魔法科高校の劣等生 14


内容(「BOOK」データベースより)

『九校戦』の“裏側”で起こった『パラサイドール』事件の黒幕の一人・周公瑾は、横浜から逃亡し、京都を中心とする古式魔法師集団「伝統派」の元に潜伏、姿をくらました。そして二ヶ月が経ち―。『全国高校生魔法学論文コンペティション』の季節がやってきた。新京都国際会議場で開催される日本魔法協会主催『論文コンペ』の準備に忙しい一高生徒たち。そんな中、達也の許へ、四葉真夜の書状を携えた黒羽姉弟が訪れる。手紙の内容は「周公瑾の捕縛に協力して欲しい」という要請だった。何故、いつもの『命令』ではなく『依頼』だったのか疑問を覚えながらも、達也と深雪は「伝統派」の対抗勢力の中心である九島家を目指す。そこで、二人は『作られた天才魔法師』と運命の出会いを果たし…。古都を舞台とした謀略と暗闘。魔法師開発の歴史の裏で燻り続けてきた因縁に、達也と深雪とその仲間たちが挑む。


 巻末の広告ページを見ると、「ドウルマスターズ」の2巻が今年の12月に刊行と書いてあり、今年はアニメで忙しいだろうに、新シリーズ2冊と本シリーズ2冊の計4冊出すことになるのか。web版のストックが切れ、雑誌連載で書かれていた12巻のダブルセブン編のあと半年間が空いたから、今後は年2ペースになるのかなと思っていたら、今年は4冊も出るということで、アニメが終わってからもこのペースが維持されたら嬉しいな。というか、そうじゃないと2シリーズ並行執筆で半年に1冊刊行のペースとなると、このシリーズが年1しか読めなくなるで、それはこのシリーズの新作は楽しみにしているので勘弁して欲しい。
 九重八雲がいる寺はできてから数十年しか経っていないのか、現代魔法でない魔法を使う人たちみたいだし、寺と言うと昔からあるものという印象だから、21世紀になってできたものだとは考えても見なかったからちょっと虚をつかれた。というか、それもそうだが前に世界規模の大きな戦争があったといっていたが、東京まで戦場になっていたとも思っていなかったわ。
 達也は新魔法開発しているみたいで、元から強いけど、それでもこうした強化イベントがあって、彼が更に強くなるというのは嬉しいね。それに単に新技、新機軸の技というだけでもワクワクするし。そして、それによって十文字のファランクス相手にも対抗できるようになるだろうということで、より一層強くなったな。たしか、うろおぼえだけど、web版の感想返しで、達也は十文字相手だと千日手になって五分だか負けるだかというパワーバランスだったような気がするけど、その力関係もこの魔法を使えるようになるとちょっとは変動するのかな。
 というか、達也は発動可能な魔法なら、練習しなくても直ぐ使えるというのを聞くと彼の能力のやばさが改めてわかるわあ。それでも彼は普通の魔法を使う能力の限界があるから、発動させられない魔法が多いのだが。
 達也が九島が自分の素性や魔法について知っていることを知っているとは思わなかったわ、さすおに(使ってみたいだけ)。戦闘の実力だけでなくこうやって情報収集もかなり高い能力なので、読んでいてめったなことにははめられないだろうという安心感があるのは、余計な不安を抱いて緊張をしなくていいから読みやすい。それと前回のパラサイトドールの実験の件で、達也が九島を好ましくない人間として認識するようになったということがあかされて、第一印象とかかつての実績とかを気にせず、ドライにそうして評価を変えられるところも変なだまされかたをしないだろうという安心感があっていいね。
 現代魔法使えず、特定の術だけ使えるというフリー魔道師は結構いるという情報は知らなかったが、今まで貴重な人材のはずなのに簡単に使い捨てにされているように見えたのでちょっと違和感を覚えていたが、そういう人たちもいて、実際の魔法を1つでも行使できる人間はもっと多いのね。
 達也は自分たちが襲撃された理由が分かっているけどその理由を話せないが、自分の周りの人間にも敵の手が伸びる可能性があるから、理由がわからないがといって警戒を促しているが、去年も同時期に事件があったか、幹比古以外には怪しいと思われずに警戒を促すことに成功させたのは上手いな。
 奈良の九島邸に達也は深雪と水波を伴って赴いたが、その移動の際に妹たちにあまり縁がないリニア列車での移動が好評なので、『もう少し遠出しても良いな、と達也が考えた』(P144)のは妙に家族サービスするお父さんみたいな感慨を抱いているのは、思わず笑ってしまう。
 達也と九島の間で出てきた「あのお方」という言葉は一体何のことやらわからないが、なんか大物でラスボスっぽいものにでもなりそうな人物みたいな思わせぶりな言及で気になる。
 光宣、九島の孫。病弱だが、深雪と同じクラスの美しさを持つ美少年。そんな男版深雪というような圧倒的な美貌を誇る彼に、どうも水波は惚れたみたいで、今まで司馬兄弟には基本的に使用人として接していて、あの叔母が深雪に就けた四葉の人間だし、クローンだしと警戒が結構あったけど、思わぬ普通の子としての反応にちょっとほんわかしてしまう。
 名倉は主の七草当主すら知らないことを知っているようだったり、謎めいた裏のありそうな男と思っていたし、この巻で想像以上の実力者だとも明らかになって、今後物語でなにか重きな役割を担いそうだと感じていたら、それから直ぐに周との戦いで彼が死亡したのは予想外でびっくりした。
 あとがきに、九校戦サブエピソードそろそろお披露目しないと本編に差し支えると書かれているので、近いうちに読みたいと思っていた2年次の九校戦のいろんな話が読めそうで楽しみ。それでもシリーズの次は古都内乱編の下巻で、「ドウルマスターズ」もシリーズとしてそれなりのペースで刊行しそうな感じなので、文庫本でその話を読めるのはいつになるのかな、そんなに長い間待たなくて済むのならありがたいのだけど。