の庶民の生活を見る。6年の廻国の間にどこかの家に泊めてもらえなかったことがほとんどなく、なかなか泊めてくれるところが見つからずに困っていると自分の家に泊まるように勧めてくれる親切な人が多いことには驚く。関所や番所、全国的に見れば藩境に小規模な番所さえないところが普通で、番所があるところでさえ手形のチェックをろくにしないようなところも多かった。
読了日:6月26日 著者:石川英輔
ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫)ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫)感想
「文脈的に」ディスコが解決することが求められていたパインハウスの事件だったが、本人も周りの人も推理を信じなければ真相にならないという意思が強い力を持つ世界の摂理を知ったディスコはこの事件を終結に導く。そして意志の力で時すら超えられる世界の中でディスコは死んだ名探偵を生き返らせ、過去や未来に自在に移動する。事件解決後そうした力を使いディスコは過去から、現在の状況のつじつまを合わせる行動をとっていることや梢まわりの事情が色々ややこしいから、スケール感があって面白いと思う一方でいまいちよくわからない感もある。
読了日:6月24日 著者:舞城王太郎
人類は衰退しました 9 (ガガガ文庫)人類は衰退しました 9 (ガガガ文庫)感想
本編完結。今回で本編が完結するとは思わなかったので驚いたが、この後も短編集が出るようなので本編完結と知って悲しくなっていたが(年1の刊行ペース的に)シリーズの終了はまだまだ先だと思え安心した。そして本編完結巻ということで、今まで謎だったこの世界での人類の発展から衰退までの話がついに明かされた。今回はいつもより難しめの話でよくわからないかったが、ネタバレ考察を読みよくわからなかった部分が意味するところを知って、見方が大きく変わって唸らされた。本編完結に相応しい綺麗なまとまりかたをした良い話でした。
読了日:6月23日 著者:田中ロミオ
イギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)イギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)感想
「近代世界システム」論によると、近代世界は中核地域と中核に従属する周辺地域という構造で、周辺は中核に食料・原材料・エネルギー源などを提供しているが両地域間の交換は不等価交換になることが多く、労働の成果が中核に集中する仕組みとなっている。中核地域である西欧で自由な賃金労働が広まりつつあった頃に周辺地域では農奴制(東欧)・奴隷制カリブ海ラテンアメリカ)などの非自由労働が幅を利かせるようになったが、その2つの現象は「近代世界システム」の表裏となる不可分な現象で、同時代的な現象だった。
読了日:6月20日 著者:川北稔
知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社プラスアルファ文庫)感想
よく聞く「常識」的な指摘・言葉を具体的な例にして、どうやって違う方向からその問題を見たり、思考を深化させたりするかについて説明されている。そうやって複眼的にそうした常識的な物事をみるとどうなるかについて書かれることで、常識的なことでも案外その問題の本質や別の側面についてあまり理解していなかったことを実感させられる。
読了日:6月19日 著者:苅谷剛彦
聖なる木の下へ アメリカインディアンの魂を求めて (角川ソフィア文庫)聖なる木の下へ アメリカインディアンの魂を求めて (角川ソフィア文庫)感想
比較文明学者である著者が現代の彼らの生活や信仰を伝統的な儀式を良く保存しているラコタ〔スー〕族が暮らすインディアン・リザベーション(保留地)に滞在した時に見て取ったものを主な材料にして、彼らの信仰や思想について書いている。癒しをもたらす者であり、伝統の儀式を執り行う人であるメディスンマンは癒しに対価を取らないが、それはワカンタンカ(グレート・スピリット)から与えられた個性の違う力はすべてが調和のうちに共生するために使われるべきもので、自分のためだけに使うことを嫌うという思想がラコタの人々にはあるから。
読了日:6月18日 著者:阿部珠理
ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)感想
主人公の探偵ディスコと共に暮らす子供・梢に未来の梢が入って体も未来の姿になったり、梢の身体に桔梗という別の人間の魂が入るなど常識を逸脱した出来事ばかり続く。人の同一性やタイムスリップについての話とか「この世の出来事は全部運命と意思の相互作用で生まれる」という話の分量が多くいまいちのりきれなかった。しかし元の梢の魂を探しにきた場所で、そこに集まっていた名探偵の一人である八極が「推理を始めます!」と宣言すると、それを待っていたかのように他の名探偵全員が直ちに扉をバンと押し開け部屋から出てきたのは笑った。
読了日:6月17日 著者:舞城王太郎
絶対ナル孤独者 (1) ―咀嚼者 The Biter― (電撃文庫)絶対ナル孤独者 (1) ―咀嚼者 The Biter― (電撃文庫)感想
あとがきで「いまの私が発生させられる持てるラノベパワーを余さず注ぎこんだ一冊」と書いてあるだけあって、面白い王道の作品に仕上がっている。 敵役であるバイターが単なるやられ役ではなく、彼視点の文章がかなりあって、背景も描かれ一人のキャラとしてちゃんと描かれているのはいいね。そして主人公空木ミノル対バイター戦は戦闘が両者の視点から書かれているのもいいし、熱くて面白い。川原作品のバトルシーンでトップクラスに好きだ。
読了日:6月16日 著者:川原礫
考証要集 秘伝! NHK時代考証資料 (文春文庫)考証要集 秘伝! NHK時代考証資料 (文春文庫)感想
色々な言い回しや物がいつの時代から登場したのかなどについて書かれている。さまざまな時代のことが書かれているから飽きもこないし楽しんで読める。鯛が晴れのご馳走になるのは近世(江戸時代)からで、それ以前は鯉が江戸時代以降の鯛のような存在だったとは驚き。現代一般にイメージされるような鼻の長い天狗が登場するのは室町時代以降で、それ以前は天狗といえばカラス天狗の姿が連想され、さらに平安時代は天狗がどのような姿なのかはっきりとしたイメージなかったというのは意外だ。
読了日:6月12日 著者:大森洋平
日本神判史 (中公新書)日本神判史 (中公新書)感想
湯起請は誕生したのは室町時代で、鎌倉時代までは神社に7日間籠もらせ身辺に異変がないか調べる参籠起請が行われていた。しかし室町時代になると参籠起請で出た神慮に疑うようになり、もっと過激な方法でないと神慮は示されないと考えるようになったことで参籠起請→湯起請→鉄火起請と過激化していった。つまり湯起請・鉄火起請は強い信仰心でなく信仰心の揺らぎから生まれた。また湯起請は地域の共同体内部での事件の際に、互いが疑心暗鬼になり共同体が崩壊しないように誰もが納得するかたちで白黒をつけて秩序維持を図るためにも使われていた。
読了日:6月10日 著者:清水克行
大聖堂 (下) (ソフトバンク文庫)大聖堂 (下) (ソフトバンク文庫)感想
前巻終わりから暗くなっていた物語の雰囲気だが、アリエナが大陸に渡って旅立ったジャックを探すことを決心したシーンでそれまでの暗い雰囲気を払拭された。そのシーンを読んで物語がこれで好転し、もうここからは悪いことは起こらないだろう、これから後にウィリアム・ウォールランの策謀があっても無事に切り抜けられるだろうと確信できたし、実際にそれから順風満帆で敵の策謀も無事に切り抜けて、期待通り大団円で終わってくれた。下巻は良い具合に物事が進んで、それまでフラストレーションがあった分だけ爽快で、楽しく読めた。
読了日:6月9日 著者:ケン・フォレット
剣術修行の旅日記 佐賀藩・葉隠武士の「諸国廻歴日録」を読む (朝日選書)剣術修行の旅日記 佐賀藩・葉隠武士の「諸国廻歴日録」を読む (朝日選書)感想
幕末の佐賀藩士牟田文之助の日記をもとに当時の武者修行の様子が書かれる。当時大勢の人が諸国廻遊する武者修行の旅に出ていたので武者修行の手続きが整備されていて、各藩には修行人宿という修行人の宿泊費や食事代は無料(現地の藩が負担)という宿があった。武者修行でその土地の道場に行っても、乱取りのように相手を変えて対戦していく形で、審判も居らず明確に勝ち負けも付かないので、武者修行の実態は他流試合というより他流との合同稽古だった。そのため遺恨は生じず、むしろ合同稽古をしたことで親しくなることも多かった。
読了日:6月6日 著者:永井義男
渋沢栄一 下 論語篇 (文春文庫)渋沢栄一 下 論語篇 (文春文庫)感想
下巻では日本の強硬な対中政策、そしてアメリカ側の日本移民排斥の動きで関係が悪くなった日米関係修繕に民間の立場から尽力していたことや家庭人としての側面など、経済人としての活動以外の渋沢栄一の活動が主に書かれている。しかし渋沢はアメリカとの民間外交ではアメリカ側の多くの人から強い敬意を持たれ、また彼は強硬な排日論者とも会談し、そんな人も「オールド・グランド・マン」渋沢のファンになったというのはすごい。
読了日:6月4日 著者:鹿島茂

