アリソン 2

内容(「BOOK」データベースより)

巨大な大陸が一つだけある世界―。その大陸は中央にある山脈と大河で二つの連邦に分けられている。その東側の連邦に暮らす、学生ヴィルと軍人アリソンは二人とも17歳。ヴィルの冬期研修旅行を聞きつけたアリソンが、ある計画を立てて、結果ヴィルとアリソンは一緒に過ごす事に…。そして、二人は偶然ある村にたどり着く。最初愛想のいい村人達だったのだが、出されたお茶を飲んだ二人は昏倒し、とらわれてしまう。実はその村は…!?「キノの旅」の時雨沢恵一&黒星紅白が贈る書き下ろし長編!胸躍るアドベンチャー・ストーリー第2弾。


 かなり久しぶりに再読したが、やっぱり「アリソン」はちゃんと起伏のある大き目のストーリーなんだけど短い分量で、話が纏められているのでテンポが良くて、面白くて読みやすいな。
 そういえば今更だけど、アリソンとヴィルは名前だけ聞いたら西側風だと言われていたが、それは名前が名字で、名字が名前みたいなのか、それとも名前と苗字の順番を逆にしたら西側でもありそうな名前だということか、どっちなんだろう。いや、別にどうでもいいことといえばどうでもいいことなんだけど、ちょっと気になったので。
 あとこれも今更なのだが「メグとセロン6」を少し読み返していたら、毒ガス作戦をした中佐について留学生がラプトア出身だから彼のことも教えられていると思っていた、ラリーは教えられていないと知りちょっとショックを受けていたシーンがあったが、それが「アリソン」の1巻の老人(中佐)のことだということに、そうしたちょっとしたシーンに前々作である「アリソン」ともつながる話を少しはさんでいたことに先ごろようやくようやく気づいた。
 この世界の大陸の東西を隔てる山は1万メートル以上の標高があるのか。なるほど、それじゃあ確かに、山地から強襲というのは無理だな。
 アリソンがヴィルをさらっていったときに、ヴィルの友人に対してアリソンの同僚が単独行動が禁止されているから規則破りを目に瞑る代わりに謝礼を払うといったが、ヴィルの友人は、ヴィルのデートには賛成だし、自分の家はラプトアで三番目に金持ちだといった後に、アリソンの同僚は財布を元の場所に「しっかりと」戻したと書いてあって、ちょっと笑った。
 ベネディクトは今までナンパしてもすげなく断られていることも多かったが、前回の行いで英雄となったことで逆に女の子からアプローチされることが多くなったら、早々にモテすぎることに苦笑するという事態になっているようだ。彼は持ち上げられてその気になって、調子にのらないというのだから、そういう点でもいい男だね。いつかはそうしたことを思う日も来るだろうけど、英雄となって日も浅いのにもう既に飽き飽きしているようだ。まあ、彼は自分自身は本当は英雄じゃないと思っているのもあるのかな(それなのに面倒ごとも栄光もまるごと背負おうとしているのだから凄いが)。あと、日が浅いからこそ急激な変化に驚いているということもあるかも。
 ヴィルが夜までに帰ってこなかったことに対して先生がヴィルの友人に、実はお前ヴィルを殺して埋めていたり、実はお前がヴィルだったりしないかなんてムチャクチャいっているのは笑う。
 ヴィルがアリソンを起こすときのお決まりのやりとりは、わりといちゃついているように見えるのに、よく他人の目の前でやれるな、ヴィルはハートが強いというかクールというか。
 ヴィルの動いている飛行機上からのピンポイント射撃は神業!そしてベネディクトは、こんな歴史的事態の主役としてラジオで実況されながら、悪党を鎮圧するなんて、これはヒーローになりますわ。この出来事で単なる発見、公表云々を超えて、一つの英雄的行為いた人間から、元から英雄的な輝きを持った人物、生来の英雄であると認識されるだろうな。
 しかしこの王族は一人しか子供を生まない、王族としないという制度であるにもかかわらず何世代も血統が保たれていたのは不可解だから、それを見てやっぱりファンタジーだなと改めて思う。