10月に読んだ本のまとめ

2014年10月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:7772ページ
ナイス数:571ナイス

戦争の世界史(下) (中公文庫)戦争の世界史(下) (中公文庫)感想
19世紀、最新のヨーロッパ式装備で身を固めれば小部隊でもアフリカ・アジアの国家そのものと戦って勝てるようになる。そのためヨーロッパの部隊がその地域の国相手に戦場で戦っても、人件費はかわらず、小部隊なので補給品のコストもそれほど増えないため、駐屯地でじっとしている時に比べて大して余計に金はかからなかった。例えばアヘン戦争中でも英国の軍事予算はその戦争前とほとんど変わらなかった。それに加え1840年代以降ヨーロッパは戦略的レベルの通信と輸送をほぼ独占していたこともあって、帝国拡張のコストが極端に低くなった。
読了日:10月31日 著者:ウィリアム・H・マクニール
IT〈2〉 (文春文庫)IT〈2〉 (文春文庫)感想
前回から引き続き、相変わらず過去パートが非常に楽しい。今回ついに子供時代の友人たち、はみだしクラブの面々が現在のデリーで再会する。登場人物が団結して勇敢に化物相手に立ち向かっていて、彼らは子供の頃にその化物を犠牲者なく撃退したようなので、現在の彼らはまだ思い出せていないが、対処方法があるようだから、読んでいて悲観的にならず、むしろ楽観的に彼らならやってくれると思える。そうしたホラーではあるけどファンタジー、冒険譚的な印象を受ける作品でもあるからホラーは苦手だけど、とても面白く読めている。
読了日:10月31日 著者:スティーヴンキング
パスタでたどるイタリア史 (岩波ジュニア新書)パスタでたどるイタリア史 (岩波ジュニア新書)感想
ローマのパスタ、具材を包んでオーブンで焼いたり、蜂蜜やコショウで合えた細切りのものを揚げていた。そのようにローマのパスタは焼くか揚げるかして食べるもので、茹でられてはいなかった。その後、中世の初めの数百年はパスタのような手の込んだ調理は忘れられていた。パスタが再登場したのは10〜12世紀ごろ、そのころは肉やミルクで長時間茹でて粥のようになったものをその茹で汁とともに一種のスープパスタとして食べるのが主流。パスタを具材の一つと考えれば、ミネストラ(ミネストローネ)と連続性がある。
読了日:10月30日 著者:池上俊一
不肖・宮嶋空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記 (祥伝社黄金文庫)不肖・宮嶋空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記 (祥伝社黄金文庫)感想
コソボ紛争。体験談を知り合いに面白おかしく語っているような調子で書かれている。どうもノリが軽すぎるのと、著者がカメラマンということもあってか、現地の人に取材したエピソードみたいなものがなかったのはちょっと残念。しかし著者の行動を通して、ジャーナリストたちは戦地でどのように過ごしているか、どう取材活動をしているかだったり、政府のジャーナリストたちへの応対などをかいま見ることできたのは面白かった。
読了日:10月29日 著者:宮嶋茂樹
永遠の曠野 芙蓉千里IV (角川文庫)永遠の曠野 芙蓉千里IV (角川文庫)感想
シリーズ最終巻。今回国家規模で物語が展開されているのは、最終巻にふさわしいスケールの大きさでいいね。終章では20年近く時間が飛び、その間の過去と現在が語られて物語は終わる。最終的には物語は幸せな現在を迎えられたようで本当に良かった。ただ、その終章の現在がちょうど第二次大戦に入ったくらいの時期の満州国だから、その後のフミがどうなるのか想像できないな。しかし激動の時代でも彼女ならのりきってくれるだろう。しかしあとがきで「フミの中年期細腕繁盛記も書いてみたかった」と書かれると、それも読みたかったと思ってしまう。
読了日:10月28日 著者:須賀しのぶ
日本の路地を旅する (文春文庫)日本の路地を旅する (文春文庫)感想
中上健次の言うところの路地(被差別部落)を、本人も大阪の被差別部落出身である著者が、全国各地の路地を訪ね歩き、その土地の現在と歴史が描くことで、「日本の路地」の多様さと共通点、路地間の繋がりを書くルポルタージュ。第一章とエピローグでは家族のことが語られていて、エピローグで「アイデンティティを求める旅」と、解説では私小説的で「感傷旅行の情感」があると表現されているように、私的なものから出発したということもあって、単純に良質の紀行文としても読めるのがいいね。
読了日:10月27日 著者:上原善広
文庫 わが魂を聖地に埋めよ 上 (草思社文庫)文庫 わが魂を聖地に埋めよ 上 (草思社文庫)感想
西部開拓時代の裏面史。それは幾度となく繰り返される詐術と裏切り、そして相手に野蛮とレッテルを貼って行われた蛮行の歴史。主に1860年から1890年の期間が扱われるが、その時代は多くのインディアンの指導者が歴史・伝説となった時代であり、インディアンの自由が終焉を迎える黄昏の時代。最初は耐えがたき扱いを受けて蜂起しても軍の圧倒的な火力の前にいいようにやられていたが、1860年代半ば以降、少数の囮で軍をひきつけて攻撃という作戦を確立し、その作戦を巧みに用いることで軍隊相手に対抗して戦果をあげられるようになる。
読了日:10月26日 著者:ディー・ブラウン
理系の子 高校生科学オリンピックの青春 (文春文庫 S 15-1)理系の子 高校生科学オリンピックの青春 (文春文庫 S 15-1)感想
