9月に読んだ本のまとめ

2014年9月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:6188ページ
ナイス数:406ナイス

暁の兄弟 芙蓉千里III (角川文庫)暁の兄弟 芙蓉千里III (角川文庫)感想
今回は、楊建明(山村)の元で彼が引き入る胡子(馬賊)の集団と行動を共にして、そのアウトローである胡子について描かれていて、胡子の仲間意識の強さや彼らがいかに馬を大事にするか、活動範囲の驚くほどの広さなど彼らの生活様式、風俗を見るのは面白い。そして今回フミは出奔して背負うものがなくなったこともあり、伸びやかになっているな。建明の友の裏切りによる予期せぬ戦闘でフミは、人馬一体となって戦場を駆け回る活躍する。そのことで仏子という神仏の加護が厚く、仏子がいれば部隊は負けないとされる特別な存在に見られるようになる。
読了日:9月30日 著者:須賀しのぶ
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)感想
レニングラード包囲戦で物資が足りないときに、17歳だった祖父レフと大胆不敵でお喋りな青年コーリャは、大佐の娘の結婚式のために一週間以内に卵を1ダース用意することを命じられる。この小説ではその短くも濃密な一週間が書かれる。前半はレニングラードで噂を頼りに卵を探す話で、極限状況だが、コーリャの性格のおかげもあって、くすりと笑えるようなエピソードが多く面白い。そして後半は都市の外に行き、そこで出会ったパルチザンと共にドイツ軍相手に知恵を絞り、賭けのような選択を繰り返しながら何とか生還するというスリリングな展開。
読了日:9月30日 著者:デイヴィッドベニオフ
妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
「妻と帽子を間違えた男」見ている物の具体的な形状はきちんと説明できるのだが、それが何かということを(手袋やバラのような一般的なものでも)一目見て判別できず、見ている物の中から特徴などいくつかの手がかりを見つけて、その手がかりを元に見ている物を推測していく。 「からだのないクリスチーナ」固有感覚(関節や腱の受容体から伝えられる体幹と手足との相対的位置の認識)がなくなったことで自然に身体を動かすことができなくなり、意識して身体を操作しなければ、同じ姿勢をキープすることや身体を動かすことができなくなった。
読了日:9月30日 著者:オリヴァーサックス,OliverSacks
9の扉 (角川文庫)9の扉 (角川文庫)感想
前の執筆者からテーマを出され、そのテーマを組み入れて書く、リレー小説。ブラックなショートショートみたいな、人の悪意を見せるような個人的には苦手な短編が多かった。収録作の中で好きな短編は竹本健治「依存のお茶会」かな。そして今回「キラキラコウモリ」を読み終えて、殊能さんが発表された全小説を読み終えたということになったのでちょっとした達成感と寂寥感を覚える。あとがきは、小説の逆順(ラストからの)リレーで、テーマを振られてどう考えて書いたかと言う話だったり、前の人のあとがきに対して反応しているのが面白かった。
読了日:9月30日 著者:北村薫,法月綸太郎,鳥飼否宇,竹本健治,歌野晶午,殊能将之,辻村深月,貫井徳郎,麻耶雄嵩
隠蔽捜査 (新潮文庫)隠蔽捜査 (新潮文庫)感想
現場の人間でなく、エリート官僚である竜崎が主人公というちょっと変わった警察小説。竜崎はエリート意識を持つが高い地位に伴う責任や求められる能力について強く認識するなど、ある意味国民から見て理想的な高級官僚といった人物。警察小説だけど、どうも事件よりも竜崎のパーソナリティが主として描かれていた印象。また、息子のヘロインを使用していることを見つけたことによる葛藤が事件と同等の重さで書かれていて、読んでいる最中はその話の比重が多いなと思っていたが、解説に警察小説であると同時に家族小説でもあるとあるのを見て納得。
読了日:9月29日 著者:今野敏
ロシア闇と魂の国家 (文春新書 623)ロシア闇と魂の国家 (文春新書 623)感想
佐藤優亀山郁夫という二人のロシアの専門家によるロシアについての対談集。ロシアは権力は属人的なものでなく、地位に権力が付随する。そのためスターリンでさえ終生公職を手放さなかったし、プーチンはメドヴェージェフ大統領時代には首相となった。かつてロシアの軍隊ではペットの動物(鶏とか豚とか、変わったところでは子供の熊など)を実利でなく遊びで養うような習慣があった。そうすることで人為的なカオスを作られ、兵隊が戦地にあってもある種の余裕が生まれたり、死の恐怖を和らげる効果があった。
読了日:9月28日 著者:亀山郁夫,佐藤優
続・終物語 (講談社BOX)続・終物語 (講談社BOX)感想
物語シリーズ完結。しかし終わったことへの感慨に浸る暇もなく、巻末の広告ページにもうネクストシーズンが出るとあるのには、なんともいえない気分になる。最後でも(結局最後にはならなかったが…)怪異と遭遇して、それを解決するために動くことになるのは、とても阿良々木くんらしい。鏡の世界から元の世界に返るために神原家の風呂に侵入するが特に何も起きず、よく考えたら頼りない根拠にすがっていたことに気づき、斧乃木ちゃんに何もなかったことを仕方ないと思わせる巧妙な説明がないかを考え始めるようとしているのは思わず笑った。
