いざ志願!おひとりさま自衛隊

いざ志願!おひとりさま自衛隊 (文春文庫)

いざ志願!おひとりさま自衛隊 (文春文庫)

内容紹介

自衛隊は、今日も頑張ってます!

酔った勢いで受けた「予備自衛官補」の試験が合格。全身あざだらけの戦闘訓練、土砂降りドロドロの匍匐前進。驚きの体当たり体験記!


 ほとんど勢いで予備自衛官補を受けたライターである著者の自衛隊体験記。
 予備自衛官補(特別な資格を持っているのでなければ18~33歳が受験資格)とは、有事のときに召集されるもので、採用されるのに試験があって、それに合格して5日間×10の訓練をすると予備自衛官となる。予備自衛官となれば、年に5日の訓練が行われる。
 雑誌で連載されていたというが、まあ、そういうブログや雑誌にありそうな軽い感じの文体でさくさくと読み進めることが出来る。
 『学校や家庭でコマゴマとした指示はたくさん受けましたが、それは同時に自主性やら中途半端な個性やらをも求められていて、純粋な「言われたことを言われたとおりにやる」は求められていませんでした。/しかし、ここは違います。自衛隊は違います。「言われたことを言われたとおりにやる」の度が違います。そういう意味では、生まれて初めて「教育を受けている」という実感を持ちました。』(P40)著者も別のところでたまにだからこそ、そういうのが心地良いと書いていたが、そういう意味では予備自補はいいなあ、と思えてきたのだが、巻末の文庫版スペシャルによると予備自補の試験の倍率は、もともと8倍とかだったのに、3・11以降は更に高まり現在は20倍とかになっているというのは驚きだ。でも、そんなんだったら入れそうにないから、ちょっとしょんぼりしてしまう。
 女子のほうが男子より脂肪が多いからあざが出来やすいと書いてあるのを見て、あざって脂肪が関係あるとは知らなかったのでちょっとへえとなった。
 匍匐前進で石とかでいたいのはまだしも、いくら訓練とはいえ良くわからない虫とかいたり泥水があるのによけずに匍匐前進しなければならないというのはちょっと虫苦手なので、ちょっと個人的には中々厳しいものがある。
 『「女性」という言葉はあまりにフェミフェミした印象でおこがましくて使えず、「女」という言葉はリアルに性的な印象が強くて使いたくなく、で「女子」を使っています。』(P81)というのはなるほど。この説明を聞いて、それならば「女子」を大人の女性が使っている人がいることにも納得した。
 『私的には「この人がならなくて誰がなるんだ?」と思えるような班長ですら不合格となってしまった特殊作戦群。/ということは、特殊作戦群はこの班長よりさらにすごい人たちの集まりということなんですね。そんな人が自衛隊にはたくさんいて、特殊な任務のために日々がんばってくれてるんですね。/あ、もうなんか日本大丈夫だ。』(P155)彼以上の人がその作戦群についていることを考えたら、日本は大丈夫だなんてことを自然と思えるくらいの信頼を持てるくらいの能力や信頼がある、尊敬できる人が身近に(というほどでもないのか?)いるというのは羨ましい。
 「文庫版スペシャルpart2 3・11」で、自衛隊は予算不足が深刻で予算がなくなったらトイレットペーパーすらなくなり、災害派遣で使用するヘッドライトなどは予備自衛官に限らず自衛官ですら自腹で買って、3・11時に使用していたということからもその予算の僅少さが伺える。そんなに予算不足とは知らなかったので、もっと予算増やせよとちょっと憤りすら感じてしまうわ。
 解説にあるように、最初は軽すぎて自衛隊のことについて興味がなく、ノリで入ってきた著者が、自衛官たちの姿や言動を見ているうちに、2013年の東日本大震災が起こった翌日に自衛官の所属地方協力本部からの電話で、召集があったら応じられるかとのに対して「召集があればいつでも行きます」と答えたように、自衛官の自覚と美徳を持つようになった成長を見ることができる。
 ただ、解説は自分の意見を言いすぎというか、著者と親しいならばともかく、そうでないのならば、貶しているようで持ち上げているようなそんな書き方をするのはちょっとなあ。雑誌に書いてある書評とかならばともかく、解説として本にくっついてくるものでそれはちょっと違和感を覚えてしまうなあ、少し神経質すぎるかもしれないけど。