迷いアルパカ拾いました

内容(「BOOK」データベースより)

「ちょっとここで、アルパカ拾いまして」―楓ケ丘動物園のアイドル飼育員・七森さんの友人が失踪した。行方を探る鍵はアルパカ?ハムスター?それとも…飼育員仲間の桃くん、ツンデレ獣医の鴇先生、アイドル飼育員の七森さんや変態・服部君らおなじみの面々が大活躍する、大人気動物園ミステリーシリーズ第3弾!


 動物園シリーズ3作目。似鳥鶏さんは多くの作品を文庫初出で発表されているので、著作をほぼ全作を読んでいる、個人的には稀な作家さん。同じ著者を集中して読むとその作家の世界観や作品への理解が深まるからいいなんてことは聞くけど飽きっぽい性質なので、同じ作家さんの作品を続けざまに読むことがないからなあ。
 語り手の桃本が悪戦苦闘したり恐怖したりしている姿を見るのが好きって、服部君相変わらず変態だなあ。そして君、歪んでいるとはいえどんだけ桃本のこと好きなの(笑)。
 『大きな工事でない限り、動物者の補修、改装、増築といった作業は飼育員が自分でする』(P31)ということは驚いた。お仕事物のミステリーはそんなに量を読んでいるわけではないが、こうしたちょっとした知識を知れるのは面白いから好きよ。
 いつもの都筑刑事の部下の大柄の刑事が、アルパカにつばを吐きかけられ、それでも歩み寄ろうと草を持って近づき更につばを吐きかけられ、更に人をなめるのが好きなキリンに顔をべろべろとなめられるというのが、特にリアクションもとらずに都筑刑事と話している裏で起こっているのはシュールで笑えた。それがたった1ページのうちに起こっていることも含めて(笑)。
 しかしこのシリーズは動物園が事件だけど、起こった事件の真相は黒いし、組織犯罪がかかわってくる率が高いな。そして主人公たち動物園組が警察でもないのに、直接怪しい場所に密かに立ち入って調べることも辞さないのもこのシリーズの色といえば色だな(笑)。
 ラスト50ページくらいで捜査していた動物園の4人が、それぞればらばらの人を怪しいと思っていたというのが書かれていたが、特に推理せずに読み進めていたけど、それを読んで、そこまで4人のうちの誰が犯人かを絞らせない方法で書いていたのだろうと思って、技巧的なすごさはいまいち実感できないけど、それでもなんかすごいとは思った。
 最後のほうで服部家、想像以上に広い家で金持ちだということがわかったが、本当に彼は一体何者でどうして動物園にいるのだろうね。
 最後の最後まで、このような事件を起こした人達は分かったが、罰を与えられなさそうな感じでビターな終わり方をしそうだったが、偶然にでた一つの幸運によって、そいつらにしかるべき罰と告発を与えることができたという終わりになったのは良かったよかった。