読了日:9月26日 著者:西尾維新,VOFAN
雪〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)雪〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)感想
イスラム主義か世俗主義といった信仰や西洋への傾倒と反発など、世俗主義・西洋化とイスラム主義・トルコ的なもの、二つの間を揺れ動くトルコが書かれる。舞台は90年代後半、トルコのアルメニアに近い東部の都市カルス。ドイツから久しぶりに帰国した詩人Ka氏は、少女たちがスカーフを被って授業へ出ることを拒否されたことで自殺したという事件を取材しにカルスにやってくる。その後、雪で一時的に交通が遮断され一つの小世界となったこの都市で軍事クーデターが起こされ、Ka氏はその事件の様々な部分を期せずしてかいま見ることになる。
読了日:9月25日 著者:オルハンパムク
保元・平治の乱  平清盛 勝利への道 (角川ソフィア文庫)保元・平治の乱 平清盛 勝利への道 (角川ソフィア文庫)感想
「あとがき」に『二つの兵乱の背景、それにかかわった人物を、ここまで緻密かつ実証的に描いた書物はないと自負している。』(P251)とあるように蓋然性の高くて、リアルに感じられる推測で当時の政界の情勢などが描かれているので抜群に面白い!源為義摂関家に従属して、摂関家の家産機構に依存することで勢力を拡大。そして坂東に下向した源義朝に東国武士が従ったのは、彼らが摂関家荘官であるという側面が大きく、また義朝が調停行為ができたのも、彼が河内源氏であることより、摂関家に支援されていたことが大きい。
読了日:9月23日 著者:元木泰雄
神様のメモ帳 (9) (電撃文庫)神様のメモ帳 (9) (電撃文庫)感想
最終巻。アリスの家庭の事情がようやく明かされる。アリスの年齢が14、5歳というのは、イラストからもっと幼いと思っていたので、ちょっと意外だったので一瞬驚いたが、すぐに彼女の食生活を思い出して納得。鳴海はアリスを取り戻すために細部まで詰めた大きな作戦を展開するのだが、大詰めのところで最後はアリスを信じるという博打的要素があるのは、鳴海らしいな。エピローグ、数年後の鳴海とアリスの再会が描かれるのは嬉しいけど、それを見ると、その後の二人の日常的な話も見たいなという気持ちもわいてしまう。
読了日:9月21日 著者:杉井光
幻の楽器 ヴィオラ・アルタ物語 (集英社新書)幻の楽器 ヴィオラ・アルタ物語 (集英社新書)感想
ヴィオラ奏者である著者が行きつけの楽器店で偶然その存在を知った、今は忘れられた楽器ヴィオラ・アルタ。それを最初は講演会での話の種になると思って手を出したのだが、いつしかその楽器に惚れこみ、やがてヴィオラ・アルタ奏者を名乗ってその楽器を演奏していくこととなる。そして著者は19世紀後半にドイツで発明され、ドイツでは一時期は量産体制で作られるほど盛んに作られ、また演奏されていたこの楽器がなぜ廃れたのかを調べていくことになる。
読了日:9月19日 著者:平野真敏
戦争の世界史(上) (中公文庫)戦争の世界史(上) (中公文庫)感想
17世紀に欧州でされるようになった日常的な教練は錬度を高め、規律を維持するだけではなく、集団に同じことを反復させることで強い社会的紐帯の意識を呼び起こすもので、教練を受けた軍隊を短期間で団結させ、強い仲間意識を持った共同体にした。この教練という技術は、欧州の軍隊を他には類を見ないほど強力なものにし、そして欧州がアジアで勢力を広めるのに大きな役割を果たした。欧州諸国が現地人を徴募して教練を加えた軍隊は、少勢であっても現地王侯の軍隊に対して歴然たる優位を示したので、欧州諸国は領域的支配権の獲得、拡大ができた。
読了日:9月16日 著者:ウィリアム・H・マクニール
魔法科高校の劣等生 (14) 古都内乱編 (上) (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 (14) 古都内乱編 (上) (電撃文庫)感想
達也は新魔法開発しているのは、元から強いけどこうして彼が更に強くなるのは嬉しいし、それに単純に新技というだけでワクワクする。ならの九島邸に達也は深雪と水波を伴って赴いたが、その移動の歳に彼女らにリニア列車での移動が好評だったので『もう少し遠出しても良いな、と達也は考えた』(P144)というのは、家族サービスするお父さんみたいで思わず笑ってしまった。「古都内乱編」という副題なので下巻には大きな戦闘がありそうだし、そこでまた達也の活躍が見れそうだから次回が楽しみ。
読了日:9月14日 著者:佐島勤
僕と彼女のゲーム戦争 (7) (電撃文庫)僕と彼女のゲーム戦争 (7) (電撃文庫)感想
