RPF レッドドラゴン 2 第二夜 竜の爪痕

内容(「BOOK」データベースより)

世界の富を一手に握ると噂される不死商人・禍グラバとの合流を果たした“混成調査隊”のメンバーは、様々な思惑と謀略の渦巻く中、島の守り神たる“赤の竜”が狂乱した原因を突き止めるべく竜の棲まうオガニ火山へと歩を進める。そこには、かつてない“激戦”が待っていた!救うのか。滅ぼすのか。それとも、“革命”か―。TRPG(テーブルトークRPG)の手法を用いて物語を描き出すRPF(ロール・プレイング・フィクション)企画第一弾、虚淵玄×奈須きのこ×紅玉いづき×しまどりる×成田良悟が紡ぎ上げる奇跡の物語。これぞ五人の英雄が織りなす、最高の冒険譚!


 1月に1巻と同時刊行であった文庫版2巻も1巻から、あまり間を空けずに読了。やっぱこういうTRPGリプレイ形式はよみやすいな。
 しかし、てっきり2月に3巻が出るものだと思っていたが、どうも3月に3・4巻が同時発売となるようだ。2月刊はないようだし、そういう出し方にして毎月刊行にしないってことは星海社文庫って毎月刊行とかではないのかなとも思ったけど、それ以前はどうやら毎月出ているようだし、それなら2015年から隔月刊行に変わったのということなのかな? よく知らないけど。
 相変わらず、しまどりる忌ブキの逡巡する少年主人公ロールや、虚淵玄婁震戒の曲者感ただよう暗殺者ロールは、メタ発言がないせいかPL・PCで温度差がないように見えるから、なんか好きだなあ。
 冒頭、巻末の「PLAYER COMMENT」にも『初っぱなから婁震戒と相対した私の心は「あれ? 答えを一言でも間違えたら殺られる?」と震えが止まらない状態でした。』とあったので、前回の感想でも書いたけど、やっぱりそういう緊張感、焦りみたいなものがあった初登場シーンのしちゅえーしょんだったのね(笑)。
 しかし冒頭から婁震戒はまじめにやっていて、おどけてもいないし、行動もPC(プレイヤーキャラクター)である婁や他のこの世界の登場人物からしたら全く不自然じゃない行いだけど、PLや読者からしたら非常に笑えるプレイング、虚淵さん上手いなあ。
 前回から層だけど、スアローというキャラ気づいていないのに、PCの奈須さんが婁の危険性・怪しさをスアローに気づかせるためになんとかしようとしているが、既に婁が怪しいと踏んでいるかのような行動だから、なんかスアローの動きちょっと不自然になっている気がしてならない。そういうのはスアローにメタで得た情報を勘みたいなものでゲームに反映できるみたいな特別な能力があって、なんだか分からないけどこうしようと感じてならないというのならともかく、どうしても個人的には違和感あるなあ。
 まあ、純粋にシリアスなストーリーとしてみるならちょっと引っかかるというくらいで、TRPGリプレイとしてみるなら特別気にならないし、相手を把握しているから、なんとか怪しませようとPL側で頑張るが、全然気づけないキャラクター・スアローというのはそれはそれでちょっと面白くないこともないから別にいいといえばいいのだけど。
 PLは実際のところを知っているのに、先んじて誤情報を婁が共に旅してきた面子につげることで笑いを取りつつも、PCサイドではスアローの反応をうかがうというまじめな目的がある。こうしたシリアスなシーンでも、PLたちの(一同爆笑)とか反応が示されることで、過度に緊張しすぎずに済み、物語を楽しみつつもあまり肩肘張らずに読めるのが、こうしたリプレイ作品のいいところよね。
 こういう禍グラバ、知性判定をクリティカルして、「いろいろまずいことまで知って」いることになった見たいな、こういう予想外が面白い。うーん、今後の展開までしかとは覚えていないけどここで得た情報って、この巻の後半でのもう一人のイブキである、祝ブキの存在だけだっけ、それとも他にあるっけ。まあ、それだけだったとしてもここで思わせぶりなロールができ、禍グラバのキャラも立つし、PL的にもひとつこの段階では知らないはずの情報を得たというお得感というかうれしいような気持ちもあるだろうし、読んでいてもPL成田さんの「こんなことまで知ってていいんですか?」という反応が見れただけでもなんか嬉しい(笑)。
 還ったイズン・岩巨人の暴走を止めるために、彼らがいる場所へ向かう。その移動中に移動票でのイベントがあったけど、物語を引き締めるためにカットされたし、それでよかったと思う。でも、そうしたなんてことのないちょっとしたイベントで和気藹々とこなしているこのメンバーの姿、グダグダして小イベント・アクシデントをこなすPLたちの会話もちょっと見てみたかったという思いもあるな。
 対岩巨人戦、初のチーム揃っての本格的な戦闘でやっぱり調査隊は一騎当千の精鋭が集まっただけあって、また相手が巨大なモンスター的なものだということもあって、戦闘がド派手で素敵ね。そしてイラストもいい。特に最後の最後の一撃を見開きで書いたもの。
 阿ギト、手紙(封音符)をできる限り広範囲に配って届けた演説が非常に格好良くていいね。ただ、イラストがなんだか魔王チックなのがちょっと気になるところではあるが(笑)。しかしこのイベントシーン、非常に熱がこもっているように感じるのにここにいたるまでに忌ブキ・エィハが牢から解放されたときに迎えに行かなければ阿ギトが死んでしまったということだから、これがなかった可能性もあったということにちょっと驚くわあ。このセッションで取られなかった、いいシーンも他にも一杯あるだろうということを考えると。
 忌ブキ、ついにこの巻ラストで自分の進むべき道を定める。