8月に読んだ本のまとめ

2014年8月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:6767ページ
ナイス数:429ナイス

忘れられた日本人 (岩波文庫)忘れられた日本人 (岩波文庫)感想
著者の名前を知っていたのに今まで読んでこなかったことをちょっと後悔するほどの面白さ。(主に西日本の)伝統的な農村や明治の農村・庶民の日々の暮らしについて、また当時失われつつあった地域の文化・習俗が描かれている。その地の古老の体験談の語りを、方言をそのまま書いてくれているのは、語られた話に雰囲気が出ていいね。良質な紀行文のような冒頭の「対馬にて」や、この本の最後に置かれた「文字を持つ伝承者」(1)(2)のような在地の民俗学者についての小伝記が特に好き。
読了日:8月31日 著者:宮本常一
ガレー船徒刑囚の回想 (岩波文庫)ガレー船徒刑囚の回想 (岩波文庫)感想
フランスが新教徒に厳しくなっていた時代、新教徒の著者は国外に逃げようとしたところを逮捕されてガレー船徒刑囚となり、13年後の1713年29歳の時英女王の取りなしで他の新教徒と共に釈放された。著者がガレー船徒刑囚だった時期とその前後を書いた回想録。軍人の家系の出のある一般の徒刑囚が、外の仲間に助けられて脱走をした後、彼らと共に近くの教会の駆け込み場所(アジール)に逃げ込んだ。そのことで脱走時に彼を見張っていた番人やその上官の監視官は罰を恐れ、逃げ出した彼と同じ教会の駆け込み場所に逃げ込んだという話は笑った。
読了日:8月31日 著者:ジャン・マルテーユ
今昔物語 (ちくま文庫)今昔物語 (ちくま文庫)感想
「今昔物語」全1040話の中から155話を福永武彦が選び、現代語訳したもの。この本でも650ページ超の分量があるけど、それでも「今昔物語」全体の話の7分の1程度しか収録していないのか。「今昔物語」を読んだのは初めてだが芥川の「羅生門」「芋粥」の元となった話をはじめ、歴史の本で見た話や出展が「今昔」とは知らなかった挿話など意外と見知ったエピソードが色々あった。そのように「今昔」のエピソードが様々なところで目にする機会があることからも「今昔物語」という作品の大きさを感じる。
読了日:8月29日 著者:
平安の都 (朝日選書)平安の都 (朝日選書)感想
平安時代平安京のさまざまな人、場所、くらしなど色々な事物について多くの筆者の手により、一つの項について基本的に見開き2ページという短さで簡潔に説明されている。当時は内裏には天皇の寝所から24メートルしか離れていない場所にまで強盗が入っても駆けつける侍臣が誰もいなかったり、物乞いが入ってきたりと相当無防備な状況だった。源義経が平泉に居たのは、当時平泉政権の顧問役だった藤原基成は、義経の母の再婚相手である藤原長成の従兄弟で、その縁で基成に預かってもらっていたから。
読了日:8月28日 著者:角田文衛
ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
ベネフィットとコスト(経済性)という観点から、人口の増大により使える環境資源が少なくなって生活水準が悪化して、かつて効率的だった方法が効率的でなくなったことなどで起こる、社会制度や食習慣の変化といった社会生活の変化を見る。メソアメリカでかつて日常的に大規模な人身供犠がなされ、その肉が再配分され食用とされていたのは、人間が食べられない草などを食べる家畜がいなかったため。そのためリャマという反芻動物のいたインカでは、生贄となり肉が再配分されるのは人間ではなくリャマだった。
読了日:8月27日 著者:マーヴィンハリス
【Amazon.co.jp限定】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア2 書き下ろし4PリーフレットSS付き (GA文庫)【Amazon.co.jp限定】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア2 書き下ろし4PリーフレットSS付き (GA文庫)感想
今回はダンジョンに潜っているアイズたちのパートと、地上でのロキとペートのパートに分かれていて、交互に両者のパートが入れ替わりながら、前者は偶然に、後者は能動的に、どんどんと前回の謎のモンスターの街への襲来という事件について新たな情報を得ていくのはミステリーみたいな感じで面白かった。何かしら企んで、行動している黒幕はいるようだけど、それが誰なのか、何の目的かははっきりしなかったなあ。しかしそれは本編であった凶兆のような出来事とも関連してきているだろうから、そのあたりは本編でいずれ明かされるのかな。
読了日:8月25日 著者:大森藤ノ
「心理戦」で絶対に負けない本(文庫) 敵を見抜く・引き込む・操るテクニック「心理戦」で絶対に負けない本(文庫) 敵を見抜く・引き込む・操るテクニック感想