読書メーター


ラ//
小/////5
ノ//
歴/////5
そ////





ライトノベル 2
小説 5
ノンフィクション 2
歴史 5
その他 4

いつものように20冊前後の読了数と6、7000ページの読了ページ数。



6月に読んで特に面白かったもの。

「大聖堂 (下) 」

 今までウィリアム・ウォールランが何度ももたらす災厄で悪い流れとなっていたが、この巻では冒頭で物語の底をついたのがわかって、アリエナが大陸に渡ってからはもう悪い流れは終わったと感じることができたし、実際その後は好循環で色々な物事が展開していって大団円で終わったのでよかった。それまでフラストレーションがたまっていたぶんだけ、爽快だったし物語が好循環で進展して言っているのが嬉しく感じた。
「イギリス 繁栄のあとさき」
イギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)

イギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)

 近代世界システム論の話など、なかなか興味深い話が多く面白かったな。
「日本神判史」
日本神判史 (中公新書)

日本神判史 (中公新書)

 過激な方法は狂信的な信仰心からでたのではなく、むしろ穏やかな方法では神が何かを示してくれないと感じるようになった神が遠くなった時代ゆえにでてきたものだというのは目からうろこ。そして、江戸になって更に神が遠くなって、神が神判で成否を示してくれるとは思えなくなったためそうしたものは廃れた。