森見登美彦の京都ぐるぐる案内

森見登美彦の京都ぐるぐる案内 (新潮文庫)

森見登美彦の京都ぐるぐる案内 (新潮文庫)

そうだ、京都を遊ぼう。オールカラー、森見作品の名場面へあなたをご招待。エッセイ2篇収録!

京都――小説家・森見登美彦を育んだ地であり、数々の傑作の舞台である。『太陽の塔』『きつねのはなし』『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』……。各作品の名シーンと、サカネユキ氏による叙情的な写真の競演。そして、現実と妄想が螺旋(らせん)を描いて交わる、登美彦氏の古都愛溢るる随筆二篇を収録。本書をポケットに、あなたも、不思議で奥深い、この町の魅力に触れてみませんか?
(新潮社 ホーム > 新潮文庫 > 書籍詳細:森見登美彦の京都ぐるぐる案内 より)


 森見作品の主な舞台である京都の、森見作品に登場した場所についてカラー写真を載せて紹介しているガイド本。その他には、京都の町と文学についてのエッセイとこの本に掲載されている写真を撮ったときの京都取材(森見さんが写った写真が一杯ある)についてのエッセイという、2本のエッセイが収録されている。
 そしてこの本では全編においてカラーの写真をふんだんに載せられている(そのため、普通の文庫よりも紙質がいい)。そして、そうした写真の横にはその場所が舞台とした森見作品の場面の文章を引用してあり、引用した場面以外でも森見作品のどういった作品のどの場面においてその場所が使われているかについても書かれている。
 また、地図でこの本で写真つきで紹介された場所がどういった位置関係になっているかがこの本のどこで紹介されているかと言うページ数と共に示されているのは今後森見作品を読む時に場所が明示されたときに、どういった場所にあるのかについてイメージしやすくなるからありがたい。ただ、そういった読み方をするのに索引があって地名で引くことができたら更にありがたかったなとも感じるが。
 京都の地理もその場所がどういった雰囲気のところかについて知らないので、今後森見作品を読んだり読み返したりする際の副読本として使えそうな本。
 エッセイ「登美彦氏、京都をやや文学的にさまよう」での『谷崎潤一郎の文章がとても好きだが、しかしあんまり良い読者ではなかった。文章を心地よく読んだ感触だけ覚えていて、それ以外には何も覚えていないのである。』(P72)という文章は、文学作品で気に入ったけど感想はろくにいえないという作品があって、今までそういう小説のことを好きだといっていいのか悩んでいたが、そうした感じについてこうやって文章化されたものを見て、そう、そういった感じ!と嬉しくなったし、それでも「好き」と言っているのをそうしたものでも好きだといっていいんだと思えるようになった。それに、そういう感覚を覚えるのは私だけではないし、森見さんのような人でもそうしたことがあるとわかったことにも安心。