この本では人間の心理を利用したテクニックについて、日常でありそうな例をあげてどういう風にそのテクニックを用いるか書かれている。また商売で用いられているテクニック、詐欺師が用いているテクニックへの対処法としてどうした方がいいのかについても書かれてあってなかなか面白かった。「第四章 「裏」の心理学」では実際の「詐欺」や「だまし」で使われているいくつもの手口に、どういった心理的な効果を持つテクニックが用いられているかについて解説してあって、そうしたものは以前からちょっと読みたいと思っていたので読めて良かった。
読了日:8月24日 著者:伊東明,内藤誼人
おいしい穀物の科学 (ブルーバックス)おいしい穀物の科学 (ブルーバックス)感想
「図1-4 穀物栽培に適した温度と水分」は、温度と水分が高い(多い)か低い(少ない)かで具体的な数字を使わずに、主な穀物に適した環境について穀物を円形で表し、それらを重ね合わせながら、どういう穀物が大体どうしたところが向いているかを示していて見ていてちょっと面白い。温帯の平地では50年、堆厩肥を投入し続けると炭素含有量は上限に達して、堆肥を投入しない収奪的農法の3倍の生産力になる。この50年という数字を見ると、かつては新たに開拓するのは難事業だったということがよくわかる。
読了日:8月23日 著者:井上直人
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 5 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 5 (GA文庫)感想
他の冒険者に怪物進呈されて、戦いながら逃げているうちに地面が崩れ落ち、ベルたちは中層チャレンジ初日にして十分なアイテムもないが地上に戻るのが困難なため、数層下の安全地帯までボロボロの状態で進むという展開は燃える。しかしベルはミノタウロス相手に、1巻ではただビビッていただけなのが、3巻では激戦の末に撃破して、今回は複数を相手取っても瞬殺しているのはすごい成長力。対ミノタウルスはベルがどれだけ強くなっているかのわかりやすい指標だけど、ミノタウロスがやられ役になってしまったのは少し残念でもある。
読了日:8月21日 著者:大森藤ノ
シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)感想
自転車ロードレース。アームストロング時代、ドーピング全盛期の「プロフェショナル」なロードレーサーの姿を描くノンフィクション。タイラー・ハミルトンのドーピングについての告白に加えて注での詳しい説明や他の選手や関係者による証言がある。1dayレースや短期間のレースならドーピングをしていなくともドーピングを使っている選手に対抗できたが長丁場のレース、例えばツール・ド・フランスのような3週間もあるレースで勝負できるレベルになるにはドーピングが必須だった。
読了日:8月20日 著者:タイラーハミルトン,ダニエルコイル
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア (GA文庫)感想
本編の1巻とほとんど同じ期間をロキ・ファミリア側から見た話。本編のヒロインのアイズとエルフの魔法使いレフィーヤをメインに据えた物語。最前線に行くにも、そこから帰るにも大人数でパーティーを組んで5、6日かかるというそこらへんの設定はなんか現実感があっていいな。アイズの背中がかなり開いている服は今までゲーム的な露出度が高いけど高性能という防具なのかと思っていたが、彼女が所属するファミリアの神ロキが趣味で着せているものだったのか(笑)。
読了日:8月18日 著者:大森藤ノ
若き日本の肖像: 一九〇〇年、欧州への旅 (新潮文庫)若き日本の肖像: 一九〇〇年、欧州への旅 (新潮文庫)感想
2000年に単行本が出た20世紀を総括して、これから欧州を知ることが一層重要になることを書いた本。明治の日本人がいかに欧州の文化・文明などにふれて、いかに真剣にそのことを受け止めて思考したについてと、そこで学べなかったことでの失敗の話から「欧州動向が見えなくなると日本は混迷する」という教訓を示す。明治の留学生の話もあったけど、それと同じかそれ以上にマルクスケインズヒトラーフランコなど20世紀の重要人物だったり、彼らを生んだ風土についての説明がある。
読了日:8月17日 著者:寺島実郎
デュラララ!! 外伝!? (電撃文庫)デュラララ!! 外伝!? (電撃文庫)感想
短編集。プロローグと章間とエピローグの一連のセルティと新羅の話は書き下ろしだが、その他の短編は以前にさまざまな場所で掲載されていた短編を収録したもの。外伝と聞いててっきり無印終結からSHまでの話が読めるのではないかと勝手に期待していたので、そうした話がなかったのはちょっと残念。あとがきにパロディ企画の本が初出の短編も多いと書いてあるように、全体的にコミカルで読みやすかった。そして「エピローグ、あるいは外伝9『祭り妖』」は、セルティと新羅が祭りを楽しむほのぼのした話でいいな。
