徹底図解 社会心理学

徹底図解 社会心理学―歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで

徹底図解 社会心理学―歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで

社会の中での個人の心理や集団の中で人間はどのように行動するのかを研究する社会心理学。本書では環境破壊、商品の買い占めといった社会現象・社会問題も取り上げます。
「自分は何者か?」「対人認知と行動」「集団の中の人間」「社会現象・社会問題の心理」という大きな4つのテーマについて、実験や観察に基づく研究を紹介。また具体的な事例を取り上げていきます。
社会心理学」の入門書の中でも過去にないわかりやすさを実現!社団法人日本図書館協会選定図書。

(新星出版社 home > 書籍検索 > 社会心理学 より)


 数多くの実験とその結果について書かれていて、読んでいて楽しい。しかし本文やコラムに監修者の名前がかなり出てくるのは笑った。いや、実際偉い人なんだろうし、自分が詳しいことの比率が大きくなるからそうなるのだろうけど、巻末の「さくいん」を見ると7回も名前が出ていて、本書に登場した数多くの社会心理学者のなかでも屈指の数だというのはなんだか面白くなってしまう。
 他の人が気づくと思うほど緊急事態に援助行動をする比率が減り、また、援助行動をするまでの時間が長くなる。そしてその効果は、自分以外の傍観者が多ければ多いほどその効果が強まる。同様の傍観者実験で、煙がでてくるのに他の人が気にしていなければ、その煙をたいしたことではないと思い、その煙への対処が抑制される。また、いじめについても傍観者効果があるようだ。
 最初と最後に示された特性語などの情報が印象形成に大きな影響を与える。
 認知的不協和実験、つまらない作業をやった後に報酬をもらい、次の作業をする人に面白い作業だったという。その時に20ドルをもらったグループは作業直後と同じくらいの作業のつまらなさだと思っていたが、1ドルをもらったグループは作業直後の感想よりも面白かったという感想が増えたというのは面白い。これはわずか1ドルの報酬で、面白いと告げたことで自分の中の不協和が生まれ、それを正当化するために無意識に実際に面白い部分もあったと認知を変えた。
 また他にも、おもちゃを禁じる際に厳しく禁じられると子供にとってそのおもちゃの魅力が増すが、やんわりときんじられると子供のなかで罰の威力は小さいがそのおもちゃで遊べない状況を正当化するためにそのおもちゃへの評価を変えて、そのおもちゃの魅力が減ずる、という結果が得られた認知的不協和実験もある。しかしこの認知的不協和の話は面白いな。
 事前に小さな要請を飲んだ人は、その要請を呑むことで自分のことを「他人からの頼みごとに応じる共感的な人間」と認知するようになるので、次に同種の要請を受けた際にも承諾する確率は非常に高くなる。それは一連の行動に一貫性を持ちたいという心理からそのようなことがおきる。
 便宜的に二つの集団にわけただけでも(たとえばAという画家とBという画家のグループ)、自分たちの報酬ポイントがもっとも高いものではなく、他のグループよりも自分たちのグループの方が報酬ポイントが高いことを選ぶ。
 模擬刑務所実験(スタンフォード監獄実験)、これは有名だし詳しく知りたいのだけど、どこかにこれをメインに扱った本とかないかなあ。あったらぜひ読みたいのだが。と、毎度言っている気がする。
 複数回行われる囚人のジレンマゲームで最も強いのは、前の回に相手が非協力的な行動をしたらこちらも非協力をして、相手が協力するならこちらも協力するというシンプルなプログラム。
 恋愛・友人関係、類似性(自分と似たタイプ)と相補性(自分とは違ったタイプ)、多くの研究結果から類似性のほうがより魅力を感じる作用が強いようだ。
 自信を失っているときに行為を示してくれた人への高感度が高くなるというのは心理学的にも認められていることなのね。
 葛藤への対処行動モデル。関心満足度大、それまでの投資大=対話(建設的行動)。問題が深刻でない、それまでの投資大=大気(建設的行動)。関係満足度低、それまでの投資小=無視(破壊的行動)。関係満足度低、それまでの投資小、他の選択肢が有る=退去(破壊的行動)。対話、待機→関係が持続、無視、退去→関係が崩壊。
 多数者に影響を与えるには少数者が一貫して異論を唱え、そして多数派から変わり者とされて意見を軽視されないために問題の争点意外は多数者との共通点を備えることが大事。
 PM理論でのリーダーについて、図で学校の教師を例に挙げて、どういうことかを示しているのはわかりやすくて面白い。
 豆知識の『アメリカ人は自尊心が高まった場合のみ励ましなどの情緒的サポートに幸福感を抱くが、日本人は情緒的サポートを受けることそのものに幸福感を抱くとされる。』(P153)というのは面白いというか、アメリカ人は普通のときに情緒的サポート受けてもあまり何も感じない傾向があるのかとちょっと驚いた。
 実は個人ではアメリカ人よりも日本人のほうが個人主義的で、日本人が集団主義的な行動を取るのは、集団を離れることで失うものが大きいから。