なにかのご縁 2

内容(「BOOK」データベースより)

春が訪れて、縁結びに大忙しのゆかりくんとうさぎさん。しかしそんな彼らの前に、碧い目をした留学生の少年・ローランと、もふもふの茶色いうさぎ・ユリシーズが現れました。遠くフランスからやってきたその一人と一匹は、縁結びの修行のため、ゆかりくん&うさぎさんコンビと『縁結び勝負』をしたいというのです。貴族出身で始終偉そうな彼らに振り回されながら、ゆかりくんとうさぎさんは新たな『ご縁』の騒動に巻き込まれていき…。人と人との心をつなぐ物語、第2弾。


 著者の本は今まで1冊で完結する作品ばかりだったから、これも2巻が出るとは思っていなかったので2巻が出ると知りちょっとびっくりした。そしてどうやら、あとがきを見ると、この後もこの話はシリーズとして続いていくようだ。
 最近野崎さんの新刊が出ていないから(wiki見たら1年ぶりの新刊だったみたい)、久しぶりに野崎さんの文章を読んだけど、相変わらず笑わせようとして無理に盛り上げたりテンション高くするのではなく、キャラが取る少しおかしな行動などに大きな突込みをいれず、モノローグで平温でしれっと面白い表現でそれをいじるというユーモアは面白い。
 今回、ゆかりと同じくの縁が見える人であるローランと、じいというモフモフのうさぎのコンビが新たに登場。ローランは阿呆っぽくて偉そうに振舞ってはいるけど、純真で善意の人であるローランと、その幇間的・保護者的に彼を補佐するじい。
 ゆかりは人の縁結ぶ存在であるうさぎさんに切られた自分の縁を再度つなぎなおすために、うさぎさんに指示されながら、縁を結びつけるためにこそこそと動き回っているけど、それがストーカーだったり、危ない人だと思われている報われなさよ。まあ、実際そんなことしているやつがいたらそう思うけどさあ(笑)。
 だけど、その行為について問われても説明ができないから頭をかいてごまかし笑いを浮かべるしかなく、それを見た人に『こいつは関わり合いになってはいけないヤツだと思ってもらえたらしく』(P9)なんてことが繰り返されているのは、文章のこうした表現は野崎さんらしくて面白いけど、やっぱ主人公のゆかりを考えるとちょっと切ない。
 うさぎさん、縁を結びたいと強く思えばかなりの割合で光るだろうというのは、流石縁結びをこととしている存在であるな。なんかゆかりとの生活のせいか当初より太っているみたいな話を聞くとそんな凄い存在には全然見えないけど。
 今回は武者修行のように、良い縁結びになるために修行しに、同じ能力を持つゆかりがいる日本にやってきたローランが、縁結びに積極的な姿勢を示しているから、彼が物語を引っ張っていって、彼の性格もあって、ゆかりもそうした縁に関係したあれこれに関わっていて、あまり無理やり縁結びしなければならなくなるとかじゃなくて、ほとんどローランがメインとなっている縁の物語をゆかりが見るという形になっているので、あまりゆかりの行動に不自然な感じがなくていいな。それに、たとえば言いくるめられて、脅されてむりくり縁結びを強いられるという話が続くということになると、読んでいてそれが物語に主人公を巻き込むために簡単だから使っている便宜的なものだと思おうと自分に言い聞かせても、多少フラストレーションはたまるので、そうしたものが続かなくてよかった。
 ローラン、知己となった染入教授が自ら作った古代オリエントの道具のレプリカの展示会に関心ある人を集めようと、古代オリエントの縁という、ないものを探そうとして奮闘するが、そのとき彼のうさぎであるじいはそれを直接否定はしないが、老眼がきついから見えないと言い訳しているのに笑った。しかし最後まで読んだあとに、このじいに言葉を聞くと、実は自虐的なブラックジョークであることがわかり、改めてみると少ししんみりとした気分になる。
 ローランは縁を見る能力はゆかりより低かったため、ゆかりに指導されながら、縁を見る特訓をしているシーンはなんか好きだな。ローラン、じいが破綻しかけていた両親の縁を結びなおしてくれたこともあって、縁結びになりたいと思うようになった。
 じい、自分の存在がこの世との縁が切れることが近いのを知って、他の縁結びにローランをあわせようとしてゆかりとうさぎさんの噂を聞き、日本に来た。また、だからこそ彼が成長してくれて一本立ちしてくれることを祈った。そしてローランはそんなじいの最後のときに成長を見せる。そのことで、ゆかりとどうレベルまで縁が見えるようになる。
 しかしじいの話を聞くに、どうも縁結びという存在はきわめて稀な存在のようだ。
 最後、ゆかりが『これだけ酷い目に遭わされているのにまだうさぎさんに縁を結んでもらおうと思っているのが、もう判断が正常でない証拠じゃないか』(P312)と遅ばせながら気づいたことに、ついに気づいたかと喜びつつも思わず笑ってしまう。