アメリカで盛んな中高生が研究を出品し、その成果を競うコンテストであるサイエンス・フェア。その中でも最大の大会である国際学生科学フェア(ISEF)は出場者の5人に1人が特許を出願し、研究のレベルも大学院・博士課程の水準を上回るものが多いハイレベルなもの。この本では、そのISEFの2009年大会に出場する有力な学生6人と、過去のISEFの有名な出場者の5人に焦点を当てて、各人に一章ずつ用いて、研究や学生のそれまでの歩みなど、科学に魅せられた学生たちのストーリーが書かれているが、そのどれもが興味深く面白い。
読了日:10月24日 著者:ジュディ・ダットン
IT〈1〉 (文春文庫)IT〈1〉 (文春文庫)感想
26年、27年ほどのサイクルでデリーの街に登場する謎の化物をめぐる群像劇。かつてデリーの町で子供時代を過ごした仲間たちは、そのかつての仲間の一人からの怪物が再び現れたことを電話で知らされ、それぞれ封じ込めていた過去(化物の記憶、子供時代の記憶)を思い出し、彼らは過去の約束を守るため、運命に導かれるように日常を捨て、化物と対峙するために故郷デリーへと向かう。4章以降はそんな彼らの子供時代の出来事が書かれていて、それがとても面白い。こういうリアリティがあって魅力的な子供時代を描いている作品は大好き。
読了日:10月23日 著者:スティーヴンキング
地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721))地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721))感想
地政学、20世紀初頭に起こった学問。地政学創始者マッキンダーは英国の人。シー・パワー(海上交通を維持し、保護する機能)とランド・パワーを対比して論じた。ユーラシア大陸の心臓部(ハートランド)であるウラル以西の東欧は、世界全体の運命を左右する動きの中心。マッキンダーの結論の本人自身による要約、『東欧を支配する者はハートランドの死命を制する。ハートランドを支配する者は世界島の運命を決する。そして世界島を支配する者はついに全世界に君臨するだろう』(P32)。世界島とはユーラシア大陸+アフリカ大陸のこと。
読了日:10月21日 著者:曽村保信
地雷を踏んだらサヨウナラ (講談社文庫)地雷を踏んだらサヨウナラ (講談社文庫)感想
1973年戦地カンボジアでの取材中に26歳で亡くなった戦場カメラマンの写真と書簡(親や友人、恩師との)、未発表原稿が収録。その日の朝に戦場に写真を撮りに出かけ、夕方には戻ってこれるほど、戦場にほど近い町シリムアップでの人々の生活が書かれている。そして「カンボジア報告」と題された未発表原稿3篇は戦地の出来事を詳細に描いたレポだったり、書簡を読んだときに気になった著者の友人ロックルーの結婚についての詳細な話があって興味深い。
読了日:10月20日 著者:一ノ瀬泰造
雪〔新訳版〕 (下) (ハヤカワepi文庫)雪〔新訳版〕 (下) (ハヤカワepi文庫)感想
下巻ではKaは場当たり的に、さまざまな政治勢力のために協力したことでイペキや周囲の評価、そして8年後には自身の命を失うことになる。<群青>の解放と引き換えに、彼の愛人で連続自殺をとげたスカーフの少女たちの教唆者的な存在と目されているカディーフェが舞台に出演することになる。その劇中でスナイ・ザイムは舞台上で斃れ、同日に雪での交通の切断が解消されたことでクーデターも終わりを迎える。最後の章はクーデター後のことが記される長いエピローグ。こういった多くの登場人物のその後が書かれる長いエピローグというのは結構好き。
読了日:10月19日 著者:オルハンパムク
デュラララ!!SH×2 (電撃文庫)デュラララ!!SH×2 (電撃文庫)感想
1巻では八尋の背景について書かれていたが、今回は新高校生組の他の2人久音と姫香の背景が書かれる。SHは八尋が静雄級に強いから戦闘シーンが面白くていいね。麗貝と八尋の戦闘シーンは、八尋が単なる力まかせの攻撃をするのではなくて色々な攻撃を繰りだして、かなり強いらしい麗貝が避けきれなくなるという展開は格好良くて好きだし、最後の八尋がセルティから渡された影でできたマスクと布地をまとって変身ヒーローのように登場して、両陣営をまとめてぶちのめして、うやむやにする力技の解決も悪くない。
読了日:10月17日 著者:成田良悟
新約 とある魔術の禁書目録 (11) (電撃文庫)新約 とある魔術の禁書目録 (11) (電撃文庫)感想
今回は「とある科学の超電磁砲」で、強い存在感を放っていた食蜂が主人公な巻。長らく世界規模の話が続いていたが、個人的にはやっぱり今回のような特定の誰かを救う物語くらいのスケールの話のほうが好きだな。以前からそうかもとは思っていたので、食蜂と上条が彼が記憶を失う以前に親交があったことがついに明らかにされて、すっきり。そして食蜂のヒロイン力が爆上げ。元々好きなキャラだったけど、今回のエピソードをみて叶わぬことと知りながらも上条が誰かと結ばれることが描かれるなら彼女と結ばれて欲しいと思ってしまう。
読了日:10月16日 著者:鎌池和馬
アクセル・ワールド (17) ―星の揺りかご― (電撃文庫)アクセル・ワールド (17) ―星の揺りかご― (電撃文庫)感想