読了日:8月16日 著者:成田良悟
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか4 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか4 (GA文庫)感想
巻末に短編2編ある分、本編は短めでベルのレベルアップへの反響と鍛冶師ヴェルフがパーティーに新たに加入した話。内容的には大きな展開はなかったが、ベルに相棒キャラができたのは今後を考えると良かったな。それに主要キャラにベル以外の男キャラがほぼいなかったから、そういう意味でもベルの仲間に男性キャラが増えるのは大歓迎。レベルアップした人に神々が二つ名をつけるが、それは冒険者たちは格好いいと思われているが神々にとっては(中二的な)痛い名前だから、つけられた二つ名への本人と神様の反応がぜんぜん違うのは面白い(笑)。
読了日:8月14日 著者:大森藤ノ
ソードアート・オンライン (15) アリシゼーション・インベーディング (電撃文庫)ソードアート・オンライン (15) アリシゼーション・インベーディング (電撃文庫)感想
今回はキリトが全く何もできない状況となっているのでアリスが主人公みたい。オーシャンタートルに急襲してきたチームのガブリエル・ミラーとヴァサゴがダークテリトリーの皇帝と騎士となりアンダーワールドへ進入してきたので、ダークテリトリー側の話も展開されるがそちら側の話が面白い。皇帝ベクタ(ガブリエル)は近年あまり見ない純粋な悪の首魁って感じで、精神的な弱さや迷いが全くなく、殺意の心意が全く通じないなどのラスボスに相応しい能力や振る舞いをしているのはいいね。次回の人界とダークテリトリーの決戦は楽しみだ。
読了日:8月12日 著者:川原礫
大江戸遊仙記 (講談社文庫)大江戸遊仙記 (講談社文庫)感想
今回は新たに技術だったり物を持っていったり、持って帰ってきたりというのがないが、そうしたものが時空移動系の物語の醍醐味だと個人的には感じているので、ちょっと物足りない。また今回は洋介の江戸観光がメインになり、これといった出来事とか事件も起こらず、物語の動きが乏しくなっているのは少し残念。それと江戸時代の白粉が有毒だということは知っていたが、世界的にもそうで、そうした白粉は1930年代まで世界中で広く使われていたとは知らなかった。
読了日:8月11日 著者:石川英輔
ミャンマーを知るための60章 (エリア・スタディーズ125)ミャンマーを知るための60章 (エリア・スタディーズ125)感想
ノンフィクション作家高野秀行さんのブログで面白いと書かれたので興味を持っていたがようやく読めた。歴史、自然、社会、文化、政治、経済の6カテゴリーに各10章とバランスの良い構成。巻末にブックガイドと年表が付されており、年表に書かれている出来事の後ろに、それに少しでも言及している章の番号が付いているので後から何かを調べる際に便利そうだ。ビルマの4代の王朝は、王統はインドの釈迦族の出を称し、仏教を基盤とする王朝に正当性を与えていたというのは面白い。
読了日:8月9日 著者:田村克己,松田正彦
企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書)企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書)感想
アマゾン、マクドナルド、グーグルなど得意な事業で覇権を握り、生活や商習慣を変え、政治に強い影響を持つ「私設帝国」となった企業。そうした帝国企業は世界的な販売戦略や開発などに携わる数千人の中核となる超エリートとそうした企業が創出した代替可能な仕事につく数十万人に構成される。企業が最大利益を追求する中で発生するそのような構造下での「副作用」として格差問題が必然的に起こる。そしてそうした企業の中核、国籍を問わない実力主義社会での仕組みを作れる能力と立場を持った人間による「勝者総取りの時代」になってきている。
読了日:8月6日 著者:松井博
イスラム飲酒紀行 (講談社文庫)イスラム飲酒紀行 (講談社文庫)感想
様々なイスラムの国で酒を飲んでいるが、飲酒目的の旅ではなく、色々な取材時の酒を飲んだときの話を後から一つのテーマでまとめたもののようだ。しかしイスラム諸国でもとりわけ酒に厳しい国であるイランとかでも酒を思ったよりも苦労せずに入手できているようなのは意外。シャイロック似のイラン人が、とても親切にチョウザメや酒を探すのを手伝ってくれていると思ったら、自分が食べたかったらしく、実際に食事する段になったら真っ先にビールやチョウザメ料理に手を出したというのは笑った、しかし上機嫌に飲食している彼を見ると憎めない。
読了日:8月4日 著者:高野秀行