今回はBF4というFPSのゲームの勝負。FPSのトッププレイヤーは、わずかなマップでの情報で敵がどうした進行経路をとるのかがわかったり、かすかな音からどこから敵が来るのかわかるというのは、異次元すぎてびっくり。あとがきで次回はシリーズ開始当初から現在までの、ゲームジャンルの流行り廃りについて触れると予定とあったが、そうしたゲームの世界の流行については全く知らないのでちょっと楽しみ。
読了日:9月12日 著者:師走トオル
生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)感想
貧しい者が僅かばかりのものを売る、その時貰うものは等価値の物とは限らなかったため『そういう意味からすれば、このような行為は、交易と言うよりは贈答という方が適切』(P42)そして行商ははじめはそうした物乞いの一つの形式として発展した。農村は基本的に自給を原則としていたので、江戸時代に交換(貨幣)経済を主とした生活を営んでいた人はおおよその数で、漁業に従事する100万人、林業200万人、寒冷地に住み自給が難しい者200万、それに街に住む者と武士をあわせても合計1000万人ほどと当時の日本の人口の3分の1程度。
読了日:9月10日 著者:宮本常一
サヴァイヴ (新潮文庫)サヴァイヴ (新潮文庫)感想
自動車ロードレースの世界を舞台としたシリーズの3作目。短編集。相変わらずレースシーンが面白い。石尾は「サクリファイス」では寡黙な求道者という印象が強かったが、今回石尾の先輩の赤城視点でありし日の石尾を描いた3つの短編が収録されているがそれらの短編で、彼が速く走ることに強く純粋な情熱を持ち、どこか子供のような愛らしい感じも持つ魅力的な人物であったことを知る。収録短編の中では「ゴールよりももっと遠く」と、伊庭を主役とした「スピードの果て」が好き。
読了日:9月9日 著者:近藤史恵
トルコのもう一つの顔 (中公新書)トルコのもう一つの顔 (中公新書)感想
「トルコ国民は全てトルコ人で、トルコ人の言語はトルコ語以外にない、トルコ語以外の言葉は存在しない」というのがトルコ政府の公式見解となっているが、実際にはトルコには、多くの民族がいて多くの言語が話されている。著者はそうしたトルコの民族事情、言語事情を十数年間に渡って、個人的に調査研究をしていた。トルコ政府にそのことを知られて今後は調査できなくなりそうだったが、後ろ盾を持たない一研究者の著者が、次の言語調査を行う許可を得るためにトルコ政府相手に毅然と交渉をして、その許可を勝ち取ったというエピソードは好きだな。
読了日:9月8日 著者:小島剛一
オーバーロード7 大墳墓の侵入者オーバーロード7 大墳墓の侵入者感想
まさかのアニメ化。次巻予告を見ると次回は番外編っぽい内容で、ナザリックやこの世界の日常などがかいま見れそうなので楽しみだ。しかし恐怖公(G)と配下のGが密集した部屋が見開きカラーで描かれているが、ちょっと力の入れどころ間違ってない(笑)。それからアインズがweb版とは違い、戦士としてもそれなりに洗練した戦いかたをしているのはちょっと嬉しいな。あと書籍版はweb版と展開が違うからフールーダが配下にならないのではと心配していたが、web版と同様に配下に加わったので一安心。
読了日:9月6日 著者:丸山くがね
絵はがきにされた少年 (集英社文庫)絵はがきにされた少年 (集英社文庫)感想
新聞記者である著者がアフリカ(主にアフリカの南部)でインタビューした人についての話や、南アフリカに住んでいた著者と家族が直面して実感した社会的な問題などについての話が書かれたエッセイ集。インタビュイーが体験した事件や社会的な問題を聞くと共に、インタビュイー個人についても掘り下げられていることで、アフリカのある一個人から見たその事件とかその土地に住む人々の感覚など、単なる事実の列挙や一般論の説明では伝わりづらい、その地の人々の複雑な内心や感覚が書かれている。
読了日:9月4日 著者:藤原章生

読書メーター


ラ/////5
小/////5/
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ノ///
歴//
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ライトノベル 5
小説 6
エッセイ 1
ノンフィクション 3
歴史 2
その他 2


 9月は下記の3冊がとても良かったので、読んだ数としてはいつもどおりだったが、結構良い月だったな。



9月に読んで特に面白かったもの


「保元・平治の乱 平清盛 勝利への道」

 誰がどういう理由でどのように動いたかということについて強い説得力を持って書かれていて、べらぼうに面白い。今年読んだ本でベスト5には必ず入るだろう本。
「戦争の世界史(上) 」
戦争の世界史(上) (中公文庫)

戦争の世界史(上) (中公文庫)

 色々と知ることが多く読んでいて面白い。ヨーロッパが世界を制した理由としては、武器の開発もあったけど、「教練」の効果がとても大きかった。
「トルコのもう一つの顔」
トルコのもう一つの顔 (中公新書)

トルコのもう一つの顔 (中公新書)

 トルコの少数民族について密かに調査・研究していたことを描いた、面白いノンフィクション。