本編はちょっと短めで、巻末に本編と関連した内容の短編が一つ収録。前回で長かった一連の戦闘は終わったので、今回は小休止的な日常回。久しぶりの日常回は楽しめたし、そしてストーリー的にも次の戦いへ向けて方針を立てたり、仲間が増えたりと序盤からの敵である加速研究会戦に向けて物語が動き始めている。ようやく加速研究会戦への見通しが利いてきて、それに向けて着々と準備を進めているので、ちょっと前までの永遠に終わらないのではないかという感じは消えて、面白くなってきた。
読了日:10月14日 著者:川原礫
塩の道 (講談社学術文庫)塩の道 (講談社学術文庫)感想
解説によると本書に収録されている三篇は元は講演ということで、語り口調でわかりやすい文章。小規模に塩の生産をしていた多くの場所では、木を流して流した木で塩を焼いて奥に帰っていった。こうした時に使われた道が最初の塩の道。新潟の山中のある村の例をみると、それが更に発展して木を多く流す代わりに海岸の人に塩を焼いてもらうようになり、そして江戸時代に安い塩が瀬戸内海から入ってくるようになると、流した木を薪として売り、その代金で塩を買うようになった。そういう風に自家生産→委託生産→交換と塩の入手方法が変わっていった。
読了日:10月13日 著者:宮本常一
勝ち続ける意志力 (小学館101新書)勝ち続ける意志力 (小学館101新書)感想
格闘ゲームの世界は全く不案内だけど、著者の想像以上のゲームに対するストイックな取り組み方を通して、格闘ゲームのトップの世界のすごさを知る。得意な形に縛られると、プレイの幅が狭くなるためスタイルを作らないし、「ウメハラの良さはここ」と指摘されるとそうしたプレイは極力捨てる。相手の弱点をつくのではなく、むしろ相手の長所となる部分で勝負を挑む。究極的には有無を言わせぬ絶対的な強さで誰が相手でも勝つということが理想とするような、ストイックに絶対的な力量を重視する姿は剣豪とか武道の求道者みたいで格好良い。
読了日:10月12日 著者:梅原大吾
なにかのご縁 (2) ゆかりくん、碧い瞳と縁を追う (メディアワークス文庫)なにかのご縁 (2) ゆかりくん、碧い瞳と縁を追う (メディアワークス文庫)感想
野崎さんの本は今まで1冊完結の作品ばかりだったから、これも続きが出るとは思っていなかったので2巻が出てちょっとびっくり。今回、主人公のゆかりとうさぎさん以外の新たな縁結びローランと、執事のようなうさぎのじいというコンビが登場。今回もゆかり視点ではあるけど、物語はそんな彼ら主従がメインとなって動き、その2人のコンビのキャラも良かったので面白かった。あとがきを見ると、この後もこの話はシリーズとして続いていくようだけど、続けば続くほど、ゆかりの縁は長く断ち切られたままとなるのではないかという嫌な予感が(笑)。
読了日:10月10日 著者:野崎まど
ログ・ホライズンTRPG リプレイ ごちそうキッチンと病の典災ログ・ホライズンTRPG リプレイ ごちそうキッチンと病の典災感想
リプレイはてっきり単発のものだと思っていたので続きが出たのは素直に嬉しい。今回も2つのセッションが収録。また、2つ目のセッションの最後の方で、今後のための伏線を入れると、マスダさんのPC芝村さんが発言していて、今後の続刊も期待できそうなのも嬉しい。今回はアキバの街が舞台ということで、原作キャラが登場してきて楽しい。そして前回よりも戦闘シーンがギリギリ感があるスリリングな戦闘となっているのも面白くて良かった。また、特殊なルールのもとでの料理作成ミッション「NAGI'Sキッチン」も面白かった。
読了日:10月9日 著者:橙乃ままれ,七面体工房
中世騎士物語 (新紀元文庫)中世騎士物語 (新紀元文庫)感想
一応12世紀にフランスに生まれた騎士ジュラールという架空の人物の生涯を追いながら中世の様々な物事について説明されるパートもあるけど、そうしたジュラールとか物語とか関係なしに普通に用語ごとに説明されていることの方が多いので、あまり「物語」という感じはしないかな。武器・防具や戦術、紋章などの説明は、ほどよく詳しい説明でわかりやすく面白かった。あと、そうした説明の際には特に図やイラストが豊富なのはありがたかった。
読了日:10月7日 著者:須田武郎
ログ・ホライズン 8 雲雀(ひばり)たちの羽ばたき【ドラマCD付特装版】ログ・ホライズン 8 雲雀(ひばり)たちの羽ばたき【ドラマCD付特装版】感想
今回は、今まで描かれることが少なかった理不尽に飛ばされてきたこの異世界に適応しきれなかった人間たちについて多く語られる。彼らの行動が相容れないものがあっても、彼らの理屈も否定すべきものではなく、正しいものだ。適応できなかった人間の一人であるロンダークの行動をにゃん太は非難したけど、その後ロンダークが語った考えを理解して、共感もしつつも、それでもなおも言葉よ届けと祈るように語りかけているにゃん太班長が格好良い。あと、イラストのロエ2が思っていた以上にシロエでちょっと笑った。
読了日:10月6日 著者:橙乃ままれ
もの食う人びと (角川文庫)もの食う人びと (角川文庫)感想
バングラディシュ・ダッカ、残飯が売られている。日本にも明治時代には残飯が売られるようなことがあったということは知っていたが、そうした情報だけでなく、実際にそうしたものを食べているところが書かれるとやっぱりちょっと衝撃を受けるな。冷戦終結後に失脚したポーランド前大統領(当時)ヤルゼルスキに食事について聞いたら贅沢な食事を忌避して清貧で質素な食事をとっているが、最近になってテレビを見ながら菓子を食べるようになったことを恥ずかしげに告白しているのは、子供みたいに可愛らしくてなんだかほっこり。
読了日:10月5日 著者:辺見庸

