12月に読んだ本のまとめ

2014年12月の読書メーター
読んだ本の数:23冊
読んだページ数:8773ページ
ナイス数:615ナイス

ゴプセック・毬打つ猫の店 (岩波文庫)ゴプセック・毬打つ猫の店 (岩波文庫)感想
「ゴプセック」と「毬打つ猫の店」の中編2編が収録。wikiを見ると、バルザックは自作をいくつかの分類にわけたようだが、これはその中の風俗研究の中の「私生活風景」という分類に入るようだ。社会的に大きな事件は起こらず、人間生活の悲劇を活写した作品。そうした時に起きる、さまざまな人の行動や心の動きなどを丁寧に描いているのは読んでいて興味深い。個人的に「毬打つ猫の店」に登場する、昔堅気でしまり屋だが身内には結構甘いところがある大きな商家の主のギョーム氏が好き。
読了日:12月31日 著者:バルザック
誘拐 (ちくま文庫)誘拐 (ちくま文庫)感想
1963年に起こった有名な誘拐事件の顛末を書いたノンフィクション。捜査関係者や被害者などの個性・性格がわかるエピソードが書かれていることや、当時の状況や犯人小原保の背景が細かく書かれているのは、いいね。背景を見ることで残酷なことをした犯人だが、悪人というよりも悲しい人だと感じる。ラストの小原を自供させた時の平塚刑事の取調べ、小原が口にした証言のほころびを指摘して動揺させて、そこから一気呵成に、今まで出していなかった平塚刑事自ら再調査してつかんだ事実をつきつけていくクライマックスシーンは迫力あって好き。
読了日:12月31日 著者:本田靖春
兵士を見よ (小学館文庫)兵士を見よ (小学館文庫)感想
自衛隊の人たちを描くノンフィクション「兵士」シリーズ2作目。今回は航空自衛隊のことが、パイロットを中心に書かれる。飛行機に魅入られた人々の並々ならぬ愛情と情熱が書かれていて面白い。強いGがあり、身体への負荷が重いため戦闘機のパイロットでいられる年月は長くても17、8年。そして同期の6、7人に1人が訓練中の事故で死亡しているくらい、高い危険性がある。だが、パイロットは純粋に戦闘機という最高の能力のマシンに乗れるから、危険あっても充実している、好きなことをやっている感じがあっていいね。
読了日:12月31日 著者:杉山隆男
フォークの歯はなぜ四本になったか 実用品の進化論 (平凡社ライブラリー)フォークの歯はなぜ四本になったか 実用品の進化論 (平凡社ライブラリー)感想
原題は「実用品の進化論」。フォークやペーパークリップ、テープなどの具体例を通して見る、様々な実用品が現在の一般的なデザイン(形)になるまでの歴史。モノの(物理的、心理的、機能的、文化的な)失敗による欠点(不便さ)を解消するために、改善・改良されて別の形が生まれるが、その欠点を解消するという目的のために考えられる形は一つではない。最良の解決策を選定するのは決断と妥協の問題であり、『究極的には、望ましくない度合いが最も低い選択肢はどれかで決まる』(P307)。
読了日:12月30日 著者:ヘンリー・ペトロスキー
オーバーロード8 二人の指導者オーバーロード8 二人の指導者感想
中編2編、エンリを主役にした「エンリの激動かつ慌ただしい日々」とナザリックの日常を描いた「ナザリックの一日」が収録。2つの中編は同じシーンを別視点で描いたところがあるなど、ちょっとリンクしているところもある。エンリ主役の中編は、web版でも外伝として掲載されていた短編をもとにしたもの。web版よりもアインズのエンリに対する扱いとその理由が納得できるものとなっているのはいいね。「ナザリックの一日」今まで書かれてなかったナザリックのメンバーや、彼らの日常が書かれているのは嬉しい。
読了日:12月28日 著者:丸山くがね
サン・キュロットの暴走 小説フランス革命 13 (集英社文庫)サン・キュロットの暴走 小説フランス革命 13 (集英社文庫)感想
王の処刑により、イギリスまでが対フランス戦争に参戦し、フランス包囲網が強固になる。そうした事態を受けて、議会は30万人という大規模徴兵をして対抗しようとするが、それに反対する地方で農民と王党派貴族による反乱(ヴァンデの乱)が起きる。そうした非常時において国民公会のもとに革命裁判所が設立され、議会の権力強まる。ジロンド派との繋がりが強いデュムーリエ将軍にクー・デタの疑いが強くなった時に、ダントンはこの非常時には挙国一致が必要で、それにはジロンド派の協力が不可欠との思いから彼を庇う姿勢を見せる。
読了日:12月27日 著者:佐藤賢一
耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)感想
シリーズ最終巻。レイチたちの他愛もない会話とか、寒地の冬の描写とか、そうした日常的なシーンが面白くて好き。しかしネルリとレイチが一晩を共にするシーンについて、あとがきで編集者に尋ねられたときは想像に任せると誤魔化したといっていたが、改めて読み返したらそうとしか読めなかったといっているが、何故あれでどっちつかずのシーンと誤魔化せると思ったのかが謎(笑)。
読了日:12月26日 著者:石川博品
夜市 (角川ホラー文庫)夜市 (角川ホラー文庫)感想
100ページほどの中篇2つ、「夜市」と「風の古道」が収録。ちょっとした不気味さもあるけど魅力的な、民話のような雰囲気のある異界の描写はいいね。「夜市」不定期に開かれる道を通り、異界の夜市へ向かう男女。そこでは買い物をしなければ帰ることができないという世界の決まりごとがある。最初に予想できる、かつて売ってしまった弟と同行の女性との交換というブラックなオチにせず、そこから一ひねり、二ひねりして、ちょっと切ない感じもある後味の良い終わり方で好き。そして弟が語る自身の数奇な体験(冒険譚)もとても面白い。
読了日:12月25日 著者:恒川光太郎
ドン・キホーテ〈前篇2〉 (岩波文庫)ドン・キホーテ〈前篇2〉 (岩波文庫)感想
将来を約束していた女性の裏切り(実際は違ったようだが)の打撃で狂気につかれ世を捨て、山へ入ったカルデニオ。ドン・キホーテはそんなカルデニオの姿を見て、理想の騎士であるアマディスも恋の絶望のために狂乱していたことを思い出したのか、自分もそうしなければと思って(既に狂人だが)狂する振りをしようと思うといって、従者サンチョに自分がいかに思い姫への恋慕のために狂っているかを見て、それを思い姫に伝えよという。サンチョは適当にでっち上げれるから見たくないと拒んでいるのに、見ていけと熱心に何度もすすめていることに笑う。
読了日:12月24日 著者:セルバンテス
人類は衰退しました 平常運転 (ガガガ文庫)人類は衰退しました 平常運転 (ガガガ文庫)感想
短編集。前半には書き下ろしで本編完結以後のエピソードをいくつか、後半は店舗特典やアニメBD・DVD特典が初出の短編を収録。「おふたりさまで、業務活動記録」助手さんと「わたし」ちゃんの二人で、里の娯楽施設の視察という建前でデート、順調に二人の関係が進展しているのを見れるのは嬉しい。特典が初出の短編は休暇中の「わたし」が旅行中に滞在したさまざまな変わった村の事情が語られていて、キノっぽい。しかしこの世界でも観光で食えている村だったり、昔の超技術の名残が現在も用いられているところが案外あることは少し意外だった。
読了日:12月23日 著者:田中ロミオ
<中東>の考え方 (講談社現代新書)<中東>の考え方 (講談社現代新書)感想
わかりやすい中東を主軸とした近現代国際政治史。時系列ではなく、各章パレスチナ問題について、冷戦時代について、イスラーム主義についてなどのテーマごとに、近代から今日の状況となるまでを扱っているので読みやすい。1990年頃、パレスチナ人労働者がストを数日行ったら誰もごみ収集するものがいなくなって、国中がゴミだらけになったと言われるほど、イスラエル経済はその底辺を占領地住民によって支えられていた。イスラエルパレスチナ、互いに攻撃しているからあまり交流がないのかと思ったら、経済的なところでは案外交流があるのか。
読了日:12月22日 著者:酒井啓子
それをお金で買いますか (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)それをお金で買いますか (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
現在では市場主義が圧倒的に勝利を収めて、多くのものがお金で買えるようになっている。しかし市場主義を導入すべきでない、売りに出されると市場主義が道徳を締め出す結果となるモノや場などが存在する。多くのものが金銭で買えるようになっている現在において、そのように市場主義が道徳を締め出すことになるため金銭での交換に歯止めをかけるべきものは何かということを改めて考える。訳者あとがきにあるように、ややもすると時代遅れにも感じられるような議論ではあるが、実例を豊富に示し、その議論に説得力を与えている。
読了日:12月21日 著者:マイケル・サンデル
