マージナル・オペレーション 03

マージナル・オペレーション 03 (星海社FICTIONS)

マージナル・オペレーション 03 (星海社FICTIONS)

内容(「BOOK」データベースより)

新宿を恐慌に陥れた戦いの後、アラタたち一行は日本を出国し、タイへと降り立った。その地でアラタを待っていたのは、“子供使い”の悪しき影響で横行する少年兵を使ったビジネスと、“あの男”との思わぬ形での再会だった。再び、ファンタジーで現実を壊すべく、戦いに身を投じるアラタだったが、僅かな油断が、子供たち―そして、彼を愛した女の命を窮地に陥れてしまう…。熱帯の戦場に血飛沫が舞う、緊迫の第3巻。

 今回の舞台はタイだが、警察も金しだいで普通に協力させることが可能だとか階級によっては警察が動かないこともあるなどというタイのことは知らないけど、もっとちゃんとした国だというイメージがあるので、とても違和感を覚えるような描写が多かったが、あとがきに「本文はフィクションとして楽しんでいただければ」と書いてあるので、やっぱりそうだよね、本物のタイとは違うよねと思ってなんか安堵した。
 前回のイトウさんもそのことを知っていたが、タイにいってもその名を知っている人間もいて、ソフィもアラタのこととは思っていなかったようだが知っていたのだから、「子供遣い」の悪名は想像以上に広まっているようだな。
 そしてその名前だけ聞いて、傭兵というか肉壁として子供たちを使う組織が出てきて、今回の依頼者である李さんはそれを気に食わないと思っている。まあ、それで初対面からあんなことをしていたのかとわかったけど、アラタたちにからそんなに敵意を向けたら予定が駄目になる可能性も高い(そうでなくとも、仕事代吊り上げられて当然な)のによくやる、というか普通の人間だったらそんな人間の依頼は聞かないと思うがな。
 しかし1500万円という金額は望外に良いな。もしかしたら日本での依頼が、公金から出しているから渋かっただけなのかもしれないが。しかし皆がこの依頼を軽く受けたことについて不安視しているので、最初は特に何も感じていなかったのだが、そんな反応を見ているうちにどんどん不安になってくる。
 いつまでもジブリールの異性としての好意に気づかず、大人として、不器用に大人というか、親代わりというかの役割を演じようとして、ジブリールを怒らせてしまうというやりとりが全快から何度も何度も繰り返されているので飽きてしまう。あと、アラタがこんな子供たちに銃を持たせている自分の罪深さ云々といっていることも。
 現在の戦闘では守備側よりも攻撃側よりも優位というのは、言われてみれば確かにそうだが、そんなことを考えたこともなかったので、ちょっとはっとした。
 ジブリールから見たら相手は普通に指揮しているように見えたが、アラタにとっては相手がとんでもない間抜けな式をしていて意図が読めなかったというのは、久々にアラタの凄さを思い知ったわ。
 中盤で依頼を達成したから、その後また一波乱あるかとは思っていたが、ついに死人が出て、しかも戦闘の最中ではなく自分がやった相手が終わったと思ったあとの奇襲によって、殺されたということには読んでいてショックを受けた(戦闘中の死者ならば、読んでいるこちらとしてはショックは薄かったであろう)し、キャラ的に子供たちのキャラはあまり把握しきれていなかったがそれでも喪失感があった。それにソフィも誘拐され殺されはしなかったが、精神的な痛手を蒙って、精神病院に送られるという事態になってしまう。
 ソフィを誘拐されて、彼女を盾に脅されている状態なのに、相手の電話越しに音を聴くことで相手がどんなところにいるか細かいところがわかるというのは、アラタは化け物だな。というか、なんでそんなスキルをアラタは持っているのだろうか。
 警戒を怠っていたことで被害者・死者がでるという手ひどい損害を与えられて、読んでいてかなり衝撃的に感じていたが、そのおかげでとは、そういったら絶対に犠牲が必要だったことになってしまうから、全く言いたくないけど、まあその事件によってアラタは成長したと思うから、今後は今まで感じていた妙な素人っぽさ、危うさというものが抜けてくれるだろう。あとがきにも、シリーズは全5巻だけど今回が底で、次回からよりファンタジー色が増してくるということなので、次回以降のアラタの活躍に期待だ。
 次回はリさんの以来もあって2000人の子供たちを傭兵として集めて、ミャンマー義勇兵(傭兵部隊)として中国軍と戦うことになる。今回の最後は、タイでなんとか、訓練期間をスポンサー連中と話し合って、なんとか捻出しようと苦闘して、ついに戦闘に実際につくのに長引かせるのも限界を迎えて、とりあえず全2000名の子供たちの前でアラタが演説するところで終わる。
 アラタは時間稼ぎの交渉の筋がいいとリさんに褒められているが、そうした才覚も少しは持っているのか、それとも訓練期間をちゃんと取ることで死傷率が変わる死活問題と認識しているからこそ説得力のある交渉が出来ているのかどっちだろ。まあ、普通に考えれば、後者かな。
 あとがきによると、今回以降フィクションというかファンタジー色が増していくようなのは、アラタたちの活躍も派手になりそうだし、そういったファンタジー色が強まることが、ハッピーエンドにも繋がりそうなので、それはいいね。