読書メーター

ラ/////5
小////
エ//
ノ//
歴////
そ/////5


「わが魂を聖地に埋めよ 上」歴史換算。「地雷を踏んだらサヨウナラ」その他換算。「ログ・ホライズンTRPG リプレイ ごちそうキッチンと病の典災」その他換算。「中世騎士物語」歴史換算。





ライトノベル 5
小説 4
エッセイ 2
ノンフィクション 2
歴史 4
その他 5

 22冊でも、いつもが20冊弱だからわりと読めたかなという感覚になってきているのがちょっと悲しい。もっと読みたいのに。


10月に読んで特に面白かったもの
「IT〈1〉」「IT〈2〉」

IT〈1〉 (文春文庫)

IT〈1〉 (文春文庫)

IT〈2〉 (文春文庫)

IT〈2〉 (文春文庫)

 まだ半分しか読んでいないが、ちょっと今までホラーだからとキングを読んでいなかったことを後悔するほど面白い。子供時代を描いた過去パートが面白いし、抜群に好きだ。
「永遠の曠野 芙蓉千里IV」 シリーズ最終巻読了。なにはともあれフミが結果的に幸せな現在を手に入れられて良かったよ。それに今巻はスケールも大きくて面白かった。
ログ・ホライズン 8 雲雀(ひばり)たちの羽ばたき」 にゃん太班長がロンダーグに深く共感しているということがいいな。
「日本の路地を旅する」
日本の路地を旅する (文春文庫)

日本の路地を旅する (文春文庫)

 中上健次の言うところの路地(被差別部落)各所の歴史と現在を見る。ニュートラルなバランスのとれた視点だから、単純に紀行文としても面白い。