読書メーター


ラ/////5/
小//
エ/
ノ//
歴/
そ/////5//


ガレー船徒刑囚の回想」はノンフィクション換算。


ライトノベル 6
小説 2
エッセイ 1
ノンフィクション 2
歴史 1
その他 7

 7月に読めなかった分、8月は一杯読もうと意気込んでいたが、20冊も読めずに終わるとはちょっとショック。好きなやる夫スレを最初から再読したり、あるいはニコニコでマリオカートの12人全員分の視点がある実況動画企画があげられていたので、それをみてはまってしまい、マリオカート動画を一杯見ていたりしたり、MMD杯の動画を見ていたからかなあ。……こう改めて振り返ってみると、読めなかった原因が案外あるな(苦笑)。



8月に読んで特に面白かったもの
「忘れられた日本人」

忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

 今まで読んでいなかったことを後悔する面白さ。小説以外の作者で読みやすくて、面白くて、文庫とか手軽な本で入手容易な著作がたくさんある著者に巡りあえることは数少ないので、そうした著者を知れたことは大きな喜びである。
ガレー船徒刑囚の回想」
ガレー船徒刑囚の回想 (岩波文庫)

ガレー船徒刑囚の回想 (岩波文庫)

 個人的には10ページ程度の分量だが、ピートル・バルトのエピソードだけでも読んだ価値があったと思える。「ある出稼石工の回想」もそうだが、岩波の青本のこうした自伝的な本は面白いのだが、この2冊の他にそうした本が見当たらないのは残念だ。まあ、日本人の本ならそうした自伝的で面白そうなものも多少あるのだが、昔の文章だから読んでいて面白く読めるか自信ないからいまいち食指がのびない。
「ヒトはなぜヒトを食べたか」
ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 表題から想像した内容とはおもむきがだいぶん異なったが、面白い。この著者の他の著作も読みたくなる。