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (1) ―スクワッド・ジャム― (電撃文庫)ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (1) ―スクワッド・ジャム― (電撃文庫)感想
原作ソードアート・オンラインで扱われていたBoB(個人戦)ではなく、スクワッド・ジャム(チーム戦)という大会を新たに設定し、その大会について描く。主人公レンは友人ピトフーイにその大会のことを知らされ、ピトフーイ本人はリアルの事情で出れないが彼女の友人エムと組んで大会に参戦することに。その大会の最後の勝ち残り2チームで戦われたラストバトルでは、主人公レンが危機一髪の連続だが、単独で巧みな連携を見せる敵チーム相手に機転と身軽さで逃げながらも相手を一人二人と倒していくという奮闘ぶりを見せていて熱くて面白い。
読了日:12月19日 著者:時雨沢恵一
ドナルド・キーン自伝 (中公文庫)ドナルド・キーン自伝 (中公文庫)感想
日本との関わりを中心に書かれた自伝。1章では少年時代から戦時中・海軍の通訳(語学将校)として働いていたときまでことが、2章では除隊してからのケンブリッジ留学や日本(京都)留学(53〜55)していた頃が、3章では帰米後から三島・川端の死までのさまざまな小説家との交流やこの頃より始まった著者の日本学者としての本格的な活動の模様が描かれる。そして最後の4章はエピローグ的な章で、それ以後の著者の書いた本についての話などが主に書かれて、それ以後の新たな出会いや交流についてはあまり書かれていない。
読了日:12月18日 著者:ドナルドキーン
ドウルマスターズ (2) (電撃文庫)ドウルマスターズ (2) (電撃文庫)感想
今回で龍一は事故で死亡したと見せかけて無事(?)ゲノムスに合流して、本来の敵・味方関係がきっちりとわかれて、これでスタート地点について序章も終わりという感じ。今のところは主要キャラクターと世界設定の大まかなところが語られたというくらいで本格的な物語はまだまだこれから。物語が動き出したら面白くなりそうなので今後が楽しみ。
読了日:12月16日 著者:佐島勤
臨死体験〈下〉 (文春文庫)臨死体験〈下〉 (文春文庫)感想
脳内現象だからか、解釈でそうなっているのかはわからないが、臨死体験でよく登場するイメージは地域・時代ごとに違う。欧米や日本だけでなく、インド、パプアニューギニアでの臨死体験のエピソードが紹介されているが、特にパプアニューギニアの経験者が語った臨死体験のエピソードは他とかなり色合いが異なっていて面白い。感覚遮断すると、人は夢・幻覚をあたかも現実の記憶と同じ鮮明さで記憶してしまい、「実感として明らかな」幻覚を見ることが起きる。人間は必要な感覚刺激がないと現実と非現実の識別能力を失う。
読了日:12月15日 著者:立花隆
ソードアート・オンライン プログレッシブ (3) (電撃文庫)ソードアート・オンライン プログレッシブ (3) (電撃文庫)感想
今回はβ版から変わった街や新要素である船を使った移動、クエストなど真剣にゲームをやっている中での楽しさやワクワクドキドキみたいなものが感じさせる巻で良かった。今までの進行ペース的にSAOクリアの75層までいかなそうで、本編でアスナのモノローグで『ゲーム初期は、すぐそばを黒衣のソロプレイヤーが歩いていたのだ』(「SAO 11」P171)とあることも考えると、二人がパーティを一旦解散したあたりまで書いて終わることになりそうだ。そして、その区切りはエルフ抗争のキャンペーン・クエストの完結あたりになる予感がする。
読了日:12月14日 著者:川原礫
物語の体操 物語るための基礎体力を身につける6つの実践的レッスン (星海社新書)物語の体操 物語るための基礎体力を身につける6つの実践的レッスン (星海社新書)感想
文章の書き方ではなく、その前の物語の作り方について書かれた本。物語の構造の話とか多くて面白い。24枚のカードを使った簡単におはなしのあらすじ(プロット)を作る方法。それは頭の体操、筋トレ的に100個とか作ることが推奨される。そこまでやらないにしても、たまにこの方法を使ってちょっと筋を作ってみるのは面白そう。あと、著者の生徒が書いたカードを使って作ったり、有名な物語の構造を換骨奪胎して作ったあらすじや著者の作を舞台として作らせた物語の筋などが掲載されていて、そうした実際に作った例を読むのも面白い。
読了日:12月12日 著者:大塚英志
ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)感想
騎士道物語を読みすぎて正気を失い、「遍歴の騎士」として「冒険」の旅に出たドン・キホーテがあちこちで巻き起こすさまざまな騒動を描いたあまりにも有名な小説。想像以上に読みやすく、単純に読んでいて楽しい作品で嬉しい。ドン・キホーテは痛い目にあうこともあるが、それは概ね自業自得なもので、決して理不尽なものではないのがいいね。従者サンチョ・パンサ、旅に出た初日にドン・キホーテは風車を巨人と思い込み突撃した姿を見ているのに、ドン・キホーテを信じているという鈍さはいい味だしてる。この主従コンビ、好きだ。
読了日:12月11日 著者:セルバンテス
武士の絵日記 幕末の暮らしと住まいの風景 (角川ソフィア文庫)武士の絵日記 幕末の暮らしと住まいの風景 (角川ソフィア文庫)感想
石高10万石の忍藩(現埼玉県行田市)の下級武士・尾崎石城が文久元年から二年(1861〜2年)にかけての半年のことを描いた絵日記に書かれている作者の生活を通して、国元の城下町(地方都市)に暮らす当時の下級武士の日常を見る。絵日記を見ると意外にも武士と町人の親密な付き合いが普通にされていたようで、絵日記には仲の良い町人が『武士の家の茶の間に上がってこたつで団らんをしたり、座敷での酒宴に参加することも多い』(P311)ことや引越しの祝いに来て台所仕事まで手伝っていることなどが書かれている。
読了日:12月9日 著者:大岡敏昭
共和政の樹立 小説フランス革命 12 (集英社文庫)共和政の樹立 小説フランス革命 12 (集英社文庫)感想
今回はフランス革命の頂点ともいえる王の処刑までが書かれている。8月10日蜂起での王宮占拠の際の戦闘で血が流されたこともあって、王家は幽閉。パリでは人民裁判と称して、宣誓拒否僧などへの虐殺行為(9月虐殺)が繰り広げられるが、法務大臣ダントンは黙認。ロベスピエールはそのパリの民衆の暴走を利用あるいは同調して、政敵ジロンド派の人間を処刑しようとするが、それはダントンに止められる。そして新たに選挙がなされ、国民公会(新議会)がはじまり、議会初日に王政廃止が決定された。
読了日:12月8日 著者:佐藤賢一
出星前夜 (小学館文庫)出星前夜 (小学館文庫)感想
島原の乱が題材とした小説。そうはいっても天草側でなく、島原側の人物に焦点を当てているため天草四郎はあまり出てこず、主役は島原地方で決起を主導する元有馬の水軍衆で帰農した島原藩有家村鬼塚の庄屋・鬼塚監物と同村の若者・寿安こと矢矩鍬ノ介の2人。個人的には最近の作になるほど合わなくなってきているなあ。主役たちをしっかりと活躍させてくれるのはいいね。あと「黄金旅風」の主人公格・末次平左衛門が思いがけず登場しているのはちょっと嬉しい。
読了日:12月7日 著者:飯嶋和一
花散らしの雨 みをつくし料理帖花散らしの雨 みをつくし料理帖感想
冒頭に地図があるのは色々とイメージできていいね。今回は前回の火事のようなひどい妨害がなく、わりと平穏でよかった。まあ、澪は「雲外蒼天」で苦難が多いと予想して、前回の火事クラスのものが来ると身構えていたからそう感じただけかもしれないけど。今回はつる家が新規に雇ったふきや新たに馴染みとなった客の戯作者・清右衛門などの新たなレギュラーキャラが登場。そしてピンチヒッター的につる家で働いた、りうおばあさんは江戸っ子らしい歯切れのいい口調と老いを感じさせない働きぶりで、いいキャラしているな。
読了日:12月4日 著者:高田郁

読書メーター

ラ/////5/
小/////5///
エ/
ノ///
歴/
思/
そ///


ドナルド・キーン自伝」エッセイ換算。


ライトノベル 6
小説 8
エッセイ 1
ノンフィクション 8
歴史 1
思想・宗教 1
その他 3


12月に読んで特に面白かったもの
「夜市」

夜市 (角川ホラー文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)

 ちょっと不気味な、民話的なムードが好み。変に文飾しておどろおどろしくさせないで、平明な文章で書いているのもとっつきやすくていいね。
「誘拐」
誘拐 (ちくま文庫)

誘拐 (ちくま文庫)

 悲しい犯人。
「物語の体操 物語るための基礎体力を身につける6つの実践的レッスン」 実際にあらすじなどを作って遊びたくなってくる。